スマートフォンのコンパニオンデバイスとして、またヘルスケア管理デバイスとして人気が高まるスマートウォッチ。今回紹介する「Amazfit GTR4」は、歩数や運動に関するアクティビティ情報と、睡眠や血中酸素濃度といったヘルスケア情報を、24時間取得し続けられるバッテリー駆動時間に優れたスマートウォッチだ。
クラシカルなデザインの大画面スマートウォッチ
「Amazfit」は、シャオミの「Mi Band」など、ウェアラブルデバイスを製造・販売している Zepp Health Corporationが2015年から展開しているスマートデバイスのブランドだ。今回紹介する「Amazfit GTR4」(以下GTR4)は、10月13日に発売されたばかりの新製品で、同社のスマートウォッチとしては第4世代目で、ラインナップの中では上位に位置付けられる高級モデル。前機種である「Amazfit GTR3」」(以下GTR3)からちょうど1年ぶりのバージョンアップとなる。価格は3万1,900円だ。
GTR4の本体サイズは46×46×10.6mm、重さは34g(ストラップを含まず)。ボディ素材はフレームがアルミニウム合金で、下半分がポリカーボネートとなっている。ボディカラーは「スーパースピードブラック」と「ビンテージブラウンレザー」(11月発売予定)の2色。防水性能は5ATMで、雨や手洗いはもちろん、水泳でも問題ないが、温水には対応していないため、入浴やシャワー時の利用は推奨されていないとのこと。
ディスプレイは円形の1.43型AMOLEDで、解像度は466×466ドット(326ppi)。GTR3(1.38型)よりもやや大型化しており、細かい文字なども見やすくなった。普段は消灯しており、腕を上げたりボタンを操作したりすることで表示されるが、設定で常時表示にも設定できる。
GTR3と比べると、フレーム部分の意匠が洗練されており、高級感が増している。本体右側には上にクラウン(リューズ)が、下にボタンが用意されている。クラウンは1回押すとアプリ一覧の表示、長押しでAlexaの起動になる。下のボタンはアプリのショートカットボタンで、よく使うアプリを登録しておける。GTR3では2つのボタンが両方クラウン(リュウズ)型だったが、GTR4では上のみクラウン、下は浅めのボタンとなっており、手探りでも双方の違いがはっきり分かるようになった。
本体裏面には血中酸素濃度や心拍数を取得するための光学式センサー「BioTracker PPG 4.0」と、充電用の端子が装備されている。充電端子は極性があり、内蔵した磁石で必ず正しい方向に接続される。充電には専用のマグネット式USBケーブルを使用する(ケーブルはGTR3と共通)。バッテリー容量は475mAhで、フル充電にかかる時間は約2時間だが、通常使用で公称最大14日間使用可能(時計表示のみであれば約50日)となっている。
実際に数日間装着してみたが、24時間装着していてヘルスケア関係の検出をオンにしていても、1日平均7%程度しかバッテリーを消費しなかった。画面の明るさを上げる、Wi-Fiを利用する、アクティビティ検出でGPSを使うなどすると消費量はもっと増えるが、それでも週に1回程度充電すれば十分だろう。
また、屋外などで高精度GPSモードを使用する場合は最大25時間ということだが、モバイルバッテリーなどを用意してあれば問題ないだろう。スマートウォッチはバッテリーがあまり持たないものが多い中、これだけのロングライフは賞賛に値する。
バンドは幅22mmで、脱着はクイックレバー/クイックリリース式(いわゆるバネ棒式)。今回、ビンテージブラウンレザーを試用したのだが、このカラーに付くレザーバンドは厚みがあるせいか、やや硬めでちょっと着け外ししにくいように感じられた。また筆者の腕の形もあるのだろうが、着けていて手首の周りを回ってしまうことがあった。市販品への交換も行えるので、自分で好みのものに交換してもいい。スーパースピードブラックはバンドの素材がフッ素ゴム製なので、こちらを選ぶ人はあまり気にする必要はないだろう。
GTR4は業界初というデュアルバンド&円偏波GPSアンテナを搭載しており、6つの衛星測位システム(米GPS、露GLONASS、欧Galileo、中BeiDou、日QZSS(みちびき)、印NavIC)を利用可能(一部、将来のアップデートで対応予定)。ビルの谷間や樹木が生い茂る中など、障害物が多い場所でも電波をつかみやすく、正確な測位が可能だという。
