JR東日本は鉄道開業150年を記念して、鉄道の日である10月14日から10月30日までの期間限定で、文化創造イベント「超駅博 上野」をJR上野駅にて開催している。目玉は、かつて上野駅発着の路線で活躍した国鉄時代の115系電車やEF64形電気機関車をARの技術で上野駅ホームに再現するイベントだ。

  • 「超駅博 上野」の目玉コンテンツの1つが「AR 車両フォトスポット」。115系電車など懐かしの車両が上野駅ホームによみがえる!

AR技術を使い、昔の車両を上野駅の在来線線路にリアルに再現

かつて駅は停車場と呼ばれ、通過する場所だった。そんな駅が、2000年代からは便利に楽しくをコンセプトに、“通過する駅”から“集う駅”へと変化し、「駅ナカ」ブームを起こした。そして2020年以降、さらなる変化として、“集う駅”から“つながる駅”へと進化を進める。

町や暮らし、文化と歴史、地方そして人と人がつながる駅。そんなJR東日本が掲げる「Beyond Stations 構想」の一環として期間限定で開かれるのが、文化創造イベント「超駅博 上野」だ。

  • 10月14日から10月30日までの期間限定で開かれる「超駅博 上野」

期間中、JR上野駅ではさまざまなイベントを実施する。なかでも見逃せないのが「AR 車両フォトスポット」だ。これは上野駅と上越、北陸を長年つないできた車両たちを、AR(拡張現実)技術で上野駅15、16番線の線路の上に忠実に再現するもの。

AR技術で見られるのは、昭和から平成にかけて上野駅に発着していた115系電車とEF64形電気機関車。115系電車は新潟エリアで通勤車両としても活躍した人気車両で、EF64形電気機関車は寝台列車のブルートレイン「あけぼの」や「北陸」を牽引した車両だ。

  • スマートフォン用の専用アプリ「XR CHANNEL」を使用して体験する。3つのコンテンツを用意

KDDIとSoVeC(ソベック)の2社のテクノロジーを駆使して、車両1編成につき数千枚の写真を撮影。車両の骨組みの上に写真を肉付けする形で、実在する車両を忠実に再現した。そのため、車両の傷や汚れ、補修の跡などもそのまま再現されている。

ARでは車両だけでなく、音と動きも再現している。モーターの作動音やコンプレッサーの動作音がするほか、車両前方のライトが点灯したり、行き先表示板が回転するなど、あたかも車両が本当にその場にあるような形で体感できる。ARならではの取り組みとして、車両が宙に浮かび上がるところにも注目だ。

  • 空のホームに115系電車が現れた! ライトが点灯したり、行き先表示板が回転するなど、動きも楽しめる

  • 手前の車両の窓から後ろの車両が見えるなど、まるでその場に車両があるように思える

  • 車両が浮かび上がり、普段は見られない車輪の部分も見ることができる

【動画】115系電車とEF64形電気機関車を表示させたところ。ホームを歩けば、車両内の様子も見られる。2階ホームに止まっているのは、本物の常磐線車両だ

【動画】115系電車を宙に浮かべるモードはARならでは。補修の跡など細かな部分もリアルに表現している

実際の車両は老朽化ですでに廃車になっているものの、AR上でフォトグラメトリーという技術で、上野駅の空間に実在しているかのような形でリアルに再現しているのが新鮮だ。JR東日本の担当者は「鉄道の領域でこれだけの規模でフォトグラメトリーを展開しているのは、世界でもこれが初めてではないか」と自負する。今後、バーチャル空間での鉄道資産の保存にも努めるという。

この「AR 車両フォトスポット」を体験するには、JRE MALLページで対象商品となる「115系電車・EF64形電気機関車 ファイル&コースターセット」(2,000円)の購入が必要。希望日時を指定して購入することで、特別観覧エリアに入場できる電子チケットが発行される仕組みだ。

●「AR 車両フォトスポット」

  • 開催日:2022年10月14日(金)~16日(日)、10月28日(金)~30日(日)
  • 時間:11:00~16:00(30分毎入替制)、30日のみ15:00終了予定
  • 会場:JR上野駅15、16番線ホーム前

