KDDIは11月2日、2023年3月期 第2四半期の決算説明会を開催しました。それによれば、上期は7月に発生した通信障害への対応、および燃料高騰などの影響により減益となっています。登壇したKDDI代表取締役社長の高橋誠氏は「通信障害の教訓を活かしていく」と繰り返しました。また、メディアの質問に回答する形で、楽天モバイルの「プラチナバンド」再割り当ての主張に対して「楽天さんも言いすぎなところがある」「我々のネットワークを使い続ければいいのに」とコメントするひと幕もありました。

  • KDDI代表取締役社長の高橋誠氏

通信障害の再発防止に向けて

冒頭、通信基盤の強靭化に向けたKDDIの取り組みについて、あらためて説明がありました。これは、7月2日から7月5日にかけて発生した大規模な通信障害を受けてのこと。総務省には再発防止の報告書を提出したことを明らかにしています。

  • 通信障害の再発防止に向けた取り組み

  • 中期500億円規模の追加投資を実施

高橋社長は「お客様の期待に応えるため、仮想化技術を中心に中期500億円規模の追加投資をすることで、通信ネットワークのさらなる品質向上を目指してまいります」と説明しています。

145億円の減益

上期の連結売上高は2兆7,408億円、連結営業利益は5,585億円でした。高橋社長は「注力領域においては、NEXTコア事業、金融事業のKPIが順調に推移しています。業績も好調です」と強調しました。

  • 注力領域は順調

上期 連結営業利益について、もう少し細かい説明がありました。マルチブランド通信ARPU収入は539億円減、グループMVNO収入+ローミング収入は69億円減でしたが、注力領域で106億円増、3G停波関連コスト減で382億円増、その他で122億円増があり(ここまでの小計では)3億円の微増。しかし通信障害が発生したことで、利用者には75億円が「返金」として支払われ、代理店への支援と設備対応強化に23億円かかり、さらに基地局などで使用する燃料費高騰の影響が50億円超あったため、結果として145億円の減益となった形です。

  • 上期 連結営業利益について

通信障害の影響で7月の新規契約は落ち込みましたが、UQ mobileを中心に回復し、8月以降は増加傾向に持ち直しました。「9月、10月と、3ブランドのID数はプラスで順調に推移しています。年度末に向けて、もう一段階、増やしていければ。引き続き、期初目標の達成を目指してまいります」と高橋社長。なお現在のところ、au契約者が8割弱、UQ mobileは600万を超えたところで、povoに関しては150万とのことでした。

  • マルチブランドIDの状況

通信障害を大きな教訓に

メディアの質問に、高橋社長が回答しました。

KDDIの通信ネットワークは今後、どういった姿を目指していくのか、と聞かれた高橋社長は「7月の通信障害は社内にも大きな教訓を残しました。通信基盤の重要性をあらためて見直すきっかけになっています。その後、総務省の有識者による検証会議が3回あり、KDDIでは報告書も提出しました。社内では、私をトップとする会議を7回以上実施し、その下のワーキンググループの規模では数限りない話し合いを続け、訓練も行っています。これまで、KDDIでは5G通信を真ん中に据えた『サテライトグロース戦略』を推し進めてまいりましたが、5Gエリアの拡大にばかりとらわれず、もともとの通信の信頼性の確保にさらに取り組むことをベースとするべき、とあらためて感じました」と反省の表情。

  • 通信障害の教訓を活かしていく

昨日も小規模な障害があったが、という問いには「パケット交換設備の一部に障害が起こりました。瞬時に切り替わったんですが、一部に障害が出ました。その結果、数分間の影響がありました。7月の通信障害以降、わたしの2台のスマートウォッチには24時間365日、いつでもアラームが来るようにしています。昨日の報告もありました。設備故障は、どうしても一定規模では起きるもの。発生したとき、いかに早くリカバリーできるか。今後も短時間で処理することで、皆様にご迷惑をかけないように対応を心がけていきます。引き続き訓練を続けて、信頼のネットワークを確立していきます」としました。

楽天モバイルについて

楽天モバイルが0円の料金プランを廃止した影響について聞かれると「第1四半期と傾向は同じです。楽天さんが料金プランを変更されて以降、MNPを利用してKDDIに入ってくるお客さんが増え続けています。7月はちょっと減少しましたが、8月以降、また戻りました。10月は楽天モバイルを実質0円で利用できるキャンペーンの最終月。そこで流入数も上がってきている状況です」。

楽天モバイルが700MHz~900MHz帯の「プラチナバンド」の再割り当てを主張している件について聞かれると「これまで一貫してお話しているんですが、有効周波数の再割り当てについては慎重な議論が必要です。楽天さんは強気に『(電波干渉を防ぐための)フィルターは要らない』『前倒しの費用は負担しない』とかいろいろおっしゃっています。ちょっと言いすぎなところがある。楽天さんが主張されている『1年以内に利用を開始する』というのは、さすがに不可能だと思います。800MHz帯は我々も、ドコモ、ソフトバンクも使っています。このあたりに関しては、総務省も、有識者の方々も無理だと理解されている。楽天さんの主張の通りには、なかなかいかないのでは」と高橋社長。

そして次のように続けました。「プラチナバンドは開設利用料もあり、さまざまな投資も必要になる。彼らの事業基盤、経営基盤の状況も考慮しながら、最終的には総務省が判断されるでしょう。我々は、ローミングでずっとネットワークをお貸ししてきた立場です。そして今後、エリア拡大は通信事業者の間では“非競争領域”になってきます。それならば、うまく我々のネットワークを使い続ければいいのに、とも思います(笑)。これは冗談ではなく、これからは全キャリアで一緒にネットワーク設備を作っていく時代になる。上の競争レイヤーではしっかりと競争し、競争にならないところは協力していく。もう少し柔軟に構えればいいのに、と思います」。

ローミング料をまけてあげることはできないか、と聞かれると「現在のところ、2025年までには終わる予定になっています。いつまで使うのかによって、いろいろ議論の余地はあると思います」としました。

高橋社長、ドコモのSIMも併用中

MNOの1社が通信障害を起こしたときに、他の通信事業者が連携してネットワークを融通できる取り組みの進捗状況について聞かれると「いま、KDDIから他の通信事業者さんに『お互いにやりませんか』とお声がけしている状況です。実は、私が持っているスマートフォンも、7月以降はデュアルSIMを入れてあります。auのSIMともう一社、これはドコモさんのSIMを入れています。こういう形にすることで、どちらかに障害があった場合にも対応できます。KDDIでは幹部以上は、みんなこういう形に切り替えました。現在の技術的には、これがイチバン簡易なバックアップの方法だと思います」と回答。

そのうえで「今後、どんな形でサービスを提供するのかという議論は残っていますが、あまり技術的に複雑なことはせずに、いまある機能でできるだけ早く実現する方向を模索しています」としました。

これに関連し、基本使用料0円のpovoはデユアルSIMにも最適なサービスではないか、と聞かれた高橋社長は「そうですね。他社のお客様が2枚目のSIMとしてpovoをご活用いただくのは、非常に良いことだと思います」と回答。ただ、バックアップ用のSIMとしての需要が伸びた形跡はいまのところなく、「楽天モバイルからpovoに移ってこられるケースが多いです」とのみ話します。

このほか、円安の影響について聞かれると「海外から入ってくるスマートフォンの単価が高くなりました。一方で、割引額は2万円までと規制で決められている。このため、どうしても5G端末が高くなってしまいます。経営の仕方でどうやって吸収していくか。工夫をしていきます」と話していました。