小型デスクトップPCの大家であるMinisforumから、デスクトップ向けAMD Ryzenプロセッサの搭載に対応する「EliteMini B550」が発表されたのは4月のこと。プロセッサにはAMD Ryzenシリーズを採用しており、なんと外付けGPUの接続をサポートする点が大きな特徴です。小型PCながら強力なグラフィックス性能を実現し、ゲームをはじめさまざまな用途に利用できるとのこと。

今回発売前のサンプルを用い、実物の使用感を試すことができました。忙しい方向けに一言でまとめると、GPUを組み合わせない単体動作では超静音。一方で外付けGPU合体モードはやや粗削りで、常用には多少ハードルがあるかもしれないという印象です。

  • Minisforum「EliteMini B550」。グラフィックスカードは別売りです

ベアボーン仕様では約4万円、全盛りでも約9.8万円!

EliteMini B550は、もっともシンプルな状態ではベアボーンキットと表現できる製品です。販売ページではあらかじめプロセッサやメモリ、ストレージを搭載した小型PCとしての販売も行われており、用途や好みに応じた構成を選択可能。CPU、メモリ、SSDとOSを搭載しないベアボーンキットとしての価格は48,980円に設定されています。

しかし驚くべきは、CPUにAMD Ryzen 7 5700G、32GBメモリ、M.2 NVMe 500GB SSDを搭載した全盛り仕様でもわずか119,980円で販売されている点。さらに記事制作時点では予約販売限定として先着割引20%オフが適用されており、97,690円で購入できます。将来的にカスタマイズするにしても、いったん完成品PCとして購入するのも良さそう。

なお、今回手元にやってきたサンプルは、AMD Ryzen 7 5700Gを搭載し、16GBメモリとM.2 NVMe 512GB SSDを組み合わせるモデルでした。OSにはWindows 10がプリインストールされており、もちろんライセンスがちゃんと付帯しています。

  • 販売ページ。Ryzen 7 5700GとRyzen 7 4700Gの差額は1万円以下

持ち運びに便利なポーチ付き。GPUドッキング用の台座も付属

さっそくパッケージ外観から紹介。箱を開けると明るいオレンジ色のハンドキャリー用ポーチが大きく主張し、デスクトップPCながら持ち運んで使えることが伺えます。

  • やってきたMinisforum「EliteMini B550」。なお、今回紹介するのはサンプル機。実売時とは仕様に違いがあるかもしれないとのことです

  • パカリと開封。しっかりした作りのポーチにしまい込まれています

  • ポーチを取り出したところ。箱の下部には外付けGPU用のリグがバラバラの状態で入っていました

  • 付属品。HDMIケーブルやATX電源用ケーブル

  • 外付けGPU用リグ

  • VESAマウント固定用の治具など

  • 取説は自作PCに多少慣れていても必ず繰り返し読むことになります。捨てないようにしましょう

  • ポーチは上半分にACアダプタが入っており、下半分にPC本体を収納

  • PC本体を取り出したところ。一部を除いてボディはプラスチック製ですが、なかなか高級感のある見た目です

  • 本体外観

本体カラーには濃い目のグレーが採用されており、なかなかの高級感。フロントには大きく「POWERED BY AMD」の文字がロゴとともにあしらわれ、USB端子等はありません。端子はすべて後部に集約されており、DisplayPort×1とHDMI×2を備えて3画面の同時出力に対応します。ちなみに天面のロゴのすぐ横にはLEDを搭載し、電源オン時に青く光ります。

  • 青く光る電源LED。割りと目立つので、邪魔な場合は内部のケーブルを引き抜きましょう

アクセスは底面ネジから。付属クーラーは超静音

サンプルはCPUとメモリ、SSDを搭載した完成品ですが、せっかくなので底面のネジを引き抜いて中身の様子を観察してみました。メインボードを取り出す際にWi-Fiモジュールのケーブルを引っ張るおそれがあるので、注意して作業しましょう。

  • ゴム足がついた4本のネジを緩めるだけでかんたんにアクセス可能

  • 底面のフタをあけたところ。M.2 SSDにはヒートシンクが標準搭載されており、2.5インチドライブ用の特殊ケーブルもあらかじめ装着されています。M.2スロットは1個空きがあります

  • Wi-Fiモジュールをよく見ると、採用例の多いIntel AX200系ではなくMediaTekのRZ608が採用されていました

  • このWi-Fiモジュールから伸びるケーブルがケースに固定されているので、外すときは要注意です

  • ボードを取り出したところ。ヒートシンクやファンは外から目立たない黒に塗装されており、VRMやチップセットにもヒートシンクがあしらわれています

  • メモリはSO-DIMM DDR4×2。キングストンのメモリが採用されていました

底面を開くだけで容易にストレージの交換・増設が行える点はとても好印象。ファンやヒートシンクは真っ黒で、ケース天面のスリットから見えても目立ちません。なお、分解にあたってCPUクーラーを取り外してみようと試みましたが、あまりにガッチリと固定されていたため断念しました。

