我が家の数ある家電の中でも、デロンギのコーヒーマシンは使用頻度が高い家電のひとつ。抜群に美味しいエスプレッソやレギュラーコーヒー、ラテを1杯ずつ淹れられて、安定した品質でコクのあるコーヒーを自宅で楽しめるため、外でコーヒーを飲む機会も減りました。1日に何杯も飲んでいて、本当に気に入っているマシンです。

デロンギのコーヒーマシンは基本的に全自動で淹れられることが特徴ですが、自分好みの味に調整しながら淹れたい人向けの「半自動」コーヒーマシン(エスプレッソマシン)として、「デロンギ ラ・スペシャリスタ・プレスティージオ グラインダー付きエスプレッソ・カプチーノメーカー(EC9355J-M)」(以下、EC9355J-M)が登場しました。レトロ感のあるデザインがとても魅力的で一目惚れ。さっそく試してみました。

従来モデルとは異なるレトロなデザインが目を引く

デロンギの全自動コーヒーマシンは、豆ホッパーにコーヒー豆、水タンクに水を入れておけば、あとはエスプレッソなどの淹れたいコーヒーを選んでスタートするだけ。挽いた豆の粉はあとでまとめて捨てればいいので、毎回お手入れする必要もありません。一般的なドリップコーヒーのコーヒーメーカーよりも手軽に楽しめる、とても優れたコーヒーマシンです。コーヒーはエスプレッソだけでなく、日本人好みのレギュラーコーヒーも楽しめます。

一方でEC9355J-Mは、今までのような全自動ではありません。フィルターホルダーが別に付属しており、手作業で好みに調整しながら淹れる、「コーヒーを淹れる時間も楽しみたい」という人向けのマシンと言えます。

  • 左側にあるタンパーレバーが特徴的。これを手前に倒してタンピングします

  • 右側にはスチームつまみ

グラインダーは従来モデルと同じくコーン式で、ポンプ圧は19気圧。給水タンク容量(エスプレッソ)は2.0L、豆ホッパー容量は200g、消費電力は1450W。本体サイズは幅385×奥行き370×高さ450mm、本体質量は13.5kgとなり、デロンギのコーヒーマシンの中でも存在感のあるサイズです。

しかし、嗜好性の高い家電ということもあり、その存在感がうれしいモデルでもあります。レトロ感のあるデザイン、質感でとにかくスタイリッシュ。部屋に置いていたら、来客時にはみなさん口をそろえて「カッコイイ」と興味津々。ほかのどの家電よりも目立っています。

  • 操作部はボタンが並んでおり、レトロな印象です

  • フィルターホルダー

  • フィルターは1杯分と2杯分の2種類

コーヒーを淹れる過程を楽しもう

では使い方を見ていきましょう。まずは本体の背面側にある水タンクを上に引き上げて取り出し、水を入れてから本体に戻します。

ふだん使っているデロンギの全自動コーヒーマシン(エレッタやマグフィニカ)は、水タンクを手前に引いて取り出すタイプだったので、少々戸惑いました。EC9355J-Mの水タンクは横長で水がこぼれやすく、裏側は目で見えません。慣れてしまえば大丈夫ですが、はじめのうちは1回ではセットできませんでした。

  • 取るのは比較的簡単ですが、本体にセットしにくい水タンク

続いて豆ホッパーをグラインダーに差し込み、豆を入れてフタをします。EC9355J-Mには1杯用フィルターと2杯用フィルターが付属しており、目安として1杯用は約12g、2杯用は約20gの豆を使います。粒度(コーヒー豆の挽き具合)の調整は8段階。「1」が細かく、「8」が粗くなります。

  • 豆を豆ホッパーに入れます

フィルターをフィルターホルダーに取り付け、フィルターホルダーを向かって左側のスタートタンピングホルダーに取り付けます。コーヒー豆を挽く前に、豆量調整つまみで挽く豆量を設定しておきます。最初はMin(最小)からはじめて、好みの豆量を探していくとよいでしょう。

フィルターホルダーは本体の「INSERT▼」に合わせて差し込みますが、フィルターホルダー側に印しがないので、これも慣れるまで一苦労。きちんとはまったらグッと右側に回し、「CLOSE▼」に合わせると自動で豆を挽き始めます。

