うつ・不安症と診断された高齢者と対照の高齢者のVOCsが分析されたところ、157種の揮発性有機化合物が検出され、その中から特に5種のうつ・不安症バイオマーカーが同定された。受信者動作特性曲線(ROC)を用いて解析が行われた結果、5種すべての正確さが70%以上であり、感度も高いものだったとする。さらに詳しく調べられたところ、5種類のうちの3種類の揮発性バイオマーカーが、大うつ病の判定に有効であることが示されたという。

  • 揮発性尿中バイオマーカーの同定法

    揮発性尿中バイオマーカーの同定法 (出所:京産大Webサイト)

今回報告された高齢者の研究成果を、以前研究チームがマウスモデルを用いた結果と比較したところ、うつ・不安症バイオマーカーは、ヒトとマウスで類似の代謝経路を通り、尿における最終代謝産物となっていることが判明した。このヒトとマウスの代謝経路の類似性は、これらのマウスモデルが、ヒト食品の機能性評価や薬理試験の評価試験に有用であることが示されているという。

  • バイオマーカー候補化合物ROC分析

    バイオマーカー候補化合物ROC分析。なお感度が1の場合は、偽陰性がないことを表している (出所:京産大Webサイト)

なお、今後については、非侵襲性の簡便な尿検査キットの開発を目指し、より多くの高齢者に試してもらえるよう、工夫を進める必要があるとするほか、ヒトとマウスで類似の代謝経路を通り、尿中に排泄されるバイオマーカーの起源や体内動態、さらには、うつ・不安症の発症と関連する生理学的な意味の解明が、今後の課題であると考えているとしている。