磁性の打ち消し合いの度合いはエントロピーで表すことができ、この値がゼロになると磁性が打ち消された近藤効果状態を意味するという。それにエントロピーの計算結果を加味すると、最小フェリ磁性状態は温度とドット間の結合度合いに依存して、複数の量子もつれ状態を経ながら近藤効果状態になることが判明。その上、近藤効果状態にも係わらず電気伝導度は抑制されることが確認されたとする。

  • エントロピーの計算結果

    (左)エントロピーの計算結果。色の異なるグラフはドット2と3の結合度合いを変更したもの。t3/tが小さいほどドット2と3は実質的に離れていることを意味する。(右)T字型格子点構造とリード線からなる系。下からグラフのゼロ、log(2)、log(3)、log(4)のときの構造が表されている (出所:大阪公大プレスリリースPDF)

今回の研究対象の最小フェリ磁性状態は実際に量子ドットで十分実現可能であることから、今後、今回の研究内容の実験的検証が期待できるという。また、今回の研究で見出された「最小フェリ磁性と近藤効果の競合による量子もつれ状態の段階的な組み変え過程」の今後の研究を通して、同じく量子もつれ状態を扱う量子情報理論分野などとのシナジー効果が期待できるとしている。