衛星測位はアクティビティ中の移動ログを取得できる他、将来のアップデートで予定されている機能として、ルートファイルをインポートして、その情報を元にナビゲーションする機能や、リアルタイムでGPSのログ情報をGTR4のディスプレイに表示する機能、また現在地からスタート地点までの方向を示し、最短距離を選べるようにする機能が計画されているとのこと。このあたりは特に電波の届かない山奥などでのトレッキングやハイキングといったアクティビティで役に立ちそうだ。
スマホとの連携はシンプルだが申し分なし
GTR4は独自の省電力設計OS「Zepp OS」を採用しており、バージョンはGTR3の1.0から2.0にバージョンアップした。ハードウェア自体が強化されているのかもしれないが、全体的にGTR3よりも反応がよく、きびきびした動きで操作感はかなりよい。日本語表示も以前よりだいぶ洗練され、中国製ハードにありがちなおかしな翻訳もかなり減っている。
クラウンのボタンを押すとアプリ一覧が表示され、画面をタップしてアプリを起動する。クラウンを長押しするとAlexaが起動する。ショートカットボタンはあらかじめ割り当てておいたアプリを起動する。これに加えて、画面を上から下にスワイプするとダッシュボードが、下から上にスワイプすると通知類が表示され、左右にスワイプするとアプリ画面の切り替え表示になる。
スマートフォンとの接続はBluetooth 5.0で、設定も大半はスマートフォン用の「Zepp」アプリで行う。また、単独でWi-Fiも搭載しており、スマートフォンがなくてもWi-Fiネットワークに接続して情報を取得することはできる。
スマートフォンとの連携でできることは、メールやSMS、LINEなどの通知を表示できるほか、カメラのリモートシャッターやバイブレーション機能によるリンクしている端末の捜索、さらにAndroidの場合はGTR4側から発着信してGTR4経由で通話もできる(マイクとスピーカーを内蔵)。なお筆者の環境の問題かもしれないが、iOSの場合、通話はできず、着信すると留守電に切り替わってしまった。
またiOSでは「ヘルスケア」、Androidの場合は「Google Health」と歩数、心拍数、睡眠といったヘルスケア/アクティビティデータを連動できる。ヘルスケア/アクティビティデータは「Zepp」アプリ内でも確認できるが、各プラットフォーマーのサービスと連動させることで総合的な健康管理に役立てられる。
音声アシスタントにはAmazonのAlexaを搭載しており、Amazonアカウントと連動させることでAlexaを利用できる。アプリ関連は付属のアプリに加え、App Storeから20種類程度の追加アプリ(ゲームを含む)がインストールできる。ただしApple Watchなどと比べるとその数はかなり少なく、たとえばTwitterやFacebook、Instagramなどは利用できない。この辺りはあくまでおまけ程度と割り切った方がいいだろう。
身体情報やスポーツの動作を取得
スマートウォッチには、内蔵するモーションセンサーや生体情報センサー類を使った活動計としての機能もある。GTR4も前述した「BioTracker PPG 4.0」をはじめとしたセンサー類が充実している。
スポーツ関連では、モーションセンサーや心拍計、血中酸素計などを駆使して消費カロリーなどのデータを記録してくれる。対応する競技の数は実に150種類以上もある。通常は種目を選んで記録を開始するが、代表的な8種類の競技については、動きを認識して記録を開始するスマート認識機能がある。
ヘルスケア機能については、血中酸素濃度や心拍数、また睡眠の長さや質などを記録できる。GTR3では夜間のみ自動識別で、昼間は手動で記録していたが、GTR4では設定で昼間でもある程度自動認識できるようになった。アクティビティもヘルスケアも、記録精度や使い勝手はかなり高いと感じられた。長いバッテリー寿命と合わせて、健康管理にはかなり役立つだろう。
各社からNFCやFeliCaなどの決済機能を持つスマートウォッチが多数登場しているが、GTR4はそうした機能を持たない代わりに機能をフィットネス&ヘルスケア機能に絞り込み、ロングバッテリーライフという独自の立ち位置を築き上げている。使い勝手も軽快で、スマートフォンとの連動も必要十分。デザインも普通の腕時計と比べて違和感がなく、高級感も高まっているので、ビジネスシーンを含め、どんなシーンでも活躍するだろう。
スマートウォッチに興味があり、特にヘルスケアやフィットネス機能を重視している人、充電の手間をあまりかけたくないという人であれば、ぜひ検討してほしい1台だ。