サンプルで採用されていたWi-FiモジュールのMediaTek「RZ608」は、昨年11月に発表されたばかりの新製品。AMDとMediaTekが共同開発しているので、AMDプロセッサ搭載モデルでは今後よく見ることになりそうです。ちなみに、Windowsの標準ドライバでは使用できない点には注意が必要かも。購入時点ではドライバがインストールされていますが、Windowsを新規インストールすると別途ドライバをインストールする必要があります。

電源を投入してみると、起動しているかわからないほどファンが静かでびっくり。本当に動作音がほぼなく、部屋やオフィスの暗騒音に紛れて完全無音動作と言ってもいいレベルです。それでいてZen 3ベースのAMD Ryzen 5700Gを搭載しており、性能も十分。ゲーミング以外で性能の低さを感じることはほぼないと思います。

  • PCの使用感を端的に表現できるSpeedometer。190超えのスコアを叩き出します

  • SSDの読み込みは2,500MB/s前後ですが、書き込みが妙に遅い点はやや気になります

え!! 小型PCでデスクトップ用GPUを!?

長々と製品について紹介してきましたが、なんといってもこのPCの特徴はグラフィックスカードを別途外付けし、大きくゲーミング性能を引き上げられる点にあります。側面のカバーを外してGPU用リグに接続し、電源ケーブルをつないで使うという仕組み。電源ケーブルはしなやかでとてもフレキシブルな専用品が同梱されています。

  • 側面のカバーを外したところ

  • GPU用リグを組み立てて……

  • まずPCを2つあるスロットの下の方に差し込みます。リグで吸気口が塞がらないよう、ベントが設けられています

  • PCを差し込んだところ

  • PC本体には2カ所ケーブルを接続する必要があります。底面のフタを開けたところにある4pinと……

  • 同じく底面の10pin端子にケーブルをつなぎます

付属のACアダプタだけでは出力が足りないので、別途電源ユニットを用意する必要があります。取扱説明書をよく見てGPUリグとPC本体、グラフィックスカードと各種ケーブルを接続しましょう。ショートの危険があるため、ACアダプタは必ず取り外しておきます。

ちなみに、今回は試用にあたって手元のCORSAIR RM850を使ったところ、電源ユニット側のATX 24pinケーブルの形状があわないという問題が発生。問い合わせてみると、電源ユニット付属のケーブルでリグに接続してみてくださいという案内がありました。しかし、このリグ側24pinのコネクタもかなりの曲者。脱落防止用のツメが干渉したため、かなり力を入れて無理やり繋ぐ形になりました。

  • 刺さらない付属の電源ケーブル。当然ですがフルモジューラー式の電源ユニットであることが必須です

  • リグ側にも電源コネクタがあり、あちこち取り回す必要があります

GPUには、本体前面に大きくデザインされている「POWERED BY AMD」を尊重し、AMD Radeon RX 6800を搭載してみました。PCIe用の電源ケーブルも同梱品では足りなかったので、ここでも電源ユニット付属のケーブルを用いています。性能が上がることは自明なので、ここではかんたんに「FF14 暁月のフィナーレ」のベンチマークテスト結果を紹介します。

  • AMD Ryzen 7 5700G単体での性能

  • AMD Radeon RX 6800を組み合わせたときの性能

外付けグラフィックスカードを接続したことで、大きくゲーミング性能が向上しました。しかし、本体ケースに収納して使うはずのグラフィックスカードが露出するため、静音性は今ひとつ。静かなグラフィックスカードの選択が重要になりそう。

さらに気になるのは、電源ユニットをゴロリと机に設置することになってしまう点です。製品ページのイメージ画像ではPCのすぐ横に美しくレイアウトされていますが、サンプルでは特に固定用の付属品が同梱されていなかったので、適宜PCの横に置くことになりました。設置にあたっては別途スペースを用意する必要がある上、あまりスマートとはいえない印象です。

  • 設置はこれでいいんでしょうか。電源ユニットは横に置いてあるだけです

静音PCとして使うにはこれ以上ないけども

ここまでMinisforum「EliteMini B550」について紹介してきた本記事。最新CPUと大容量メモリ、SSDとOS付きでも10万円(記事制作時点)を切る価格と、単体動作時の圧倒的な静音性が大きな魅力です。とはいえ、気鋭のGPU外付けギミックは個人的にはやや微妙。立派なキャリングポーチが付属しているので、PC本体だけを持ち歩き、場所に応じてGPUを接続するような特定の用途においては活躍できそうだと思いました。

そんな本製品は、現在予約販売を受付中。6月中の発送を予定しており、ベアボーンキットとしては40,980円から、全盛り構成では97,690円で購入可能。もちろん外付けGPU用のリグは全構成に付属します。