Samsung Electronicsがオンライン発表会「Galaxy Unpacked 2022」を開催しました。最大のトピックは、ハイエンドスマートフォン「Galaxy S22」シリーズ。最上位モデル「Galaxy S22 Ultra」では、Sシリーズでいよいよ手書き入力が可能なSペンが内蔵できるようになりました。
冒頭に登壇したのは、同社のMX(モバイルエクスペリエンス)ビジネスを率いるTM Roh氏。まずは同社が充電器を同梱せずに廃棄物を減らし、化粧箱からプラスチックを最小化し、端末のライフサイクルを長寿命化しているなど、環境に配慮している姿勢をアピール。漁網を再利用した部材を開発して、Galaxy S22に世界で初めて搭載。海洋プラスチックへの対策を紹介しました。
国連開発計画とパートナーシップを結んだ同社はSDGsへの対応にも力を入れており、サムスン端末に搭載された「Samsung Global Goals」アプリは、約2億台にインストールされているそうです。
TM Roh氏は新製品にほとんど言及しませんでしたが、「高度な動画撮影、編集、共有機能を備えた究極のスマートフォン」と紹介しました。
順当なアップデートとなった「S22」
そして始まったUnpackedの本編ともいえるプレゼンテーションで、まず登場したのが「Galaxy S22」「Galaxy S22+」の2製品。主なスペックはニュース記事にありますが、両者は基本的にディスプレイサイズが異なるだけ。デザインも従来の「象徴的なSシリーズのデザイン」を踏襲しています。前モデルで採用されたフラットで左肩にカメラを寄せた背面デザインを今回も採用しており、Phantom White、Phantom Black、Green、Pink Goldと言う4色カラーはいずれもマットなカラーとなっているようです。
カメラはトリプルカメラで、新しい50MPの広角カメラ、10MPの光学3倍望遠カメラを搭載。「Super HDR」機能により、特に強い日差しの逆光シーンでも被写体を明るく写せるといいます。
さらに夜景の動画撮影機能が強化されました。光学式手ブレ補正は従来比58%の精度向上を果たし、さらに電子式手ブレ補正(VDIS=Video Digital Image Stabilization)を活用。VDISは従来比4倍のモーションデータを解析することで手ブレを抑えるそうです。
ポートレートモードでは、AIを活用した「AI Stereo Depth Map」によって、被写体と背景を分離する際の精度が向上。細かい部分も正確に認識して背景だけをぼかす、といった処理が可能になっていると言います。
AIオートフォーカス、VDIS、スーパーHDR、複数のカメラ、動画撮影機能など、こうした機能は他社のカメラアプリでも利用できるとのことで、UnpackedではInstagram、TikTok、Snapchatが対応していることが紹介されていました。
現時点で、日本国内での発売に関しては明らかにされていませんが、すでに日本語サイト]も公開されていますので、例年通り携帯キャリアから順次発売されるのは間違いないでしょう。グローバルでは2月9日から予約を開始、発売は2月25日から。価格は5Gモデルが「Galaxy S22」は799ドルから、「Galaxy S22+」は999ドルからとなっています。
この2機種は、基本的には前モデルである「Galaxy S21」「Galaxy S21+」の順当なアップデートで、カメラ性能を向上させたことが特徴といえるでしょう。
初のSペン内蔵でNoteシリーズと融合した「Galaxy S22 Ultra」
「Galaxy S」シリーズの「Ultra」はこれまでも大画面を搭載した最上位モデルでしたが、「Galaxy S22 Ultra」は新たにSペンが内蔵できるようになりました。前モデルのS21 UltraではSペン対応したものの内蔵はされず、Noteシリーズとの違いが残っていたSシリーズですが、Sペンを本体下部から収納できるようになり、Noteシリーズと同様の使い勝手となりました。
デザイン面では背面もエッジがカーブしたデザインで、「象徴的なGalaxy Noteのデザイン」としており、実質的にはGalaxy Noteの最新モデルでもあるといってよいでしょう。背面はカメラ部のデザインが一新され、レンズだけが飛び出しているような形状になりました。
「S22 Ultra」に最適化されたSペンを搭載したことで、Sペンのパフォーマンスも向上。「S21 Ultra」「Note 20」に比べて、Sペンの反応が3倍になったと言います。ハードウェアだけでなく、ペンの移動をAIによって予測することでよりスムーズに描画ができるようになりました。
アーマーアルミニウムのフレーム、ディスプレイと背面のCorning Gorilla Glass Victus+を採用するなど、堅牢なボディを実現。6.8インチのディスプレイサイズは従来通りで、120Hzのリフレッシュレートも同様です。ディスプレイのアルゴリズムを改善した「Vision Booster」によって最大輝度は1,750nitに達し、太陽光下でも明るくリッチな色で表示してくれるそうで、「これまでで最も先進的なディスプレイ」としています。
