AMDはNavi 24コアを利用したConsumer向けのRadeon RX 6500 XT/Radeon RX 6400に加え、1月19日、プロフェッショナル向けにも同じくNavi 24を利用したRadeon Pro W6500M/W6400/W6300Mの3製品を追加した。こちらのPro版の方も簡単にご紹介しておきたい。

今回発表の3製品であるが、型番から判るようにDesktop向けはRadeon Pro W6400のみで、Radeon Pro W6500M/W6300MはMobile向けとなる。

まずはそのRadeon Pro W6400であるが、御覧の様に1slot幅で長さも切り詰められた、Low Profile向けのフォームファクタでの提供となる(Photo01)。先にスペックを書いておけば、12CU(768SP)構成で外部メモリはGDDR6 16Gbpsの64bit幅接続(容量4GB)。性能はピークで3.54TFlops(FP32)とされており、ここからBoost時の動作周波数は2.47GHzほどと推定される。恐らく通常利用時はもう少し下がり、Radeon RX 6400の2039MHz(Game Clock)とそう変わりはないと思われる。位置づけ的には、同社が2019年7月に発表したRadeon Pro WX 3200の後継(Photo02)となる形だ。

  • AMD、Radeon Pro W6000シリーズにW6500M/W6400/W6300Mを追加

    Photo01: ConsumerのOEM向けにラインナップされるRadeon RX 6400のPro版、といったところか。

  • Photo02: フォームファクターはほぼ同一。消費電力やメモリ容量も同じである。PCIeの世代は上がったが、バス幅はx8→x4に減ったのでホストとの帯域は結局同一である。

ただ既にRadeon RX 6500 XTのレビューも掲載されていると思うが、性能そのもので言えば決して高速という訳ではない。にも拘わらずこのクラスの製品をワークステーションマーケットに投入する意味は? というあたりに関し、もう少し説明があった。

AMDの分析によれば、通常のOffice Task(Photo03)とそのうちOffice 365を利用しての作業の内訳(Photo04)、2D CAD作業(Photo05)とその内訳(Photo06)を見る限り、Professional向けだからといって必ずしもGPUがフルに使われているわけではないとする。なので、勿論GPUをフルに利用するSimulationやCAE、Medical、VFXなどの用途にはハイエンドのGPUが必要だが、2D CADやFinance、Office ProductivityなどではRadeon Pro W6400でも十分、という判断である(Photo07)。

  • Photo03: いわゆる一般的なオフィスの作業向けで言えば、GPUを利用する頻度はそれほど高くない。

  • Photo04: ここでULのProcyonを持ってくるのもどうかとは思うが、基本的にあまりOffice365ではGPUを使わないのは間違いない。

  • Photo05: 2D CADで言えば、勿論それを3Dに展開するようなケース(ViewportとかRendering)ではGPUの負荷が高くなるが、それ以外のシーンではGPUの負荷はそう高くない。

  • Photo06: これはGPU Profilerを利用してGPU Memoryの利用率を測定したもので、ピークでは3.3GBほど使うが殆どのケースでは2GB未満で済むとしてる。

  • Photo07: Simulation&CAEにRadeon Pro VIIがまだラインナップされるのは、この用途だとGPUというよりはOpenCLを利用してのGPGPU的な用途が多いという事だろうか?

ちなみにRadeon Pro WX 3200はMini Display Port×4の構成であるが、Radeon Pro W6400ではDisplay Port×2の構成になっている。これについては

  • Pro Graphicsのユーザーの1/2はディスプレイ1枚、1/3以上は2枚の構成であり、つまり画面出力は2つあれば殆どのユーザーニーズを満たせる
  • 1枚目のディスプレイは2K、2枚目が4Kという構成が非常に多いので、4K×2ないし8K×1が出力できれば十分である

とされる(Photo08)。要するに、殆どのユーザーに必要十分な構成に絞り込んだのがRadeon Pro W6400という事である。

  • Photo08: まぁ筆者みたいに7枚もディスプレイを使っているのは例外というのは判る。

性能に関しては、やはりRadeon Pro WX3200及びNVIDIA T600との比較という形で色々示されており(Photo09~16)、十分に性能面で優位性がある事が示されている。それでありながら消費電力はピークで50Wと低いためにシステム全体で300WのPSUでカバーできるとし(Photo17)、またエンタープライズ向けに3年間のサポートも付属する(Photo18)といった点は、コンシューマ向け製品との大きな違いだろう。

  • Photo09: これはこれはPCMark 10でのScoreをRadeon Pro WX3200と比較。

  • Photo10: 同じくPCMark 10でのScoreをMVIDIA T600と比較。

  • Photo11: 3DモデリングのMcNeel Rhinoと、AutoCADでの性能比較(対Radeon Pro WX3200)。

  • Photo12: 同じくMcNeel Rhinoと、AutoCADをNVIDIA T600と比較。

  • Photo13: Puget Bench経由のPhotoshopとPCMark 10のPhoto EditingをRadeon Pro WX3200と比較。

  • Photo14: 同じくPhotoshopとPCMark 10のPhoto EditingをNVIDIA T600と比較。

  • Photo15: PCMark 10のRendering & Visualizationの結果をRadeon Pro WX3200と比較。

  • Photo16: 同様にRendering & Visualizationに加え、SPECarc for SOLIDWOEKSの結果をNVIDIA T600と比較。

  • Photo17: PSU云々についてはCPUその他の構成でも変わってくるとは思うが、一般論としてTCO削減には消費電力節約が効果的で、ここに貢献するという訳だ。

  • Photo18: このあたりのサポートを考えると、例えばリテール向けのRadeon RX 6500 XTが$199だから$229のRadeon Pro W6400が高い、とも言えないことになる。

当然ソフトウェアの方も、Radeon Pro Softwareのサポートとなる(Photo19)。ドライバの長期サポートやCrash Defender(Photo20)、色々な追加機能(Photo21)などがRadeon Pro W6400で利用できることになる。

  • Photo19: この辺は別にRadeon Pro W6400のみならず他の製品でも利用できる話である。

  • Photo20: この「4割のユーザーは古いドライバを利用している」というのも困りものではあるのだが。

  • Photo21: よく見ると、HEVC/H.265 Encoderのサポートがないのが判る。Navi24は物理的にEncoderを省いているのでどうしようもないのだが、Pro向けを考えるとやっぱり残した方が良かったのでは? という気はしなくもない。

ここまでの話はRadeon Pro W6400に関するものだが、冒頭で説明したように新たにRadeon Pro W6500MとW6300Mも追加された。最後に簡単ではあるがスペックをこちらに示す(Photo22)。

  • Photo22: W6300Mは概ねW6400に同じだがVRAMを2GBに半減させ、また微妙に動作周波数を落としてその分消費電力を35Wまで下げている。W6500MはRadeon RX 6500 XT相当の構成(ただし動作周波数は落としている)にして、その分消費電力は50Wになった。