富士通の「LOOX」が11年ぶりに復活した。

富士通クライアントコンピューティング(FCCL)は3月29日、13.3型有機ELディスプレイを搭載したタブレットPC「FMV LOOX」を正式発表した。重さは約599g、厚みは約7.2mmで、13インチのWindowsタブレットとして世界最薄、最軽量をうたう(2022年3月1日現在、同社調べ)。

  • 富士通の往年の名機「LOOX」が11年ぶりに復活した

    発売は6月中旬。価格はオープンだが、店頭想定価格は、Core i5搭載のFMV LOOX 75/Gが181,000円前後、Core i7搭載のFMV LOOX 90/Gが219,780円前後

「LOOX」はもともと、22年前の2000年9月に発表された超小型ノートPCの名前だ。通信機能(PHS通信モジュール)を標準で搭載していたことが当時としては画期的だった。2011年を最後に、しばらくLOOXシリーズの製品は登場していなかったが、FCCLは、富士通PC40周年を記念したプロジェクト「FUJITSU PC 40th Anniversary」の一環として、LOOXの名称を冠した同機を2022年1月に公開した。このLOOXが、今回「FMV LOOX」として正式に発表された形だ。

重さは、2022年1月の発表当初は600g台と言われていたが、フタを開けてみると600gを切った599gを実現。同社代表取締役社長の大隈健史氏は「我々がやるなら当然世界最軽量を目指す」と、599gの達成を、FMV LOOX発表会場で大々的にアピールした。

  • FMV LOOXの599g達成をアピールするFCCL代表取締役社長の大隈健史氏(右)と、同社取締役会長の齋藤邦彰氏(左)

13.3型で600gを切った有機ELのWindowsタブレット

FMV LOOXは、13.3型の有機ELディスプレイを搭載したタブレットPCだ。フル切削のユニボディで、一体成形による継ぎ目のないデザインを採用している。

ディスプレイは13.3型ワイドの有機EL(解像度1,920×1,080ドット)で、応答速度は1ms。背面には約1,258万画素、前面には約207万画素のカメラを搭載し、スピーカーは4つのBOX型スピーカーを内蔵した。ラインナップは次の2モデル。このほか、直販のWEB MART限定として「Wi-Fiモデル」「5Gモデル」も用意される。(仕様などの詳細はニュース記事「富士通、往年の名機「LOOX」を継ぐ599gの13.3型2in1タブレット」に詳しく掲載している)

  • FMV LOOX 75/G……Core i5-1230U・8GBメモリ・256GB SSD(PCIe NVMe)

  • FMV LOOX 90/G……Core i7-1250U・16GBメモリ・512GB SSD(PCIe NVMe)

  • 同社製ノートPC「LIFEBOOK」と接続したところ。なお、FMV LOOX の開発は神奈川県川崎市にあるFCCL R&Dセンター、製造は島根県出雲市にある島根富士通で行っている

ユーザーに新しい体験を提供する、というFMV LOOX 。その取り組みの1つが手書き機能だ。FMV LOOX では、ワコムの次世代Active EXペン技術「Wacom Linear Pen」を世界で初めて取り入れ、極細のペン先を持つペンを新開発した(ペンは別売)。

ペンには新しいタッチICを内蔵し、綿密にペン信号を受信できるという。加えて筆圧センサーやタッチパネル構造を新しくし、ペン体験が飛躍的に向上したとのこと。ワコム製メモアプリ「Wacom Notes」もプリインストールする。

1gに満たない軽量化のアイデアを拾う

FCCL チーフデザインプロデューサーの藤田博之氏は、13.3型モバイルPCで最軽量をうたう「LIFEBOOK UH-X」で培ったノウハウが、FMV LOOXに生かされていると紹介。また、同社第一PM統括部 第三技術部の鈴木健二氏は、FMV LOOXの開発を進めながら、同時に軽量化のアイデア出しも実施。1gに満たない軽量化のアイデアを拾っていく日々が続いたと、開発の日々を振り返った。

本体は薄型化・軽量化を実現するためゼロから設計。メイン基板を小型化したり、カバーの厚みを限界まで薄くしたりするなど各部パーツにもこだわった。

  • 左がFMV LOOXのメイン基板、右がLIFEBOOK UH-Xのメイン基板

  • メイン基板の重さは約42g

冷却システムとして、熱をより効率的に拡散する薄型ベイパーチャンバーと、長いヒートパイプを搭載。冷却性を上げると必然的に重くなるため、放熱設計は軽さとのトレードオフが難点だったという。