90秒で本格的なラーメンが味わえる! 最先端のフードテックも登場

この「超駅博 上野」に合わせて、JR上野駅の新幹線改札内コンコース地下3階 待合室前には、新たに「拉麺STAND」が登場。Yo-Kai Expressの自動調理販売機2台が設置され、イベント終了後も常設される。

  • 広い飲食スペースが確保された「拉麺STAND」。新幹線改札内コンコースにある

Yo-Kai Expresは、テスラの工場をはじめ全米で約50カ所に展開するシリコンバレー発のフードテックベンチャー。2022年春から日本にも本格的に参入し、現在は羽田空港第2ターミナルや首都高高速の芝浦パーキングエリアなどに自動調理販売機を設置している。独自の調理技術を使って、アツアツのラーメンやうどんなどを24時間365日、自動で提供。約90秒で本格的な味わいの麺類が食べられるのが魅力だ。

今回、「超駅博 上野」のコンテンツの1つとして、新たに新潟ラーメン「燕三条Se-Abura」を開発。これは、業務提携する人気ラーメンブランド「一風堂」のオリジナルで、煮干し風味の醤油味のスープと背脂、もちもち食感の太麺の相性が抜群。煮込むところから手掛けた背脂は凍らせてクラッシュしたものを入れているので粒子感が強く、旨みや甘味が際立つ。太麺も、事前に下ゆでしたものを自動調理することで、もちもちの食感を提供できたという。

  • 6種類から希望のラーメンを選択。支払いはSuicaなどの交通系ICカードで行なう

  • 蒸気を上げて調理され、約90秒でできあがる

実際に食べてみたのだが、自動販売機で仕上げたラーメンとは思えないほど本格的で、麺にコシがあり、スープも味わい深かった。背脂が表面を覆っているせいか、食べ終わったあともスープがアツアツの状態だった。

  • 新潟ラーメン「燕三条Se-Abura」。自動調理と思えない本格的な味わいなのに驚かされた

提供されるラーメンは以下の6種類。各地域のラーメンを食べることで、実際にその場所に行って、食文化や地域文化を知ってもらうきっかけも狙っている。Yo-Kai Expresは今後、新潟に東京のラーメンを提供する自動調理販売機を置くなど、国内地域の移動はもちろん、日本と世界をつなげるプラットフォームになることを目指すという。

●「拉麺STAND」提供ラーメン

  • 超駅博開催記念 新潟ラーメン 燕三条Se-Abura 980円
  • 一風堂提供ラーメン 一風堂 博多とんこつ IPPUDOプラントベース(豚骨風) 980円
  • Yo-Kaiオリジナルフレーバーラーメン 鶏 Yuzu Shio 790円
  • Yo-Kaiオリジナルフレーバーラーメン 東京 Shoyu 790円
  • Yo-Kaiオリジナルフレーバーラーメン 札幌 Spicy Miso 790円
  • Yo-Kaiオリジナルフレーバーラーメン 九州 Tonkotsu 790円

このほか「超駅博 上野」では、伝統芸能「鬼太鼓」をはじめとする新潟・佐渡地域の伝統芸能や、55インチの3面特大パネルで現地を訪れている気分になれる「五感体験型 新潟産直市」、「150年をめぐる旅」と題したデジタルスタンプラリーなど、さまざまなイベントを開催する。

  • 伝統芸能「鬼太鼓」は10月14日~16日に中央改札外グランドコンコースで開催

  • 「五感体験型 新潟産直市」は10月25日~30日に中央改札外グランドコンコースで開催。左端の専用ディフューザーでは、現地の香りが感じられる

かつて上野公園では、大正時代に「東京大正博覧会」が開催された。その後、会場となった上野公園は博物館や美術館になって、今の上野の文化を支えている。そうした歴史を含め、「博覧会のような上野を作っていきたい」という意図から、上野駅で開催されるこの「超駅博 上野」。最先端技術に触れられるイベントでもあるだけに、期間中には上野駅を訪れてみたい。