パナソニックは[空間除菌脱臭機「ジアイーノ」の新モデルを発表、9月21日に発売します。新モデルは適用床面積の目安が18畳までの「F-MV4300」、12畳までの「F-MV2300」、9畳までの「F-MV1300」の3モデルがありますが、注目は「F-MV4300」と「F-MV2300」です。

この上位2モデルは、空間除菌脱臭に加えて加湿も可能になりました。ここでは、最上位機種のF-MV4300で新旧モデルの違いをチェックしてみます。各モデルの価格はオープン、推定市場価格は、F-MV4300が165,000円前後、F-MV2300が110,000円前後、F-MV1300が88,000円前後です。

  • マイナビニュース・デジタルの林編集長と新型ジアイーノの最上位モデル「F-MV4300」。本体サイズは幅398×奥行270×高さ710mmとかなり大きい印象です。重さは約11.8kg(タンク空のとき)。4輪キャスターがついているので移動は比較的スムース

  • 左が新モデルのF-MV4300、右が従来モデルのF-MV4100。いずれも適用床面積は18畳です。見た目はほとんど同じですが、新モデルは内部パーツの変更などによって、奥行きが3cmほど長くなっています

見た目は旧モデルとほぼ同じ。でもし中身は……?

空間除菌脱臭機のジアイーノは、塩水を電気分解することで次亜塩素酸水を生成。この次亜塩素酸水を本体内部のフィルターに浸透させ、フィルターに部屋の汚れた空気を通過させて、空気の除菌や消臭をする家電です。フィルターを通ってキレイになった空気を部屋に送り出すときは、気化した次亜塩素酸水も部屋に放出します。これにより、家具などに付着した菌やニオイの抑制にも一定の効果が期待できます。

  • 次亜塩素酸水が染み込んだフィルターに空気を通すことで、空気中の菌やニオイのもとを分解

  • 次亜塩素酸水を生成するには一定濃度の塩水が必要になるため、本体内には水タンクと合わせて、最適なタイミングで塩タブレットを自動投入する「塩自動投入ユニット」があります(F-MV4300・F-MV2300)

  • 右側が塩タブレットのボトルを保管しておくスペース、そのとなりが塩タブレットを入れるタンク。フィルター交換などのお手入れ時期は、左側のパネル(ランプ点灯)で知らせてくれます

。塩タブレットは一度に60~70粒ほど専用タンクに入れておけます。満タンまで入れると約半年間、利用可能です。補充用の塩タブレットは300個入りで3,960円

  • 本体前面には保護エレメントとよばれるフィルターを搭載し、除菌前にホコリのような粗ゴミも除去。保護エレメント(6,600円)の交換時期は約5年です

今回の新モデルは、「次亜塩素酸水を染み込ませるフィルター」の形状が大きく進化。従来はロール型の背が低いフィルターでしたが、新モデルでは直径の長い円盤状で平べったいフィルターに変わりました。

従来のフィルター形状だと吸引した空気の一部がフィルターを通らずに排気されていたのですが、新フィルターは吸気口を覆うようになっているので、ほとんどの空気がフィルターを通るようになりました。

  • 従来モデル・F-MV4100」のフィルター(写真左)と新モデル・F-MV4300のフィルター(写真右)。形がまったく違います

新モデルのフィルターは、パナソニックの加湿空気清浄機の加湿フィルターを参考にデザイン。フィルターに空気を通したとき、効率よく水分が気化するのが特徴です。これにより、最上位モデルのF-MV4300なら650mL/h、12畳までのF-MV2300は430mL/hの定格加湿能力を備えています。夏や梅雨時など湿度が高いときは、一部の気流を内部で迂回させてフィルターを通さないことで、加湿量を下げることも可能です。

なお、適用床面積が9畳までのF-MV1300は、加湿機能を持ちません。F-MV1300でも次亜塩素酸水を含んだフィルターを空気が通過するため、細かく見れば湿気のある空気が部屋に排出されますが、部屋の湿度を高めるほどの効果はないということで、仕様上は加湿機能なしになっています。

  • 最上位モデルのF-MV4300なら、加湿「多め」選択時は650mL/h、標準時は350mL/hの加湿量。除菌脱臭の仕組み上、湿気のない空気をまったく排出しない選択はできません。新モデルには湿度をデジタル表示するパネルも付いています

加湿能力の強化とともに、水タンク容量も増えました。従来は約2.1Lだった容量は4Lに大幅アップ。加湿「多め」の最大風量時でも連続運転時間は約6.1時間と、従来製品とあまり変わらない運転時間を確保しています。加湿量が増えても頻繁に水を補給する必要がないのはうれしいポイントです。

  • 従来モデル・F-MV4100の水タンク(写真左)と、新モデル・F-MV4300の水タンク(写真右)。水タンク容量は倍近くまで大きくなりました

ところで、ジアイーノと空気清浄機のの違いはなんなの?

空気中の汚れやニオイの対策家電といえば空気清浄機が一般的ですが、空間除菌脱臭機というジアイーノにピンとこない人もいるかもしれません。基本的に、空気清浄機は空気中の汚れをフィルターや静電気などで「捕集」するのに対して、ジアイーノは次亜塩素水で菌やニオイの元を「分解」します。

パナソニックによると、空気清浄機は菌やニオイだけはなく、花粉やPM2.5までオールラウンドに対応できるのが特徴。一方のジアイーノは、空間の除菌・脱臭に特化しており、そのぶんすばやく強力な効果が得られるといいます。お互い得意とする分野が違うため、両者を併用するのもオススメだそうです。

  • ジアイーノの効果を検証したグラフ

人体に影響は……?

ところで、次亜塩素酸水を空気中に放出すると聞くと、安全性が気になる人も多いはず。最近は次亜塩素酸水を空気中に放出する家電が増えていますが、そうした状況をうけて、2020年6月に製品評価技術基盤機構(NITE)および経済産業省が「次亜塩素酸水の空間噴霧は無人の時間帯に行い、人が吸入しないような注意が必要」という発表をしています。

ここでいう「空間噴霧」とは次亜塩素酸水をミスト状にして文字通り噴霧すること。ジアイーノのようにフィルターを通して気化させる製品は「通風型」とよばれ、放出濃度をコントロールすることで安全に利用できるとしています。

  • ジアイーノは排気口付近の次亜塩素酸濃度が0.1ppm未満、本体内の水溶液濃度も約10ppmにコントロールしています。第三者機関による複数の検証実験でも安全性が確認されているそうです

医療・介護の現場から始まったジアイーノ

ジアイーノは素早く空間内の除菌や脱臭ができるということから、2013年からパナソニックが業務用として発売したのがスタート。じつは、ジアイーノの除菌・脱臭技術はもともと医療や介護の現場で利用されていたものなのです。現在も業務用モデルは病院やクリニック、介護施設、ホテルなどさまざまな場所で採用されています。

  • 基本的な構造は家庭用と同じですが、業務用では大空間用モデルを用意しています。写真は適用床面積56畳の業務用ジアイーノ「F-JDS70-W」

  • 業務用のなかでも珍しい水道直結タイプの「F-JCT30-WZ」は面倒な給水作業が必要ありません

家庭用ジアイーノは2017年に登場しました。受験生や乳幼児、ペットがいる家庭など、空気室に敏感なユーザーに支持されてきましたが。コロナ禍のいまはウイルス対策目的で購入検討する人も多いと思います。以前、ダイキンの空気環境対策セミナーの記事でも紹介したように、ウイルス対策に湿度は非常に重要な要素。加湿機能を搭載したジアイーノ新モデルは、いまの時代だからこそ注目したい家電のひとつになりそうです。