先鋭的な構成でニッチなニーズを強力に志向するPCメーカー「Minisforum」から、モバイル向けのプロセッサとディスクリートグラフィックスを組み合わせたコンパクトなデスクトップPC「Minisforum EliteMini HX90G(以下、HX90G)」が登場しました。AMD Ryzen 5900HXとRadeon RX 6600Mを搭載しており、最新ゲームにも余裕で対応するとのこと。

正式発売前にサンプルを試すことができたので、この記事では使用感についてお届けします。忙しい方向けにまとめると、最新Ryzen・Radeon搭載で圧倒的な高性能。なのに平常利用ではほぼ無音で動作する静音性を備えており、さらに自作PC派も満足できる素晴らしいメンテナンス性を実現していました。

  • Minisforum EliteMini HX90Gをレビュー

    Minisforum EliteMini HX90Gをレビュー

ベアボーンなら予約購入で約10.5万円。でも完成品のコスパはさらに魅力的

初出時のニュース記事でざっくり紹介してありますが、まずは主な仕様についておさらいしておきましょう。HX90Gは、AMD Ryzen 9 5900HXとRadeon RX 6600Mを搭載するデスクトップPCで、メモリやSSDを搭載しないベアボーンキットとしても購入可能。販売ページ(外部リンク)ではカスタマイズにも対応しており、メモリは16GB~64GB、SSDは512GB~1TBから選択できるようになっています。

このベアボーンキットの定価は131,880円ですが、記事掲載時点では先行予約を受け付けており、約3万円近く割り引かれた105,504円で購入可能。しかも16GBメモリと512GB SSDを搭載し、Windows 11 Proをプリインストールした完成品モデルでも153,980円(先行予約だと123,184円)で販売されています。さらに約7,000円前後足すことで、メモリを32GBに倍増させることも可能です。

ベアボーンキットからの差額でメモリとSSD、OSを揃えることは困難なので、完成品での購入がオススメ。今予約すれば、11月中旬の出荷を予定しているとあります。先行予約での価格は強烈に割安ですが、そもそも定価もかなり意欲的に設定されています。

  • 価格についてはいずれも記事制作時点での情報です

縦置きはお好みで。外観をチェック

価格について紹介したところで、さっそく編集部に届いたサンプルの外観をチェックしていきましょう。パッケージはコンパクトにまとめられており、AMD製品っぽさのある黒・赤があしらわれていました。

  • やってきたパッケージ。比較用にiPhone 12を並べています

  • 「Neptuneシリーズ」に属しているそう。RyzenとRadeonの組み合わせでAMD独自機能を強力にサポート

  • 構成についてわかる表がありました。今回の構成は「8GB×2、512GB SSD」なのですが、シールの位置は左側の方が自然な気もします

  • 開封! 特にビニール袋などは使われておらず、高密度スポンジに本体が挟まっていました

内箱の中の製品本体にビニールはありませんでしたが、外箱→ビニールシュリンク→内箱→製品本体のように収まっていたので無問題。海外からの出荷でも特に問題なく輸送に耐えられると思います。

  • 製品を取り出したところ。外装はほぼ真っ黒で、一部にカーボン調が取り入れられています。光るのは電源ボタンのみ

  • 前面端子部

  • USB端子はType-A形状とType-C形状を両方搭載していてとても便利。ヘッドホン出力とマイク入力がわかれているのも実用的です

  • 背面端子部。2.5GbE LAN×1、USB 3.0×3に加え、4画面同時出力に対応するDisplayPort 1.4×2、HDMI×2を搭載

  • 天面。見えにくいですがファンが2つ内蔵されており、CPUとGPUをそれぞれ冷却します

  • 縦置きすると天面になる方の側面。排気を行います

  • ACアダプタは巨大。GVE製で19.0V/12.8Aの最大262.2W出力

本体は真っ黒で無骨な印象。サイズはW205×H203×D69.3mmなので、前に試用した「EliteMini B550」よりはだいぶ大きく感じます。とはいえデスク上に平置きしても邪魔にはならないレベル。問題は実用性がやや微妙な縦置きモードです。

  • 同梱されていたスタンドを取り出したところ。ネジでかんたんに取り付けられます

  • カーボン調のデザインがかなり強調され、好みが分かれるかもしれません

  • マザーボードの裏側の面は通気しません

製品ページを見ると「縦置きでスペースを節約し、放熱性を高められる」とありますが、別に底面は通気しないのでそんなに変わらない気もします。ちなみに製品に見られるカーボン調の部分には本当に炭素繊維材料が用いられているとのことで、そのほかの各部にも炭素繊維複合材料を採用。軽量かつ堅牢で、高い耐衝撃性能と熱伝導性を備えたとあります。

