新型コロナウイルスの広まりを受けて売れた家電の1つに「加湿空気清浄機」があります。室内に漂うホコリなどをキャッチして空気をきれいにしつつ加湿する機能は、空気が乾燥するこれからの季節には重要な存在となります。しかし「本体が大きくてジャマ」「デザインがダサくてリビングに置きたくない」「給水タンクを運ぶのが重い、水を入れづらい」「清掃や手入れが面倒くさい、消耗品が高い」といった不満を感じている人もいるのでは?

そのような不満を解消すべく、エアコンで知られるダイキン工業が加湿空気清浄機の主力モデルを全面改良し、新たに「MCK70Y」を発売しました。次世代感あふれるスリムなタワー型デザインが目を引きますが、使用にともなう日々の手間や面倒が最小限で済むよう工夫されていると感じました。

  • ダイキン工業が10月中旬に発売した加湿空気清浄機「MCK70Y」。カラーは写真のホワイトとブラウンの2色を用意する。実売価格は73,000円前後

都会的なタワー型デザインを採用、天面の操作部も扱いやすい

ダイキン工業が10月に発売したのが、加湿空気清浄機の主力に位置づけられる上位モデル「MCK70Y」です。おもな特徴や従来モデルからの改良点は以下の3つです。

  • 高級感のあるデザインのタワー型ボディ。底面積を抑えて設置しやすくした
  • 側面カバーを開くだけで、直接水を注いで補充できる構造を採用。水を入れた重いタンクを持ち運ぶ必要がない
  • カバーを開けることなくフィルターが清掃できるように。フィルターなど主要な消耗品は10年間交換不要とするなど、交換の手間やランニングコストを軽減

まず目を引くのが、背の高いタワー型デザイン。加湿空気清浄機は曲線を用いたデザインが多いなか、直線と平面を基調としたデザインは家電くささがなく、新鮮で飽きが来ないと感じます。高さは760mmと背はあるものの、本体は縦横とも315mmに抑えられており、狭いスペースにも設置しやすい点が評価できます。

  • 都会的なタワー型デザインを採用。前面パネルは落ち着いたつや消しパネルを採用しており、家電くささを感じさせない

  • 加湿空気清浄機の下位シリーズ「MCK55X」(左)と比べるとひとまわり大きい。MCK55Xは操作&表示パネルを前面パネルに設けているが、これが意外と扱いづらい

  • 本体の幅はアップルのMacBook Airとほぼ同じ。背の高いタワー型としたことで、設置面積を抑えている

好ましいと感じたのが、天面に配置している操作&情報表示パネル。加湿空気清浄機は基本的に床に直置きするため、立った状態でも動作モードの確認や操作がしやすいのは便利だと感じました。個人的に、下位シリーズの旧モデル「MCK55X」を以前購入したのですが、前面にある操作パネルが見づらく操作しづらいと感じていたので、この点はうらやましいと感じます。

  • 操作&表示パネルは天面に配置。設定した風量や運転コースがLEDバックライトで表示されるので、就寝時など暗い部屋でも把握しやすい。現在の湿度の目安が数字で細かく表示されるのも便利だ

重たい給水タンクを持ち運ぶ必要がない

MCK70Yでもっとも大きな特徴といえるのが給水タンクの機構です。多くの加湿空気清浄機は、側面などにある給水タンクを本体から外し、洗面所などの蛇口から給水するスタイルを採用していました。しかし、蛇口の位置やシンクの形状によっては給水しづらかったり、水を入れて重たくなったタンクを持ち運ぶのが大変という欠点がありました。

これを解消すべく、MCK70Yは側面カバーを開くだけで給水部が現れ、ヤカンなどから水を直接ドボドボ注げる機構を採用。重たく持ちづらいタンクを持ち運ぶ必要がないのは、やはりラクチンです。狙いが外れて水が給水口から少しはみ出してしまっても、タンクの下にある給水トレイに流れる工夫も施されています。

  • 側面のカバーを開くと給水部が現れるので、ヤカンなどから直接水を注げる

給水タンクは外れる構造になっており、洗面所などに持ち込んで直接給水したり、内部を洗浄できます。タンクは凹凸がほとんどない形状で内部が洗いやすいうえ、素材が半透明ではなく透明なので内部の汚れが確認しやすく、清潔に保ちやすい点も好ましいと感じました。

  • 給水タンクの脇にあるロックレバーを押すと給水タンクが取り外せるので、蛇口から直接水を注ぐことも可能

  • 給水タンクは凹凸が少なく素材が透明なので、内部の汚れが確認しやすいうえ洗いやすい

  • こちらは下位シリーズ「MCK55X」の給水タンク。タンクを取り外さないと給水できない昔ながらの仕様で、タンク自体が乳白色で不透明なので注ぎ口からのぞき込まないと内部の汚れが確認できない

