物質・材料研究機構(NIMS)は6月7日、JX金属、JFEスチール、住友化学、太陽誘電、デンソー、トヨタ自動車、日本特殊陶業、三井金属鉱業、三菱ケミカル、村田製作所と共に、酸化物材料を電解質とした全固体電池(ASSB)を将来の蓄電池と位置づけ、世界との開発競争にオールジャパン体制で打ち勝つために2020年5月1日に設立した「全固体電池マテリアルズ・オープンプラットフォーム」(MOP)を、2022年度より本格始動することを発表した。
ASSBは、既存のリチウムイオン電池(LIB)とは異なり、可燃性の電解液を用いないため、安全に動作できる温度範囲が広い上、長寿命化が期待されている。また、特有の高い信頼性とEVシフトの潮流とが相まって、その研究開発は世界的な活況を呈している。
硫化物系固体電解質を採用するASSBではLIBを凌駕する性能がすでに達成され、2020年代には車載用途で社会実装されようとしている。しかし硫化物系固体電解質は、電池の製造プロセス・設備が従来とは大きく異なることに加え、大気への暴露において水分との反応によって発生するガスが有害な硫化水素であるといった課題も抱えていることから、化学的により安定な酸化物系固体電解質を使用したASSBの実現が望まれている状況だという。
なお日本は、世界に先駆けてニッケル水素電池、LIBという高性能蓄電池を量産化した歴史を持ち、さらに酸化物型ASSBの実現に不可欠な技術を保有する世界有数のセラミックメーカーも擁している。このように恵まれた環境を活用し、全世界で研究開発が進められている酸化物型ASSBの分野においても世界をリードしていくために、早期にオールジャパン体制での研究開発を本格化し、加速していく必要があると考察されてきた。
また材料開発においては、高度解析技術の進展に加え、計算科学におけるAIおよびビッグデータの発展により研究環境が劇的に変化する中、将来を見据えた非連続的な革新材料の創出のための基礎研究を、企業が単独で行うことが難しくなってきている。
NIMSでは、保有する研究資産を有効活用し、日本の国際競争力を強化するために、NIMSを中核に各社の保有技術を結集してオープンイノベーションを実現するMOPを推進しているとする。2017年に化学業界、鉄鋼業界の企業と共に化学MOPと鉄鋼MOPをスタートさせ、そして2020年5月には3つ目のMOPとして全固体電池MOPが設立された。