KDDIは9月13日、東京都渋谷区にある直営店の一角に「auミニッツストア 渋谷店」をオープンしました。デリバリーまたはテイクアウトで食料品や日用品を買える無人店舗です。
menuアプリでローソン/コストコ商品を買える「auミニッツストア」
auミニッツストアは、KDDIと資本業務提携を結んでいるデリバリーアプリ「menu」からの注文に特化した無人店舗です。ショッピングモール「渋谷モディ」の中にある直営auショップ「au Style SHIBUYA MODI」の一角に設けられました。営業時間は11時~19時、当面は平日のみ営業します。
オープン時点ではローソンの飲料やデザート、コストコの食料品や日用品など、デリバリーアプリで人気のある70品目ほどの商品を用意。設備的には最大500品目程度まで扱うことができ、冷蔵商品にも対応しています。
利用者目線ではmenuアプリ上の他の店舗と変わらない使い勝手で注文でき、最大の特徴は裏側にあります。auミニッツストアは商品の補充・回収を除くほとんどの業務が自動化されており、スタッフを常駐させることなく運営できるのです。
ロボットがはたらく無人店舗の裏側に潜入
店舗を訪れてみると、表に出ている部分はテイクアウトで注文された商品の受取口のみ。裏にある倉庫や作業スペースを含めても、店舗面積は50平方メートルほどです。
バックヤードを見せてもらうと、これだけコンパクトにできることにも納得。倉庫内の商品を探して取り出したり、受取口へ運んだりする作業はすべてロボットが行うことを前提としており、生身の人間が商品を持って行き来するような動線はありません。
倉庫内には商品を納めるコンテナがところ狭しと並び、商品の個数や置き場所はすべてシステムで管理されています。入荷した商品を倉庫に収めたり、賞味期限が切れた商品を廃棄したりする場合には有人作業が発生しますが、その際も人が倉庫に入って商品を探すわけではなく必要なコンテナが自動で出てきて、定位置に立ったまま商品の出し入れのみを行います。なお、人手が必要な作業は1日あたり30分程度で済み、在庫状況はリモートでも確認できるため、ほとんどの時間は無人で営業できます。
自動倉庫やロボットアームなどの仕組みは、ROMSの「RCS(Robotics Convenience Store)」を導入。小型無人店舗に適したシステムで、ROMS自身も2020年から実証実験として無人コンビニ「MOPU」を運用していました(2021年10月に終了)。
デリバリー注文ではこのようなハイテク店舗であることは感じにくいかもしれませんが、テイクアウトの際は受取口から見て右奥の窓にも注目。コンテナからロボットアームが商品を取り出す様子をガラス越しに見られます。
クイックコマースを強化しながら、店舗スペースの有効活用も
デリバリーアプリの普及拡大が進むにつれて、リアルな飲食店・小売店からの配送にこだわらず、ダークストアと呼ばれる配送専用店舗を設けるなどの方法で効率と利便性・速達性を高めた「クイックコマース」というジャンルのサービスが欧米で生まれ、日本にも上陸し始めています。たとえば最短10分で届くとうたう宅配スーパー「OniGO」やZホールディングスの「Yahoo!マート by ASKUL」などです。
クイックコマースのためのダークストアは配達員以外の一般客が足を運んでもその場で買い物はできないのが基本。auミニッツストアのようにテイクアウトにも対応するケースは珍しく、これも人手を介さずに商品を受取口まで持っていける無人店舗ならではの対応でしょう。
今回は半ば試験的な取り組みですが、これだけ省スペースであれば、販売スタイルや生活様式の変化によってキャリアショップのあり方が変わっていくなかで、余剰スペースの活用法のひとつとして広がっていくことも十分考えられます。
また、この店舗に関しては一等地の商業施設内にあるというのも非常に珍しいケースです。現時点ではローソンやコストコの商品のみを扱っていますが、商品ラインアップは順次拡充されます。場所柄を活かし、Z世代の若者にアピールできるような展開も計画しているということで、今後の展開にも期待です。