なお、粒度レバーは、豆が挽かれているときのみ操作可能。1杯分の豆を挽く時間はとても短いので、タイミングを見てサッと変える必要があります。

  • 最初に左側のコーヒー粉出口にフィルターホルダーをセットします

  • 粒度(コーヒー豆の挽き具合)は8段階

  • 豆量調節つまみ。こちらで挽く豆量を設定します。1杯分と2杯分では量も変わるので、必ず確認します

レバーを下げる手動の「タンピング」が楽しい

いよいよタンピングです。タンピングとは、フィルターにコーヒー粉を入れて固める作業です。デロンギの全自動マシンはすべて内部でタンピングされるため、どのようなタンピングになっているのか確認できませんでした。

EC9355J-Mは、左側にあるタンパーレバーを手前に倒すとタンピングが行われ、そのあとフィルターホルダーを外してタンピングされたコーヒー粉の状態を確認できます。

  • 左側のタンパーレバーをグッと下に下げ、倒したままフィルターホルダーの柄を左に回して取り外します

タンピングされたコーヒー粉は、フィルターの中で均一にそろっていました。このタンピングはエスプレッソを抽出するときの大切な工程で、味が左右されます。半分手作業のタンピングということで、こういった途中経過をひとつひとつ確認しながら次の工程に進めることが、このマシンの醍醐味と言えるでしょう。

  • 均一で平らなタンピング!

タンピング後に外したフィルターホルダーは、次に右側の給湯口に取り付けます。エスプレッソなどの小さいカップに抽出するときは、カップ受けを手前に倒してから置きます。

そして抽出温度ボタンで低温・中温・高温から選んで抽出スタート。メニューはエスプレッソ、アメリカーノ、スペシャルティの3種類です。

まずはエスプレッソを高温で抽出してみました。ちょっとクレマが少ないかな――という印象です。美味しいのですが、ぬるいところも気になります。そこでいろいろと試してみました。

  • 給湯口にセットして「OK」を押すと抽出されます

  • コーヒー抽出中は圧力系の針が動きます。コーヒー抽出時のポンプ圧を表示していますが、数字が書かれていないのであくまで目安。Optimal Zoneに針が収まっていればOK

  • ちょっとぬるい……

本当に美味しいエスプレッソを抽出するなら温度に注意

最初にぬるく感じたのは、電源を入れて1回目の抽出です。抽出したエスプレッソの温度を計測したところ、1回目は高温設定で53.3℃、2回目は中温設定で59.9℃、3回目は低温設定で61.1℃でした。本来は高温設定がもっとも温度が高くなるはずですが、電源を入れた直後は高温設定が一番低いという結果に……。

何回か抽出していて気付いたのは、電源を入れてから最初の数杯は、マシン内部の温度が低いのではないかということ。部屋の室温も影響しているようで、豆の香りや機械のポテンシャルを生かし切れていないと感じました。

数杯抽出したあとは、高温設定で67.1℃、低温設定63.4℃という結果に。マシンが温まってから抽出した高温設定のエスプレッソは雑味を少し感じ、個人的には低温設定がベストです。

コツがわかってきたところで、コーヒー(エスプレッソ)を淹れるときは、ひとまず豆を入れずにフィルターホルダーを装着して2回ほどエスプレッソモードでお湯だけ出してから、低温設定で抽出しています。特に寒くなる冬場は、マシンとカップを温めておくことが大切かもしれません。

  • 1杯目は高温設定でも53.3℃

  • 何回か試したあとは低温設定でも60℃を超えています。コクもあり、クレマもあって美味しい!

  • 電源を投入したら、カップトレイにカップを置いておきましょう。少し温まります

試行錯誤して自分好みの抽出方法が見つかると、「これだ!」という味に出会えそうです。新鮮な豆を使い、蒸らしの工程を経て適正温度で抽出されたエスプレッソはまろやかで香りがよく、コクがあります。幸せなコーヒータイムを楽しめています。

練習が必要なフォームミルク

カプチーノやラテで使うフォームミルクは、付属のミルクジャグで作れます。よく冷やした牛乳をミルクジャグに入れ、本体のスチーム管を外側に出し、フロッサーを浸してミルクを泡立てます。乳脂肪分が3.5%以上ある成分無調整の牛乳を、よく冷やして使います。

