東京大学 生産技術研究所(東大生研)は6月29日、揮発性有機化合物(VOC)に曝露されている分子性塩の粉末が徐々に液体に変化する特異な現象を見出し、系統的な研究から同現象はVOCによる潮解現象と実証し、「有機潮解」と命名したことを発表した。

同成果は、東大 生産技術研究所(東大生研)の石井和之教授、東大大学院 工学系研究科の横森慶大学院生(研究当時)、東大生研の村田慧助教、中村誠司 学術専門職員、榎本恭子 技術専門職員らの研究チームによるもの。詳細は、英国王立化学会が刊行する化学全般を扱う学術誌「RSC Advances」に掲載された。

潮解は、クエン酸や水酸化ナトリウムなどの物質が、空気中の水蒸気を取り込んで自発的に水溶液となる現象のことをいう。身近なものとしては、ニガリ(塩化マグネシウム)を含む食卓塩が、大気中の水蒸気を取り込んで硬化することなどがあげられる。対して、水蒸気の代わりにVOCが取り込まれる潮解現象はこれまで報告されていなかったという。

そこで研究チームは今回、VOCに曝露された後の粉末の状態変化を追跡することに挑戦。実験では、容器内に化合物の結晶や粉末を置き、別途、有機溶媒を隔離して加えて密閉。その上で、VOCに曝露された後の粉末の状態変化が観察されたところ、有機溶媒の減少とともに、化合物の粉末が徐々に液体に変化する現象が確認された。粉末から液体となることで、その質量が上昇することも確かめられ、VOCによる潮解現象であることが実証されたとする。

  • 有機潮解の様子

    有機潮解の様子 (出所:東大生研Webサイト)