  • 製品ページから抜粋

カスタマイズは超かんたん! でも分解しすぎないように

ベアボーンキットとしても販売されているHX90Gですが、メモリやSSDの組み込みはかなりかんたん。底面のゴムを剥がしてネジを外すだけで内部にアクセスでき、力を入れすぎて壊しそうなシーンや、ケーブルをうっかり引っこ抜いてしまいそうなシーンはありませんでした。

  • 底面のゴムを剥がすとネジが出現します。ちなみに「開けると保証がなくなるぞ」的なシールはサンプルにはありませんでした

  • 底面をぱかりと開けたところ。あとはフレームについているネジを4本外せばメモリとSSDの組み込みを行えます

  • フレームを外したところ

メモリはSO-DIMM DDR4、ストレージはM.2 NVMe SSD(Type2280)×2で、2.5インチベイは省略されていました。SSDのM.2 スロットはどちらがプライマリなのか不明ですが、完成品ではメモリのすぐ隣の方に装着されています。写真ではボケていますが、Wi-Fiカードは「RZ 608」。MediaTekとAMDが共同開発している製品で、AMD製品にはよく見られるようになっています。

  • 搭載されていたメモリ。ADATA製のDDR4 3200 8GB×2です

  • SSDは空きスロットにもうひとつ増設できます

せっかくのレビューなのでクーラーも見てみようと思いましたが、ここからの分解がかなり難解で、サンプルを破壊しそうだったので断念。製品ページによるとヒートシンクにはCPU用に3本、GPU用に4本ものヒートパイプを贅沢に用いており、さらに熱伝導剤には液体金属を使用。これによってシステムの温度を低温に保っているとありました。

  • ヒートシンクの構造。画像は製品ページから

  • 熱伝導剤は液体金属なので、CPUクーラーを適当に取り外すと不可逆に破損する場合があります。保証がなくなるのもこのライン

性能は申し分なし。ファンの挙動は少し気になるかも

外観や製品の内容についてわかったところで、最後に性能についてもかんたんにチェック。上述の通りCPUは8コア16スレッドのRyzen 9 5900HXで、グラフィックスはRadeon RX 6600M。GPUメモリにGDDR6 8GBを組み合わせています。

  • CPU-Z

  • GPU-Z

  • ちなみにRyzen 9 5900HX側のiGPUはUEFIから無効化できます

Ryzen 9 5900HXとRadeon RX 6600Mのパフォーマンスは絶大で、このサイズからは想像できないパワフルさ。フルHD環境で一般的な設定なら、ほとんどどんなゲームでも十分快適にプレイできると思います。

UEFIは昔ながらのグレーと青の古いUIで、マウスも使用できません。設定項目は色々用意されていましたが、メモリの動作クロックはおそらく変更できません。定格動作が基本になるので、別途用意する場合は定格で3200MHz動作に対応するSO-DIMMメモリを調達しましょう。

ただ、高負荷時のファン動作は少し気になることがあるかも。原則としてCPU用のファンだけが低速で動作しており、GPU側はセミファンレス。ヒートシンクが高性能なのか、低温動作の余裕はかなりありますが、一旦GPU側のファンが回り始めるとなかなかの騒音でした。急激に高速回転したあとすぐに止まるような制御なので、急にうるさくなったように感じます。

  • ざっくりとCPU性能がわかるspeedometer 2.1。型落ちの愛用ゲーミングPCより格段に高速でした

  • PCMarkのスコアは9360

  • FF14 暁月のフィナーレベンチマークテスト。最高設定1440pで「とても快適」

  • Blender 3.1を用いたベンチマークテスト。Radeon環境でもHIP(Heterogeneous-computing Interface for Portability)に対応したので高速

とはいえ、感心したのが内蔵SSDに高速なものが採用されていた点です。EliteMini B550はSSDの書き込みが遅く、エクスプローラーの応答性が低くて困りましたが、HX90Gはかなり高速。普段使いはもちろん、ゲーミング用途でも快適に利用できます。ちなみに使われていいたSSDの型番は「ESO512GYLCT-EP3-2L」というもので、検索した限りではメーカーがわかりませんでした。

  • CrystalDiskInfo

  • CrystalDiskMark

余談ですが、OSのクリーンインストールを行いやすい点が個人的にとても高得点。プリインストールされているアプリケーションにメーカー固有のものは何もなく、AMDの一括インストールツールでほぼすべてのドライバを導入可能。Wi-Fi/BluetoothのRZ608だけWindowsの標準ドライバでは使えませんが、サポートページに公開されています。

  • ドライバは公式ページ上部のサポートページにあります

コスパは市場破壊級。ゲームしなくてもオススメ

高負荷時のファン動作は若干気になることもありますが、そもそもフルHD/60fpsで『原神』をプレイする程度ではファンは回りません(室温26度前後)。映像出力がたくさん必要でも大きいPCは使いたくない…といった用途でも、Radeon RX 6600Mが強力にサポートしてくれると思います。