また、FMV LOOXの特徴的な機能として、「クリエイティブコネクト」がある。これはUSB Type-Cケーブルで他のPCとつなぐことで、メインPCに接続されているマウスやキーボードを使って、FMV LOOXを操作できるほか、メインPCとのファイル共有が行える機能だ。また、PCの外付けディスプレイとしても使え、精細なペン入力機能を活かした液晶ペンタブレット利用も行える。

  • 「クリエイティブコネクト」のセカンドディスプレイモード。PCの外付けディスプレイとして使える

  • セカンドディスプレイモードでは、手描きアプリをFMV LOOX側に表示させることで、液晶ペンタブレットとしても活用できる

  • 外付けディスプレイとして、メインPCのミラーリング表示をしているFMV LOOX

藤田氏は、「クリエイティブコネクト」で有線ケーブルを使う理由を「タイムラグが極力少なく、大容量データの転送もスムーズだからだとした。また、複雑な設定もいらないため、「『ケーブルをつなげば使える』ことがPCに不慣れな人にもわかりやすい」と補足した。

  • キーボードはオプション提供。ノートPC「LIFEBOOK UH」シリーズのノウハウを継承し、19mmキーピッチや、キートップを凹ませた球面シリンドリカル構造を採用している

LOOXは40周年の集大成、PCを使った「快適な生活」を提供

FCCLが同日開催したFMV LOOX発表会で、同社取締役会長の齋藤邦彰氏は、FCCLが1981年のFM8から始まり、2021年で40周年を迎えたと挨拶。今回発表したFMV LOOXは、FMVシリーズ40周年の集大成だと力を込めた。

  • FMV LOOXを説明する取締役会長の齋藤邦彰氏

齋藤氏によると、LOOXの語源は「Look at eXperience」だという。大文字で表された「X」は、“変化や可能性を見据えた新たな体験”という意味で、LOOXシリーズの根幹ともいえるコンセプトだ。

齋藤氏は、2000年に初代LOOXが誕生してのち、(当時は革新的だった通信機能などの搭載で)デバイスの進化を先取り、ユーザーや斎藤氏自身にも新しい体験を与えてくれたとコメント。

LOOXは、革新的な機能を持つ同社のデバイスに与えられる称号で、“シリーズとして毎年展開するものではない”としながらも、「パソコンの形が変わるとき、将来のPCの大元になるものを(今後LOOXとして)作れたら最高だなと思います」と希望を語った。

  • LOOXの歴代モデルを振り返る齋藤氏

  • 懐かしのLOOXを手にして登場

また、1981年のFM-8から始まり、2021年で40周年を迎えたFCCLが提供するものは、PCだけでなく「PCを活用した生活」であると強調。コロナ禍で需要が高まっているデジタルを使った体験の快適さを、引き続き提供していくと話した。

LOOXも含めグローバル市場の拡大を目指す

FCCLの代表取締役社長 大隈健史氏は、FMVの今後の取り組みを紹介。FMV LOOXの発表とあわせて、FMV LOOX向けの新しい保証サービス「FMV LOOX Premium Care」を発表した。

FMV LOOX Premium Careは、落下、水損などのユーザー側による事故のほか、盗難やデータ復旧もカバーできる保証サービス。ユーザーが所有する他のデジタル通信機器の修理費用も保証するもの。月額880円で提供する。

  • FCCL 代表取締役社長の大隈健史氏

  • FMV LOOX Premium Careの概要

また、国内PCメーカー初の本格的なサブスクリプションサービス「FMV Prime」も、同日から提供すると発表。

FMV Primeは、ユーザーが初期費用を抑えながらPCを使い始められる、PC利用の月額サービス。PC本体の提供に加え、クラウドサービス「My Cloud プレミアム」や保証サービス、PCの利用方法などをリモートで補助する「ワンポイントレッスン」を組み合わせている。

3年プラン、5年プランの2つを用意し、価格は3年プランが月額4,980円、5年プランが月額3,980円(いずれもOfficeなし時)。対象機種は、家庭向けノートPC「LIFEBOOK AH」シリーズのWindows 11搭載版となっている。

大隈氏は「40周年の集大成として、さらなる発展を象徴する製品としてFMV LOOXを発表した。来年度はLOOXを含め、Windows 11搭載PCをグローバル市場の拡大を目指したい」と、今後の意気込みを語った。