集積流路は、作製が容易で圧力耐性も高い粉末状のホウケイ酸ガラスが用いられた。粉末のすりつぶし時間と焼成温度で、H+の流路となるガラスフィルターの細孔径が変化するため、複数の条件が試されたところ、定速(50mm/s)の水の流速で、最も電力が大きくなるのはすりつぶし時間5分(平均細孔径12μm)、焼成温度700℃であることを確認したほか、そのときの電圧は27V、電流は0.14mA、電力は0.8mWで、発電効率は0.021%であることも確認したという。

  • 微細ガラスフィルターを用いた圧力駆動型ガラス発電機の原理

    (a)微細ガラスフィルターを用いた圧力駆動型ガラス発電機の原理。水(H2O)の自発的な解離で発生した水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)、および水に接する表面が負に帯電したガラス流路の模式図。(b)デバイスのデザイン(断面図) (出所:電大Webサイト)

また、環境発電の実証を兼ねて、コンデンサを用いた蓄電回路を構築し、足踏みにより発電させ、各種電子デバイスを駆動させる実証実験を、ガラスフィルターの焼成温度は700℃で固定、すりつぶし時間を変える形で実施。その結果、電圧は先の試験結果に近い発生傾向となったが、水の流速が足踏みなので定速でないため、発電持続時間には大きな違いがあり、目の細かいフィルターほど長くなったという。その結果、電力に発電持続時間をかけたエネルギー量では10分(平均細孔径8μm)が最大となり、発電性能は電圧18V、電流0.26mA、電力4.8mW。そして持続時間は1.7秒、エネルギーは6.8mJ、発電効率は0.017%となったとする。

  • 微細ガラスフィルターの作製方法

    (a)微細ガラスフィルターの作製方法。(b~d)ガラスフィルター焼成成型用のカーボン製鋳型と、ガラス粉末を詰めた状態、そして炉に入れた状態。(e)ガラスフィルター焼成成型用のカーボン製鋳型。(f)680~720℃で焼成したガラスフィルター表面の電子顕微鏡写真。(g)0~40分のガラス粉末すりつぶし条件で作製した、ガラスフィルター表面の電子顕微鏡写真(焼成温度はいずれも700℃) (出所:電大Webサイト)

さらに平均細孔径8μmのフィルターを用いて、3種類のアプリケーション実証実験が行われた。1つ目はLED点灯実験で、小型のLED(3.3V以上で点灯)が、プレス中は点灯し続けることが確認された。2つ目の小型ファンの回転実験では、50回のプレスでコンデンサに5.2V蓄電し、スイッチを入れた瞬間に1秒近く回転することを確認。そして3つ目のワイヤレス通信実験は、コンデンサに0.2V以上の電圧が溜まれば自動的にシグナルが送信機から3m離れたPCに送られるもので、2回のプレス後に、モニター上で受信を確認できたという。研究チームによると、今回はプロトタイプとして比較的大型になっているが、原理的にはさらに小さく、靴の中に仕込める程度のサイズにすることも可能だとしている。

なお、今回開発された発電機は、歩行中の電子デバイスの無電源駆動や椅子やベッドでの人の動きの検知などゆっくりした動きを効率的に用いた環境発電としての利用が効果的だと研究チームでは説明しており、IoTへの応用では、歩行や椅子・ベッドなどでの人の動きを常にセンシング・通信してモニタリングするための健康管理デバイスなど、さまざまなシーンでの利用が期待できるとしている。