ソニーグループ(以下、ソニー)は、東京大学とJAXA(宇宙航空研究開発機構)と連携して、宇宙感動体験の創出を目指すプロジェクト「STAR SPHERE」(スタースフィア)を展開しています。STAR SPHEREは、ソニーの高性能カメラを積んだ人工衛星を開発し、宇宙や地球の写真や映像を誰でも撮れるというプロジェクトです。

今回、2022年10月14日~同年11月3日まで東京ミッドタウンで開催のデザインイベント「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2022」に出展し、ソニーのブースとして「PLAY SPACE.」を構えています。STAR SPHEREに関連するパネル説明のほか、ソニーが2023年春に実現予定の衛星撮影「Space Shooting Lab」のシミュレーションも体験できます。

オープニングセレモニーが開催された14日にはアーティストのLiSAさんが登壇し、宇宙への思いを語るひと幕もありました。

  • 超小型人工衛星の実物大模型をアピールするLiSAさん

  • 東京ミッドタウンのイベントスペース アトリウムにてPLAY SPACE.を出展中。時間は11時~21時、料金は無料(Space Shooting Labは予約制)

PLAY SPACE.では「君は宇宙で、どう遊ぶ?」をテーマに、趣向を凝らした展示が行われます。いくつか紹介しましょう。

Space Shooting Labコーナーでは、手元のコントローラを使って人工衛星を操作し、地球や星などの写真・動画を撮影するバーチャル体験が行えます。大きなディスプレイに表示される大迫力の地球を見つつ、人工衛星を動かして撮影のシチュエーションを決めていくという流れ。ブースではバーチャル体験にとどまりますが、本物の人工衛星をコントロールする撮影サービスは、2023年3月ごろに実現する見込みです。

  • 大型ディスプレイには地表の様子(左)と、軌道上を動く人工衛星(右)が表示されます

  • 手元のコントローラを使って、何時何分にどの角度で写真・動画を撮るか、シミュレーションします

会場には、2022年冬に打ち上げ予定の超小型人工衛星もお目見え。JAXA、東京大学、ソニーが共同開発した機体です。想像よりもコンパクトだったので、筆者は思わず「え、このサイズ感で実物大?」と驚きました。外観から細部に至るまで、精巧に再現してあるそうです。見ているだけで宇宙への興味がふつふつと。

  • 超小型人工衛星は10×20×30cmの「6Uサイズ」という規格。このなかに、どんなモジュールが入っているんでしょう?

  • レンズ下の「SONY」ロゴが誇らしげ

超小型人工衛星は打ち上げ後、地球の上空(高度500kmあたり)に位置し、95分ほどかけて地球を周回。運用から2年後を目途に、大気圏に突入して燃え尽きる予定です。

機体の底面にはQRコードが貼り付けてあり、読み込むと「もし宇宙空間で我々の衛星を見つけたら、ソニーに連絡をください」という宇宙人に向けたメッセージが表示されるんだとか。

  • 無事に宇宙空間へ飛び立てますように……(2022年冬に打ち上げ予定)

Space Generative Musicコーナーは、宇宙体験とアートを組み合わせたもの。地球表面を飛ぶ人工衛星をジョイスティックで操作すると、アクションに応じて効果音やBGMが変化していく趣向です。ソニーが開発中の自動生成音楽(Generative Music)を使って実現しているとのこと。

  • 視点を動かす、ズームする、といった操作によって、どんどん新しい音楽が流れてくるSpace Generative Music

200インチの大型ビジョン「Space UX TV Stage」には、PLAY SPACE.のキービジュアルをはじめとして、宇宙の映像と心地良い音楽、そしてアーティストのメッセージなども投映されます。時間帯によっては、ビジョンの前に立った人を認識してアバターとして画面上に反映するなど、メタバースの世界に誘うような仕掛けも用意しているそう。

  • 200インチの大型ビジョン「Space UX TV Stage」

宇宙ネイティブを作りたい!!

