新しいiPhone SEが登場しました。これまでと見た目が変わらないので大きな進化はないのかな…と思う人がいるかもしれませんが、A15 Bionicの搭載でカメラ機能は画質が底上げされ、バッテリーの持ちもよくなりました。5Gへの対応や最新OSへのアップデートなど、長く第一線で使えるようになったのも見逃せません。新しいiPhone SEが、この価格帯のカメラ画質とバッテリーの基準を引き上げたと感じます。

  • 3月18日(金)に販売が始まる新しいiPhone SE(第3世代)。定評のある見た目はそのままに、中身をパワフルに一新した

伝統の本体サイズを継承、iPhone 7用のケースも使い続けられる

外観は、Touch IDを内蔵するホームボタンを備えた伝統のデザインを継承。本体サイズは、従来のiPhone SE(第2世代)はもちろん、iPhone 8ともまったく同じ。iPhone 7も、わずか0.1~0.2mmの違いしかありません。幅を抑えたコンパクト&スリム&軽量のボディは、やはり持ちやすいと感じます。

  • 左から新しいiPhone SE(第3世代)、iPhone SE(第2世代)、iPhone 8。見た目、サイズともに違いはない

  • 背面のデザインもほぼ一緒。ガラスパネルが張られており、見た目も触感も上質さが感じられる

  • 根強いファンを抱えるTouch ID内蔵のホームボタンを継承。ロック解除やApple Payの決済が直感的かつスマートにできる

カラーバリエーションは、レッド系の「PRODUCT(RED)」のみiPhone SE(第2世代)から継承され、ブラックは「ミッドナイト」に、ホワイトは「スターライト」に置き換わりました。今回試用したミッドナイトのカラー、Webサイトの画像を見る限りでは一般的なブラックなのかなと感じましたが、実際は深みのある青で、光の当たり具合によってさまざまな表情を見せます。飽きのこないカラーだと感じました。

  • ミッドナイトのカラー。前面のベゼルが黒く、動画や写真を全画面で表示すると映える

  • 強い光沢を持つ背面パネルはとても美しい

  • ミッドナイトのカラーは、光の当たり具合によって深みのある青に見える。単純なブラックではないのがよい

本体サイズが変わらないため、ケースなどiPhone 7/8/SE(第2世代)用のアクセサリーがそのまま使えるメリットがあります。すでにお店に並んでいる多くのアクセサリーが選び放題なだけでなく、これまで愛用していたケース類もそのまま使い続けられます。ていねいに手入れを重ねて味が出た本革ケースを手放すのが惜しくてiPhone 8が買い替えられない…と悩んでいた人も、後ろ髪を引かれることなく移行できます。

  • iPhone 7やiPhone 8、iPhone SE(第2世代)で使ってきたケースは、iPhone(第3世代)でそのまま使える。数年使い込んでようやく味が出てきた…という本革ケースも、みすみす眠らせずに済む

センサーやレンズはそのままに、画質を底上げするA15 Bionic

見た目はほとんど変わらない新しいiPhone SEですが、内部はガラリと一新されました。変更のキモとなるのがA15 Bionicの搭載で、このチップがさまざまな進化をもたらします。

まず大きな進化をもたらすのがカメラ機能です。センサーやレンズはiPhone SE(第2世代)と同じだとみられますが、A15 Bionicの搭載でニューラルエンジンを活用したスマートHDR 4やDeep Fusionなど、コンピュテーショナルフォトがもたらす高画質機能が有効になり、撮影したすべての写真のクオリティがワンランク底上げされます。

  • カメラのセンサーやレンズはiPhone SE(第2世代)から据え置かれたとみられるが、A15 Bionicの搭載で画質はワンランク向上する

実際に猫を撮影したところ、いくぶん薄暗い室内ではDeep Fusionが働き、iPhone 8で撮影した写真よりも毛並みなどの描写が向上したことが確認できました。晴れた日中に窓際にいた猫を撮影した写真では、ほぼ逆光の悪条件だったにもかかわらず、スマートHDR 4の働きで白飛びや黒つぶれがない期待以上の表現で仕上げてくれました。

  • 室内にいる猫をiPhone SE(第3世代)で撮影。猫の顔にピントを合わせたところ、毛並みを精細に描いてくれた。光量が少ないシーンなので、Deep Fusionが機能したとみられる

  • 同じ状況をiPhone 8で撮影。iPhone SE(第3世代)で撮影した写真よりも、全体に毛並みの描写がシャープさに欠ける

  • 晴れた日中に窓際にいた猫をiPhone SE(第3世代)で撮影。スマートHDR 4が効果的に働いて、逆光になった猫の毛並みも快晴の空も頭で思い描いていた理想通りに仕上げてくれた

おいしかったディナーやスイーツの写真、友だちと出かけた時の自撮り、旅先で出会った風景、ちょっとした日々のスナップなど、新しいiPhone SEにするだけでどの写真もパリッとした仕上がりになることが保証されるのは頼もしく感じます。ふだんミラーレスなどのカメラを使わず、iPhoneだけで撮影している人ならば、確実に機種変更のメリットが感じられるでしょう。

画質向上以外にも、A15 Bionicの搭載でポートレートモードやフォトグラフスタイルへの対応が図られました。ナイトモードに対応しなかったのは残念ですが、これはiPhone 13シリーズのプレミアムとして納得するしかなさそうです。

安心して長く使い続けられる環境ももたらす

チップがA15 Bionicになることで、アプリの起動や処理が目に見えるほど速くなるわけではありません。しかし、あと1~2年で最新OSのアップデート対象外になりかねないiPhone 8とは対照的に、今後数年は最新OSにアップデートでき、安心して長く使い続けられます。

また、新しいiPhone SEとiPhone 13シリーズがA15 Bionic搭載になったことで、A15 Bionicのグラフィックス性能や機械学習性能の搭載を前提に設計されたアプリが続々と登場する可能性があります。そうなると、それ以前のチップを搭載した古いiPhoneでは動作しなかったり、動作しても機能が大幅に制限されるケースが見込まれます。「人気のアプリが使えない…」という悲しい状況に陥らないようにするには、iPhone SE(第3世代)に乗り換えるのが賢明となるでしょう。

A15 BionicとiOS 15の搭載で、バッテリー駆動時間が動画再生時で2時間も延びたのは見逃せません。iPhoneは、キャッシュレス決済や電車の乗車など日々の生活に欠かせない存在となっているだけに、外出中にバッテリー切れになるのは何としても避けたいもの。性能を高めつつバッテリー駆動時間を改善したのは、素直に評価したいと思います。

MagSafeは欲しかったが、コスパの高さも満足できる佳作

ひとつ残念に感じたのは、MagSafeへの対応が見送られたこと。従来のワイヤレス充電器と違って面倒な位置合わせをすることなく確実かつ簡単に充電できるだけでなく、昨今はMagSafeの磁力を利用した車載ホルダーやスマホスタンドも続々と登場しており、「iPhoneのMagSafeは便利だな」と感じていました。

第3世代のiPhone SEは、最小容量の64GBモデルが57,800円で購入できます。為替の影響もあり、第2世代と比べると数千円引き上げられましたが、iPhone 13シリーズでもっとも安いiPhone 13 mini(128GB)は86,800円なので、3万円に迫る価格差があります。「最新のiPhoneが5万円台で購入できる」という点は、多くの人にとってインパクトになりそうです。アップルの「Apple Trade In」を利用すれば、iPhone 8は今なら11,000円で下取りしてくれるので、実質的な負担は4万円台で済みます。iPhone 7やiPhone 8で粘ってきた人も、思い残すことなく乗り換えられる好機だといえます。