パフォーマンス面ではNPUが強化され、機械学習の処理性能が73%向上。高速化で増える発熱に対しては、新しい放熱制御などによって発熱を抑えて長時間の高速駆動を実現するとしています。
カメラは4つ。メインカメラは108MPで、10MPの光学3倍カメラ、10MPの光学10倍カメラ、12MPの超広角カメラを搭載します。メインカメラは「Adaptive Pixel」技術を搭載。メインカメラでは9つの画素を1つの画素として使い、12MPの画像を記録するノナビニング技術が搭載されています。この場合はセンサーのピクセルピッチが2.4μmと大型化するため、感度やダイナミックレンジが拡張されますが、108MPでの撮影時にこの12MPの画像も同時に記録して合成することにより、108MPの画像でもより高画質の撮影ができるとしています。
NPUを活用したAI処理によって実現する「Detail Enhancer」は、シーンや被写体の認識精度が向上し、適切なシャープネス処理を行います。加えて、夜景でも昼間のように撮影できる「Nightography(ナイトグラフィー)」もアピールされています。
レンズには反射を抑えるコーティングが施されたガラスレンズを採用。レンズ性能も向上して夜景時の照明の反射が抑えられるとしています。夜景撮影時は、1回の撮影で複数枚の写真を撮影し、ブレやノイジーな写真を省いたうえで合成することで、1枚のクリアでブレのない画像を生成します。また、AIが被写体を認識して最適な色再現やシャープネス処理などを行います。
動画では、「Galaxy S22」と同様に光学式手ブレ補正とVDISを併用して手ブレを強力に補正。低照度の環境でも明るい動画が撮影できるとしています。
さらに暗く真っ暗な状況でも、「Super Night Solution」により、カメラが自動的にフレームレートを減らして光の取り込みを多くし、補完することで、暗所撮影でも明るく撮影してくれるそうです。
マニュアル撮影が可能なプロモードも搭載しますが、光学3倍、10倍の望遠カメラでも詳細な設定をしながら撮影が可能。新たに「Expert RAW」撮影機能も搭載。プロモードと同様にマニュアル撮影が可能で、マルチフレームで撮影したRAW画像を合成することで、よりノイズの少ない高画質なRAW画像が生成できるそうです。
「最高のGalaxyカメラ、Sペンの内蔵、4nmプロセスのSoC、最も明るいディスプレイによって、新しいスマートフォンのスタンダードになる」と同社ではアピールしています。
グローバルでの発売は2月25日から、価格は1,199ドルからとなっています。
タブレットやSamsung Walletなども注目
「Galaxy S22」シリーズのほかには、タブレットの「Galaxy Tab S8 Ultra」「Galaxy Tab S8+」「Galaxy Tab S8」も登場。詳細はニュース記事にありますが、特に初めて登場した「Galaxy Tab S8 Ultra」が注目です。
14.6インチという大画面を搭載したAndroidタブレットで、デュアルインカメラやトリプルマイクを装備し、インカメラを使って快適なビデオ会議などが行えます。もちろんSペンに対応。Tab S7では9msだったSペンの遅延が2.8msまで高速化して、より快適な描画が可能です。
Galaxyスマートフォンと連携し、描画ソフトのカラーパレットなどをスマートフォン側に描写し、画面を最大化して使用できる機能も備えるなど、機能性と利便性藻両立させています。Sペンに最適化されたアプリとして「CLIP Studio Paint」とビデオ編集の「LumaFusion」も紹介されました。
Windows PCとも連携するなど、クリエイティビティと生産性の高いタブレットとアピール。価格は「Galaxy Tab S8 Ultra」が1,099ドルから、「Galaxy Tab S8+」が899ドルから、「Galaxy Tab S8」が699ドルから。発売は2月25日の予定です。
さらに、国内での登場の見込みは薄いのですが、Apple PayやGoogle Payに対抗するSamsungの決済機能として「Samsung Wallet」も紹介されました。クレジットカードなどを登録してタッチ決済が可能なウォレット機能ですが、身分証明書や車のキー、搭乗券などをデジタルデータとして保管できるようになっているようです。
これまで、ハイエンドスマートフォンに「Galaxy S」シリーズと「Galaxy Note」シリーズを持っていたSamsungでしたが、今回のイベントで登場した「Galaxy S22 Ultra」は双方を受け継ぐモデルとなっています。近年はSペン以外のそれぞれの違いが出づらくなっていたことから、統合は自然な流れでしょう。
日本でも登場が確実視される「Galaxy S」シリーズの最新モデル。実際に触れるのが楽しみな製品です。