製作されたリブレットフィルムを金属平板の両面に貼り、フォースセンサに取り付けて回流水槽(一定速度の水流を発生する装置)に挿入し、板に平行な水流中での抵抗を計測し、平滑なフィルムを金属平板に貼った場合と比較して、リブレットによる抵抗低減率を算出したところ、実験中のもっとも遅い流速(s+=1.6、ペンギンの遊泳速度0.35m/sに相当)のときに最大の抵抗低減率2.0%が得られたという。抵抗低減効果は、実験中のもっとも速い流速(s+=13.5。遊泳速度3.8m/sに相当)でも、1%未満ではあるが維持されたとするほか、どの流速でも、リブレットが流速方向と平行な場合よりも、偏差角を15度つけた場合の方が抵抗低減率は大きいことが確認されたとする。

研究チームによると、従来の薄板リブレットや鋸歯状リブレットの最大摩擦低減率は、それぞれ約10%、約3%であり、今回の模倣リブレットの最大低減率よりも大きいとするが、従来の薄板リブレットや鋸歯状リブレットは、流速方向に対して平行な場合から角度をつけると、低減率は悪化してしまう一方で、今回の模倣リブレットは、平行よりも15度の角度をつけた場合の方が低減率が向上することが特徴的としている。

今回の研究で用いられたペンギン模倣台形リブレットは、従来の板・鋸歯リブレットに比べて最大抵抗低減率は小さいが、流速方向の変化に強いという結果について研究チームでは、流速方向が変化する自動車、船舶、水中・空中ドローン、水着などの抵抗低減への応用が期待できるとしているほか、台形のリブ断面形状には、鋭利な板・鋸歯リブレットに比べて壊れにくさが期待できるとしている。

なお、実際のペンギンでは羽毛は1本1本分離しており、遊泳中に動く可能性があるとしているほか、ペンギンが体表に塗布する撥水性油脂の影響や、太く短い紡錘体状の体形による影響も未知であることから、研究チームでは今後、それらの特徴を模倣リブレットに取り入れることで、さらなる抗力低減効果や、新たな特性が発現する可能性もあるとしている。

  • 回流水槽中の平板の抗力計測実験

    回流水槽中の平板の抗力計測実験。(A)側面模式図。(B)リブレットフィルムを貼った金属平板。(C)実験の様子 (出所:東工大プレスリリースPDF)