そんなSpace UX TV Stageの前で10月14日、オープニングセレモニーが開催されました。まず、ソニーグループ 宇宙エンタテインメント推進室の中西吉洋氏と同 宇宙戦略プロデューサーの村木祐介氏が、STAR SPHEREプロジェクトの概要などを語ります。

「宇宙飛行士でなくても、実際に宇宙に行ける時代になりました。ソニーとしても、人工衛星を通じて宇宙にチャレンジしていく考えです。テクノロジーの側面ではJAXAと東京大学と協力して、地上のパソコンで人工衛星を操作する仕組みを開発中です。

エンタメの側面では、アーティストやクリエイターの方々とコラボレーションして、遠い存在の宇宙を私たちに身近なものとしてとらえることができるような取り組みを展開していきます」(中西氏)

  • ソニーグループ 宇宙エンタテインメント推進室 室長 中西吉洋氏

ソニーはSTAR SPHEREを通じて、BtoC(個人向け)にもBtoB(法人向け)にもサービスを提供します。たとえば個人に向けては、「いつどこでどんな衛星写真を撮影したいか」を、家庭のパソコンから予約する使い方を想定。法人向けでは「10分間くらい、こんなカメラワークで撮りたい」といった要望にも応えていく予定です。

  • パソコンからお望みのシチュエーションを予約すれば、人工衛星が写真を撮って地上に送ってくれる――そんなサービスを想定。そこで撮影された写真の権利は個人に帰属するそうです

「私はJAXAでも研究しているんですが、宇宙と言われると皆さん『科学技術』とか『難しそう』といったイメージを持ちますよね。でも人は昔から星空をながめることで、色んなことを想像してきました。エモーショナルな部分もたくさんあるんです。そこで人工衛星を通じて『宇宙の視点』を持つことで、もっと皆さんの気持ちを変えていくようなことができないか――と考えました」(村木氏)

  • ソニーグループ 宇宙戦略プロデューサー 村木祐介氏

宇宙の視点を持てば、物事を別の見方でとらえられるようになる――と村木氏。では、どうすれば宇宙の視点を持てるようになるのか。それを手助けしてくれるのが、アーティストやクリエイターの皆さんですとして、参画メンバーを紹介します。

現在、女性歌手のLiSAさんや藍井エイルさん、タレントの中川翔子さん、ロックバンドのDISH//、写真家の石川直樹さんや北山輝泰さん、サイエンスナビゲーターの恐竜くん、天文学者の渡部潤一さん、アーティストの中山晃子さんといったメンバーがいます。

  • PLAY SPACE.に参加するアーティスト、クリエイターたち

またソニーは、小学校、中学校、高校にも教育プログラムを通じて「宇宙の視点」を味わってもらうことを企画中。村木氏は「子どもたちは感受性が高い。きっと色んなことを感じてもらえるでしょう。やがて宇宙がもっと身近な時代がやって来ます。そんな時代を生きる『宇宙ネイティブ』を、今回のプログラムでは作っていきたいと思うんです」と力を込めました。

宇宙は怖い存在だった

最後にゲストとしてLiSAさんが登場。それまで宇宙に対しては「分からないことが多すぎて遠い、ともすれば怖い存在」というイメージが先行していたと話します。今回、事前にSpace Shooting Labを体験した後は「夜空が本当にキレイだったんです。そんなきっかけでも宇宙に興味を持ち始めることができるんだな――と感じました」と笑顔で語りました。

  • ゲストのLiSAさん

LiSAさんは、人工衛星から撮影したというお気に入り写真も披露。それは米フロリダ州(ビスケーン国立公園あたり?)の上空で撮られたものでした。この写真を選んだ理由は、「お天気も一緒に撮れるんです。地球があり、その上に雲が浮かんでいます。そんな『層』を感じられる写真でした。全体的にグリーンなところが、絵としても美しいと感じました」とのこと。束の間の宇宙遊泳を楽しんだ様子が、その明るい表情からもうかがえました。

  • LiSAさんの選んだ「宇宙の視点」の1枚

PLAY SPACE.では会期中、いろいろな分野のアーティストやクリエイターがゲストスピーカーとして登場していきます。宇宙をテーマとしたワークショップも開催予定です。この機会に、宇宙を身近に感じて楽しんでみてはいかがでしょうか。