清潔意識の高まりとともに「空気の質」に関わる家電が人気を集めています。その中でもパナソニックの「ジアイーノ」は、2020年前半の一時期、入荷待ちになった人気製品です。これまでは床に置いて使っていた「ジアイーノ」ですが、今度の新製品は天井に設置するタイプ。公共施設、病院、学校、保育園といった場所への導入を想定しています。

天井に置く「ジアイーノ」は給水・排水の手間いらず

パナソニック エコシステムズが新たに発表したのは、「次亜塩素酸 空間除菌脱臭機 天井埋込形ジアイーノ」。発売は4月1日。適用床面積は125平方メートル、本体のメーカー希望小売価格は825,000円(工事費別)です。

  • 天井埋込型ジアイーノ。かなり大きいですね

今回の天井埋込型ジアイーノは従来の空間除菌脱臭機能に加えて、加湿機能とHEPAフィルターによる集じん機能をプラスしました。天井に設置するビルトインタイプなので、床の場所を取らず、人の出入りがあるオフィスの入り口や、小さい子どもが走り回る保育施設などでも使いやすいところが特徴です。コンセントを占領しないのもうれしいですね。

  • 外形寸法は幅1,180×奥行き575×高さ331mm。電源は単相200V。給水と排水のダクトを設置できる場所なら既存建物のリフォームでも設置可能です

まずは「ジアイーノ」の特徴をおさらい。ジアイーノは、空気中に浮遊する菌・ニオイを吸引して、本体内部で生成する「次亜塩素酸(電解水)」によって除菌・脱臭する機器。2013年に発売して以来、一般家庭だけでなく、医療、教育、介護現場などで導入されています。

  • 30年の歴史があるジアイーノ。日本だけでなく海外でも販売しています

次亜塩素酸は水道水と塩を電気分解して作るため、ジアイーノでは水と塩タブレット(塩のかたまり)を使います。これまでの据え置き型ジアイーノは、一般的な加湿器と同じくタンクに水道水を入れて、なくなったら給水。しかし、介護施設や保育施設などでは、スタッフは本来の業務で忙しいので、給水や塩タブレットの追加といった作業の負担はできるだけ減らしたいものです。

  • 従来のジアイーノは空気清浄機のように床に置いて使います

パナソニックでは、これまで業務用ジアイーノとして水道直結タイプをラインナップ。給水の手間を減らしてきましたが、排水の必要はありました。

  • 水道直結タイプのジアイーノ。給水の手間が省けます

  • ジアイーノは専用の塩タブレットを使います

天井埋込型ジアイーノは、1年に1度、塩水パックの交換とHEPAフィルターの掃除を行えばOK。さらに2年に1回、HEPAフィルターと電極の交換が必要ですが、本体と水道配管を接続するため、排水も給水も自動。毎日のメンテナンスは不要です。

新築の物件なら配管をしっかりデザインした上で施工できます。リフォームの場合は天井部に給排水のダクト工事が可能なら設置可能。本体の高さが331mmなので、天井部分に本体を置くスペースがあるかどうかも大事なポイントです。

設置工事自体は、一般的な天井埋込形のエアコン設置をしている業者ならできるとのこと。「工事費用は天井埋込形エアコン設置工事と同程度か、やや高くなるくらいのイメージ」(パナソニック担当者)

ダクトを分岐させれば、最大8カ所にキレイな空気を送り込めます。部屋ごとに設置しなくていいのは大きなメリットでしょう。

天井高が2.7mの場合で、適用床面積は125平方メートル。天井高が高くなるほど、適用床面積は狭くなります。

  • 日々のメンテナンスは不要です

  • 塩水パックは電気分解に使って中身がなくなっていくため、1年に1回、交換が必要です

遠心粉砕方式の加湿ユニットを搭載

加湿の方式は「遠心粉砕方式加湿」というもの。ドラムが高速回転して噴出した水滴を壁面にぶつけて、水を微細化させる仕組みです。ドラムの回転数によって加湿量を調整できるため、乾燥するときは高速に回転して加湿量を増やし、部屋の湿度が高いときは低速回転で加湿量を抑えます。

似たような加湿方式に「超音波方式」がありますが、超音波方式と遠心粉砕方式の違いは、前者は放出する水粒子の大きさがばらつくのに対し、後者は超微細・均一な水の粒子を部屋に届けられるところ。天井埋込型ジアイーノの加湿量は、一時間あたり1,300mlとたっぷり。また、気化式の加湿器のようにフィルターがないため、カルキ成分の目詰まりなどもありません。

  • モーターやドラムがあるため加湿ユニットは大きめ

  • 遠心破砕式の加湿機能で冬の乾燥対策が可能です

  • 中央に見える水滴がたくさんついているカバーの内部に、回転するドラムを配置

  • 加湿のデモンストレーション。遠心破砕方式加湿ユニット側は湿度が上がっています

  • HEPAフィルターを搭載し、0.3μmの粒子を99.97%捕集

別売りの換気扇と連動する機能も

専用のリモコンにはCO2センサーを搭載。オプションの換気扇を連動させると、室内のCO2濃度が1,000ppmを超えたとき、自動的に換気扇を30分運転して換気量をアップする「ブースト換気」を備えています。在室人数が増えたときでも適切に換気ができて安心です。

  • オプションの換気扇を使うと、換気対策も同時に実現

14億円かけて「IAQ検証センター」を設立

パナソニック エコシステムズでは、実使用環境で次亜塩素酸の効果検証などを行う「IAQ検証センター」を約14億円かけて設立しました。IAQ検証センターでは、温度と湿度、そして気体状になった次亜塩素酸の濃度制御ができ、浮遊菌に対する除菌効果の測定が可能です。

6畳から80畳まで広さを変えられる「実空間除菌試験室」も設けました。室内外の温度と湿度も調整できるため、季節など外部条件の影響を受けません。戸建て、マンション、非住宅といった間取りを変えての検証にも対応し、実際の設置状況に近い環境で試験ができます。

ちなみに試験室の格付けは「Biosafety Level 2」。研究用途として、はしかウイルスやインフルエンザウイルスを取り扱えるレベルの安全性を備えています。

同社の小笠原卓社長は、「住宅メーカー、マンションディベロッパーなどから、ウイルス対策を住宅の訴求ポイントにしたいというお声をいただいています。ペットを飼っているお客さまからはジアイーノの脱臭機能が好評です。そうした中、従来の検証方法では春夏秋冬と自然の気温で検証していたため、約1年かかります。新設したIAQ検証センターを使うことで、開発サイクルの短縮につなげたい」と、IAQ検証センターの狙いを説明しました。

  • 試験用の施設(IAQ検証センター)を14億円かけて設立

  • 実使用に近い環境で検証が可能

除菌・脱臭ができるとして人気の「ジアイーノ」。今回の天井埋込型ジアイーノは医療施設や介護施設などから注目を集めそうですが、個人的には脱臭ができるので、マンションのゴミステーションや運動施設の更衣室に設置されるとうれしいと思いました。

なお、消耗品の塩水パック、HEPAフィルター、電極などのランニングコストは現在検証中とのことです。

  • ダクトで分岐すると複数の部屋で同時に運転ができるのはいいですね

  • 発表会の会場には、たくさんの据え置き型ジアイーノが設置されていました