日本マイクロソフトは2022年3月16日、オンラインイベント「Microsoft 365 & Teams Day 2022」を開催した。ここでは生産性とセキュリティに焦点を当てて、Windows 11やMicrosoft Teamsを始めとするMicrosoft 365の最新情報を紹介するセッション「ハイブリッドワークを支えるMicrosoft 365」の概要をお伝えする。

このセッションは法人ユーザーや企業のシステム管理者向けに、Microsoft Teamsを含むMicrosoft 365 Appsの新機能やWindows 11の特徴、企業で利用するデバイスを管理するMicrosoft Endpoint Managerの優位性をアピールしたもの。一般ユーザー向けではないものの、参考になる情報は多いだろう。

セッションはハイブリッドワークとMicrosoft 365を主体とした前半と、Windows 11およびデバイス管理や運用に焦点を当てた後半に分けられた。

  • 日本マイクロソフト モダンワーク&セキュリティ本部 プロダクトマーケティングマネージャー 春日井良隆氏(左)と加藤友哉氏(右)

まず前半のハイブリッドワークは、日本マイクロソフトでは「自宅やカフェなどで働くリモートワーク、職場で働くオフィスワークの利点を掛け合わせた多様化な働き方」(同社 モダンワーク&セキュリティ本部 プロダクトマーケティングマネージャー 春日井良隆氏)と定義している。

まもなく各地で「まん延防止等重点措置」が解除される見込みだが、企業がコロナ禍で投資したリモートワーク環境を生かし、従業員の満足度が向上するのであれば、保守的な国内でもハイブリッドワークが浸透するのではないだろうか。

  • 日本マイクロソフトで実践中のハイブリッドワーク。同社の従業員が全国各地からリモートワークを主体としている

そのために必要なのが、オフィスワーク従業員とリモートワーク従業員をつなげるコミュニケーションツールだ。コロナ禍のなか10年目を迎えた日本マイクロソフト本社はリニューアル中で、従業員も数回しか訪れていないそうだが、ミーティングルームにはSurface Hub 2S、社員用会議室にはリモートワーク従業員が会議に参加するためのMicrosoft Teams Rooms用デバイスを全室に設置。外部向けの会議室も同様な仕組みを用意し、ワンタップで会議に参加できるという。

  • ミーティングルームに設置された85インチモデルのSurface Hub 2S

  • 30階(と思われる)の各会議室スペースには、Microsoft Teams Rooms用デバイスを全室に設置している

日本マイクロソフトが提示したデータによれば、コロナ禍に突入した2年間でPCに向かう時間はプラス29%、オンライン会議利用時間はプラス89%、PCを積極的に使うユーザーはプラス18%、スマートフォンよりもPCを使うユーザーは67%と増加した。筆者も外出機会の減少に伴い、ノートPCよりもデスクトップPCの使用機会が増え、取材や打ち合わせはオンライン会議ツールを使っている。スマホは使用頻度の減少からSIM契約の見直しや買い換えを控えている状態だ。

このような状況下で重要になるのが、コミュニケーションツールの存在。Microsoftはコミュニケーション基盤の強化に努めており、Microsoft Teams自身の強化に加えて、Microsoft Whiteboardのリニューアル、SharePointにデータを保存してコミュニケーションを支援するMicrosoft LoopをMicrosoft 365に加えている。

  • Microsoft Teamsの発言者モード

  • PowerPoint Liveによる資料共有。こちらもMicrosoft Teamsの機能だ

  • Microsoft Teams参加者同士で利用できるMicrosoft Whiteboard

  • Microsoft TeamsやMicrosoft Outlookと同期し、ユーザー接点となるMicrosoft Loop

ほかにもハイブリッドワークの従業員コミュニケーション支援として、ローカルの承認やアドビのAdobe Sign、ドキュサインのDocuSignを利用した承認アプリ、スマホをトランシーバーとして利用するWalkie-Talkie、Teams電話ライセンス(Microsoft Teams Phone Standard)や、通信キャリアの対応サービスを契約すると利用可能なTeams電話を紹介。さらにMicrosoft Teamsの省電力化に努め、「2020年6月の消費量を100%とした場合、現在は48%。この2年間で約半分まで低下した。同様の取り組みは今後も推進する」(春日井氏)と説明した。

  • 省電力化するMicrosoft Teamsの歴史

ハイブリッドワーク時代のWindows 11

日本マイクロソフトはWindows 11を「ハイブリッドワークのためにデザインされたOS」(同社 モダンワーク&セキュリティ本部 プロダクトマーケティングマネージャー 岸裕子氏)と主張し、「生産性」「コラボレーション」「一貫性」「安全性」「選択肢」の観点から利点を解説した。生産性の文脈では、ウィンドウレイアウトをすばやく切り替えるスナップレイアウトや、日本語にも対応する音声入力機能を紹介。続くコラボレーションの文脈では、Windows Subsystem for Androidをピックアップした。

  • 日本マイクロソフト モダンワーク&セキュリティ本部 プロダクトマーケティングマネージャー 岸裕子氏(左)とMicrosoft Program Managerの篠木裕介氏(右)

一貫性については、Windows 10とのアプリ互換性が791,553本中99.7%に達し、機能更新プログラムが年2回から年1回へ減少、サポート期間が24カ月(EnterpriseおよびEducationは36カ月)を用意することで、安定性を優先する企業も約1年間の遅延期間を用意しながらWindows 11を更新できる点を強調した。

安全性はハードウェアベースのセキュリティ機能や、生体認証でパスワードレスを実現するWindows Hello for Businessをアピール。最後の選択肢はOEMパートナー企業がリリースする多数のWindows 11 PCを指す。さらにクラウドPCのWindows 365、クラウドVDI(仮想デスクトップ基盤)のAzure Virtual Desktopを並べて、「我々は次世代エンドポイントソリューションと呼んでいる。弊社は『どの製品がよい』という設定は設けていない。この2年間で変化した働き方やPCへの向き合い方に合わせて選択してほしい」(岸氏)と述べた。

  • 利用環境やスタイルに応じて選択できるWindows 11およびクラウドPC環境

これらエンドポイントソリューションを保護するのが、Microsoft Endpoint Managerだ。このソリューションはPC管理やMDM(モバイルデバイス管理)などの機能を備えるMicrosoft Intune、オンプレミスの管理ソリューションであるConfiguration Manager、ゼロタッチキッティングを実現するWindows Autopilotなどを含む、「ブランド。分かりやすく例えると、Microsoft Endpoint ManagerはMicrosoft Office、Microsoft IntuneやConfiguration ManagerはMicrosoft ExcelやMicrosoft PowerPointに位置付けられる」(Microsoft Program Manager, 篠木裕介氏)とする。

システム管理者向けソリューションの詳細は割愛するが、従業員がデバイスを紛失したときのワイプ(消去)機能や、BitLocker暗号化未適用PCのブロック機能など、「ゼロトラストセキュリティに沿った考え方」(篠木氏)で機能実装を進めている。この姿勢はハイブリッドワークのように働き方の自由度を高めると同時に、企業のガバナンスを維持するために必要だ。

  • Microsoft Endpoint Managerの概要