セグウェイ-ナインボットシリーズ(以下、セグウェイ)の電動キックボード「D-AIR(ディ・エア)」、試乗会に参加してきました。D-AIRは、セグウェイとして日本国内で発売する電動キックボードの第2弾となります。2022年7月30日まで応援購入サイト「makuake」で支援を募っており、すでにプロジェクトは成功。最安プランは89,990円です。
最大の特徴は日本仕様の安全基準を満たしていること。ナンバーを取得すれば公道を走れるほか、2024年が目途とされる改正道路交通法の施行後は、免許やヘルメットなしでも運転できるようになるそうです。今回の試乗は少しの時間と距離でしたが、D-AIR本体や乗り心地を紹介します。
まずはD-AIRの見た目と使い方をチェック
実際にD-AIRを見てみると、デザイン的にはよくある電動キックボードとほとんど変わりません。現在、国内でもっとも目にする電動キックボードといえば、東京・大阪・横浜・京都といった都市部でシェアサービスを展開している電動シェアサイクルの「LUUP」ですが、D-AIRはタイヤサイズもLUUPと同じ10インチで、外観で特に目立つ部分は見当たりません。
D-AIRの重さは17.3kgと20kgを切っており、LUUPの最新モデル(約25kg)よりも軽くなっています(それでも数字的には重たいですが……)。また、D-AIRの最高速度は19km/h(スペック値)で、比較的高速な移動が可能です。D-AIRは個人所有向けのモデルということで、コンパクトに折りたためる機構も備えています。折りたたんだ状態なら車のトランクに積み込みやすいほか、自宅や移動先への持ち込みにも便利です。
操作方法もシンプル。片足をステップに乗せた状態で、反対の足で数回地面を蹴って助走してから、右手のアクセルレバーを押し下げます。ブレーキは自転車と同じ操作性のレバーで、右手側が前輪ブレーキ、左手側が後輪ブレーキです。
簡単な説明を受けたら、いよいよ試乗です。筆者も実際に運転してみましたが、「思ったよりパワーがあるな」という第一印象。レバーを軽く押し下げるだけでグンと加速するのがわかります。試乗エリアがあまり広くなかったため、最大速度までの加速はしませんでしたが、それでも風を切る爽快感が味わえました。
「足で蹴って助走をつけ、手元レバーで加速」なので、操作は簡単。自転車に乗れる人ならすぐに運転できそう。会場では何人も試乗していましたが、操作に戸惑う人は見かけませんでした。ただ、小さく回るUターンだとスピードが落ちるので、足をつかないと回りにくく感じます。これは電動キックボード全般にいえることです。
電動キックボードは自転車のように普及するか
実際にD-AIRに試乗してみて、その手軽さと風を切る気持ちよさで、思わず「買っちゃおうかな」と心が盛り上がりました。サドルにまたがる一手間もなく、もちろんペダルを漕ぐ必要もないので自転車より手軽です。
D-AIRの走行距離は、1回のフル充電(約5時間)で約28km。だいたい横浜の中心部から東京タワーまでの距離です。これならD-AIRで通勤できる人も多いのではないでしょうか? 晴れの日はD-AIRで通勤し(もちろん会社が許可すれば)、雨の日は電車を使うスタイルも良いかもしれません。ちなみに、D-AIRはIPX5防水なので雨の日でも走行可能ですが、精密機械のため激しい雨の中での長時間走行は推奨していないとのことでした。
ところで、個人所有用の電動キックボードはセグウェイ以外からも発売されています。D-AIRを選ぶメリットはどこでしょうか?
セグウェイによると、2022年7月初旬の時点で、国内で販売されている電動キックボード製品で改正道路交通法に対応しているのはD-AIRだけとのこと。現在の電動キックボードは、道路交通法上では原付バイクと同じような扱いです(原動機付自転車)。運転には免許が必要なうえ、ヘルメットの着用義務もあります。(※シェア電動キックボードのLUUPは、現在は実証実験の一環として、特例的にヘルメット着用が任意になっています)
2024年を目途に施行予定の改正道路交通法では、電動キックボードは新しい区分の「特定小型原付」となり、条件付きで免許もヘルメットも不要に(ヘルメット着用は推奨されますが義務ではなくなります)。まさに自転車のような手軽な乗り物となるのです。
ただし、特定小型原付として認められるには、その電動キックボードが一定の要件を満たしている場合のみ。条件は最高時速が20km/h以下であることや、ヘッドライトが一定以上の明るさを持つこと、バックミラーの大きさが規定サイズ内であることなど、細かく定められており、D-AIRはこの条件をすべて満たしています。改正道路交通法が施行されたら、すぐにヘルメットなしでも公道を走れるわけです。
特定小型原付の運転には年齢制限があるものの、免許不要とヘルメットが不要になれば、移動先でヘルメットをどこにおくか悩むこともなくなります。いまのスクーターよりも手軽でしょう。そうなれば、今後は電動キックボードをはじめとする短距離電動モビリティが、電動アシスト自転車のように当たり前の乗り物として普及する可能性が高まります。D-AIRはそういった意味で先端の電動キックボードといえるかもしれません。
なお、最近は電動キックボードの飲酒運転が増えたり、マナーの悪化が目立つようになったりしています。LUUPが展開する電動キックボードのシェアサービスは7月1日から、渋谷・新宿・六本木周辺のシェアポートにおいて、毎週金曜日と土曜日の24:00~翌朝5:00の時間帯で貸し出し停止とする制限を始めました(実施期間は8月末まで、貸し出し停止中も返却は可)。悪質な違反走行をしたユーザーのアカウント凍結も行っています。電動キックボードは新しい乗り物であり、市民権を得て普及するまでには課題が多いのも現状でしょう。せっかくの便利な乗り物が公道走行禁止などになってしまわないよう、ルールとマナーを守って利用したいものです。