フィルター交換は10年不要、気化フィルターの構造も優れる

メンテナンスのしやすさやランニングコストの低さ、長く使っても加湿の効率が落ちない工夫も注目だと感じます。

運転時に室内の空気を吸い込む加湿空気清浄機は、本体のフィルターにホコリがたまっていくため、運転効率を落とさないよう掃除機などで定期的にホコリを吸い取る必要があります。本体前面や背面のパネルを外さないとフィルターの清掃ができない機種もありますが、MCK70Yはパネルを外すことなく直接掃除機でフィルターのホコリを吸い取ればよいのでラクチンです。ただ、吸い取るべきフィルターは左右側面の2カ所に加え、前方の底面にも1カ所あるのが多少面倒だと感じました。

  • フィルターは左右両側面にあるが、パネルは取り外す必要がなく、パネルの外側から掃除機でホコリを吸い取るだけでよい

  • 前面パネルの最下部にも小さいフィルターがあるので、この部分も忘れずに吸い取る必要がある

好ましいと感じたのが、消耗品の交換の手間がほとんどないこと。内部にある主要なフィルターや各種ユニットはほとんどが10年間交換不要で、なかには交換不要で使えるものも。よほどホコリや油が多い状況だったり、ヘビースモーカーでなければ、10年間は消耗品交換の費用は発生せず、経済的に使えます。

特に好ましいと感じたのが、水を蒸発させて湿気を発生させるユニットの工夫です。一般的な加湿空気清浄機は、内部の給水トレイに浸した気化フィルターから水分が蒸発することで加湿しますが、この気化フィルターはカルキやミネラルが付着しやすいのが欠点。固くこびりついてしまうと水を吸い上げづらくなり、加湿する性能がガクンと落ちるので、定期的な交換が必要になります。

この問題を回避するため、MCK70Yは気化フィルターを電動で回転する水車のような構造とし、給水トレイの水をすくって最上部でフィルターに注ぐ仕組みにしています。気化フィルター全体にまんべんなく水が浸されるので、長く使っても加湿の効率があまり落ちない仕組みです。

  • 給水トレイと気化フィルター。気化フィルターはモーターの力で回転する仕組みで、たまった水をすくい上げて最上部で気化フィルターに放出する仕組み。気化フィルター全体が水でヒタヒタになるので、加湿の効率が落ちにくい

  • 給水トレイには銀イオン剤が搭載されていて、水質の悪化をある程度抑えられる

ユニークなのが、さまざまな用途に特化した脱臭フィルターを用意していること。「靴・下駄箱臭用」「介護臭用」「ペット臭用」「トイレ臭用」「加齢臭用」の5種類で、特定の臭気成分を除去するための物質をフィルターに混ぜ込むことでニオイを集中的に取り除けるようにしています。猫1匹と50歳の男性がいる家庭でペット臭用と加齢臭用を試してみましたが、そのような一般的な環境だと効果は感じられませんでした。犬や猫が10匹近くいる、フェレットなどニオイの強いペットを飼っている、自宅介護中の親がいる、といった環境の人は試してみる価値がありそうです。

  • さまざまな用途に特化した脱臭フィルター。本体内の空きスペースに格納すればよい

  • フィルターは全5種類で、実売価格はいずれも3,300円前後。フィルターの交換目安は3カ月と、ちょっと短い

価格は高めで万人向けとはいえないが、独自の魅力を持つ製品

MCK70Yの実売価格は73,000円前後と、加湿空気清浄機としてはかなり高価な部類に入ります。価格を考えると万人にオススメできる製品ではありませんが、デザインに魅力を感じる人、足腰が悪く重たい給水タンクを持ち運べない人、フィルター交換などのメンテナンスの手間や費用を省きたい人、自宅で多くのペットを飼っている人や介護をしている人は検討する価値があるといえます。

ちなみに、加湿空気清浄機の普及率は全世帯の40%程度にとどまるといわれています。しかし、今年はインフルエンザが大流行するという予想もあり、室内の加湿は健康を保つポイントの1つとなります。さらに、部屋の湿度が高まると体感的な暖かさが向上する、という耳寄りなデータも。冷暖房と違って加湿空気清浄機は効果を直接体感しづらい製品ですが、自宅での生活を快適・健康に保つ縁の下の力持ち的な存在として、一家に一台は備えておきたいものです。

  • 【室温25度、湿度25%】乾燥した部屋に入って15分後の体温の分布。顔や体に緑色の冷たい部分が多く見られる

  • 【室温25度、湿度55%】同じ室温で加湿された部屋に入って15分後の体温の分布。顔や体の緑色の領域がだいぶ減っているのが分かる。気温は同じでも湿度を上げるだけで暖かく感じるのだ