  • 専用のミルクジャグを使います

ミルクジャグの側面にフロッサーの先端を寄せて泡立てます。取扱説明書によると、スチームは60秒以内となっているので、牛乳の量を少なめにしたほうが安定しました(ミルクジャグの3分の1くらい)。温度はだいたい60~65℃が目安。ミルクジャグが触れられないくらい熱くなったらOKです。

  • 手を動かさず、固定してミルクに対流を作ります。少しフロッサーを浅めにすると泡立ちます

  • なめらかな泡ができました

  • 最初に液体を注いでから、最後に泡を

  • カプチーノを作ってみました。ミルクがふわふわ

  • ミルクの甘みと濃厚なエスプレッソの風味がたまりません

ミルクが泡立つポイントを探すのに苦労するかもしれません。泡立てすぎると泡がかたくなるので、とろりとしたスチームミルクを作りたいのであれば、角度やフロッサーを浸す位置などを調整し、何回か練習が必要でしょう。

ポイントを見つけて慣れてくると、短時間で仕上がるようになります。ふわふわのフォームミルクが美味しいカプチーノを、家で楽しめるのはうれしいですね。

エスプレッソだけでなく、アメリカーノやスペシャルティなども楽しめる

コーヒーメニューはエスプレッソのほかに、アメリカーノやスペシャルティも楽しめます。アメリカーノはエスプレッソ抽出後、給湯口からお湯を足して、雑味が少ない軽やかなコーヒーに。

スペシャルティはアメリカーノほどではないものの、エスプレッソよりも量が多く、浅煎りの豆で淹れるとすっきりした味わいになります。このように多彩な飲み方ができるので、飽きることなく使えそうです。

  • アメリカーノは給湯口からお湯が出てきます

  • 左がスペシャルティ、右がアメリカーノ。量が違いますね

抽出後に毎回お手入れする必要がある

豆ホッパーは、豆が入っている状態で外そうとすると中にこぼれてしまうので注意が必要です。こまめに豆を変えたいのであれば、ホッパーにはきちんと計量してから豆を入れ、常に使い切ることをおすすめします。

  • 使用後のフィルターホルダーには使い終えた豆がみっちりと詰まっています

抽出後、フィルターホルダーに入ったコーヒー粉の毎回捨てて、フィルターホルダーを洗います。また、カップ受けトレイも水洗いしておきます。全自動マシンの場合、粉はまとめて捨てられるのですが、EC9355J-Mは毎回お手入れする必要があります。ただ、短時間で終わるのでそれほど大変ではありません。

フロッサーは牛乳のたんぱく質が表面に固まりやすいので、フォームミルクを作ったあとはすぐ、洗ったミルクジャグに半分ほど水を入れて、スチームを出しておきます。これも、ほかのエスプレッソマシンとお手入れ方法はほぼ同じです。

  • ミルクジャグに水とフロッサーを入れてスチームを出し、フロッサーに付着したミルクをきちんと落とします

  • 水受けも気が付くと水がたまっているので要注意

  • 分解できるのでお手入れはカンタン

クセはあるものの、使いこなせば楽しい

EC9355J-Mの場合、コーヒーを抽出する工程と作業は全自動マシンと比べて多いのですが、慣れてくると気にならなくなります。ただ、いろいろと調整できるぶん、納得する味に近づけるための慣熟に時間がかかりました。特に抽出温度については、電源投入後は低くなるので注意が必要です。こだわり派に向けた半自動コーヒーマシンなので、やはり突き詰めるとキリがないな……というのが正直な感想です。

また、フロッサーのスチームが少々弱いせいか、フォームミルクをなかなか上手く作れませんでした。かためになりがちで、とろりとしたフォームミルクを作れるようになるまでに、牛乳を何本も使って最近やっと納得の水準に達したかな――と感じています。

クセがあるコーヒーマシンなので、コーヒーを淹れる手間も含めて楽しめる人におすすめです。手軽に美味しいコーヒーやエスプレッソ、ミルクメニューが飲みたいのであれば、従来の全自動マシンのほうが総じてラクなので、手順やお手入れを含めて比較するとよいでしょう。EC9355J-Mの価格は168,000円(公式オンラインストア)と高価ですが、高級感のあるデザインと質感は、EC9355J-Mならではの特徴です。ぜひ実物をチェックしてください。