アップルがiPhone写真コンテストの受賞作品を発表し、マクロ写真の奥深さが話題になりました。マクロ機能を搭載したiPhone 13 ProとiPhone 13 Pro Max以外のiPhoneでマクロ撮影を可能にするのが、スマホのカメラに装着する外付けレンズ。昨今では、100均(100円ショップ)でもクリップ式の外付けレンズが購入できるようになりました。100均の商品なのでクオリティには一切期待していなかったのですが、いい意味で予想を裏切られました。

  • 大手100円ショップで見つけたクリップ式のスマホ用レンズ。マクロレンズだけでなく広角レンズも入っており、これで110円というのに驚かされる

110円で購入できるスマホ用の外付けマクロレンズ

小さなものにグッと寄ってアップで撮影するマクロ撮影機能は、現行のiPhoneではiPhone 13 ProとiPhone 13 Pro Maxの2機種が搭載しています。それ以外の機種でマクロ撮影を楽しむには、別途サードパーティー製の外付けレンズを装着する必要があります。

外付けレンズは、Amazonや量販店などでさまざまな製品が入手できますが、もっとも安く買えるのが100均(100円ショップ)。Amazonなどでは安いものでも1,000円は軽く超えるのに対し、100均ならばほぼワンコインの110円で手軽に入手できます。これだけ安いと画質や実用性はどうなんだろう…?と思い、iPhone 13 Pro Maxやマクロレンズを装着したフルサイズミラーレスを用意して撮り比べてみました。

  • マクロレンズはこのようなクリップ式の構造になっている。構造がシンプルなので、多くのスマホで使えそう

100均で買えるマクロレンズは、クリップの先端にレンズが備わっている構造で、iPhoneのカメラ部にレンズが重なるように挟み込んで使います。マクロ撮影をしたい時だけ挟み込めば準備でき、iPhoneのカメラアプリでも切り替えの操作は必要なく、被写体にグッと近づけばピントが合います。今回使用したマクロレンズは、レンズ前1~1.5cmの距離でピントが合うので、ノーマルの状態よりも格段に近づけます。今回は、マクロ撮影機能のないiPhone 13に装着して撮影しました。

  • マクロレンズを搭載しないiPhone 13

  • このようにiPhone 13の広角レンズの部分に挟み込んで使用する。間違って超広角レンズの部分に装着しないように

iPhone 13 Pro/13 Pro Maxのマクロ撮影機能は、広角レンズを用いた通常の撮影モードで被写体に一定以上近づくと、マクロモードに自動で切り替わる仕組み。とてもラクチンです。ただ、超広角レンズを利用して撮影するため(画角は超広角ではなく広角レンズと同等)、映り込む範囲が広いのが欠点といえます。

  • iPhone 13 Pro/13 Pro Max(左)は標準でマクロ撮影機能を搭載しているので、外付けレンズの装着は不要だ

フルサイズミラーレスのマクロレンズは、キヤノンのRFマウントレンズ「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」を利用しました。焦点距離が100mmと長いので、被写体をゆがまさずに接写できるテレマクロ撮影が楽しめます。当然ながら、フルサイズセンサーと高画質レンズのおかげで、画質面も期待できます。欠点は、なんといってもスマホよりも格段に大きく重く、しかも高いこと。今回は高性能フルサイズミラーレス「EOS R3」と組み合わせたので、お値段はズバリ90万円!

  • キヤノンの高性能フルサイズミラーレス「EOS R3」とマクロレンズ「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」

100均マクロレンズが意外に使えた!

では、実写した画質をチェックしていきたいと思います。

iPhone 13と組み合わせた100均マクロレンズですが、意外にもピントが合った中央部の描写は良好で、小さな被写体をくっきり描き出してくれました。小さな虫の姿もシャープに捉えており、正直驚かされました。中央部だけを見れば、まさか100均のレンズだとは思われないでしょう。ただ、中央部以外の周辺部はまったく解像しておらずボケボケで、使い物になるのは中央部だけだと考えておきましょう。

iPhone 13 Pro/13 Pro Maxのマクロ撮影機能は、ピントが合った中央部の解像感、前後のボケ感も自然で、優等生的な仕上がりといえます。ただ、100%の等倍表示にすると、中央部の解像感は先ほどの100均マクロレンズの方が上回っていました。マクロ撮影時は超広角カメラを用いつつ、画角的には広角カメラと同等になるようにデジタルズームで調整しているようで、それが解像感が若干損なわれる要因になっているようです。

フルサイズミラーレスのマクロレンズは、当然ながら解像感やボケ感など表現力はピカイチでした。絞りを変えればボケ感も自由に調節でき、前述のiPhone組では不可能な多彩な表現が楽しめます。もちろん、価格や携帯性はiPhone組とは別格ですが…。

  • iPhone 13+100均マクロレンズで撮影。周囲はボケボケだが、中央部の虫や花の様子はかなり精細に描き出している

  • iPhone 13 Pro/13 Pro Maxのマクロ機能で撮影。全体にバランスよく写し出している

  • EOS R3+マクロレンズで撮影。中央部の精細感、周囲の自然なボケ感など、さすがの描写といえる

  • iPhone 13+100均マクロレンズで撮影。流れるような周囲の描写が、なんとなく迫力や躍動感を感じさせる

  • iPhone 13 Pro/13 Pro Maxのマクロ機能で撮影。前後のボケの描写が自然で好ましい

  • EOS R3+マクロレンズで撮影。絞りを開ければ、ピントが合う範囲をごく狭くできるなど、意図に応じて描写が変えられるのが魅力

100均マクロレンズはケラレの発生に注意

今回試した限りでは、100均のマクロレンズも「意外に使える」と感じました。中央部以外は使い物になりませんが、トリミング前提で使うならば問題ないでしょう。注意したいのが、iPhone本体のレンズとピッタリ合わせないとマクロレンズの縁が写り込んで黒くなる「ケラレ」が発生すること。マクロレンズにちょっと手が当たると簡単にずれてしまうので、撮影時は四隅を見てケラレがないかチェックする必要があります。

  • 100均のマクロレンズで右上にケラレが発生した例。みっともないので、撮影時は留意したい

マクロ撮影の楽しさにハマって本格的に挑戦したいならば、iPhone 13 Pro/13 Pro Maxに乗り換えるか、マクロレンズを装着したミラーレスカメラを使うのがおすすめ。フルサイズミラーレスはカメラもレンズも高価で重いので一般向きではありませんが、マイクロフォーサーズやAPS-Cミラーレスならばカメラもレンズも手ごろな価格で入手できます。

マイクロフォーサーズならば、OMデジタルソリューションズ(オリンパス)の「OM-D E-M10 Mark IV」(実売価格は80,000円前後)+「M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro」(実売価格は30,000円前後)のセット、APS-Cミラーレスならばキヤノンの「EOS Kiss M2」(実売価格は85,000円前後)+「EF-M28mm F3.5 マクロ IS STM」(実売価格は34,800円前後)の組み合わせがオススメといえます。