IntelのCES 2022における発表と、実際の基調講演でのUpdateは既にお届けしたが、これに加えて基調講演などでの不明点を直接Intelの方にお伺いする事が出来たので、基調講演のUpdateというか、いくつかの不明点に関する回答をまとめてご紹介したい。

  • 続・Intel CES 2022 Update - Core i9-12900KSの正体、Alder Lakeの製造プロセス、Arcの追補

    Photo01: CoreのTシャツを着てるのがAaron McGavock氏(Principal Engineer, Desktop, Workstation & Channel Group)、右でThumb upしてるのがColin Helms氏(Enthusiast Laptop Marketing Strategist)。Teamsを利用してお話を伺った。

Core i9-12900KS

まずは基調講演で出て来たCore i9-12900KS。One Core Turboで5.5GHz、All Core Turboで5.2GHzという動作速度を持つものだが、これはAlder Lakeの選別品で"ごく限られた数"(Limited Number)の供給になるという話であった。ちなみにPL1やPL2は「今はまだ言えない」との事。ただし、既存のAlder Lake対応マザーボードで稼働する、との事だった。「Z690マザーボードなら動くということか?」と確認すると「その通り」という返事だったあたり、後追いで既に発売が開始されたH670とかでは厳しいかもしれない。

ちなみに位置づけは2019年のCore i9-9900KSと同じくエンスージャスト向けという話であるが、2014年に発売されたPentium G3258とは異なり、「Core i9未満のSKUは今のところ予定にない」との事。なので製品としては事実上Core i9-12900KSのみ、という事になると思われる。

Alder Lakeのプロセスは?

ところでロードマップ記事では、Core i3以下がTSMC N5に移る予定とご紹介したが、今回McGavock氏とHelms氏共にこれを明確に否定。DesktopとMobileの全SKU(つまりCeleron/Pentium~Core i9まで)は全てIntel 7で製造されている、と明確に述べた。これはこれで判るのだが、すると生産量が間に合うのか? という別の問題が出てくることになるが、これは流石に確認しようがないところだ。

Deep Linkについて

今回はお二方共にIntel Arc周りは余り詳しくない、ということなのでGPUの細かい話は今回は無しである。ただDeep Linkそのものについてはいくつか説明があった。Helms氏によれば、Deep LinkはそもそもAlder Lakeに標準で搭載されている機能であり、なので基調講演ではH-Seriesでのみ使えるようなイメージを受けたが、実際にはP-SeriesやU-Seriesのみならず、DesktopのS-Seriesでも利用可能との事。ちなみに当然ながらIntel Arcを利用した場合のみの話であるらしい。

Deep Linkの詳細についても幾つか質問を投げてあるが、こちらも持ち帰りとなったので、また返答が来た段階で補足したいと思う。

ついでに内蔵GPUについて。Tiger LakeことGen 11のCoreと、Alder LakeのGen 12のCoreは、どちらも搭載されるIris Xeが最大96EUになっており、スペック上では性能向上がなさそうに思える。これに関してHelms氏に確認したところ「内蔵されるIris Xeそのものは勿論同じで、動作周波数の違いなどはあるが、ここでの大きな性能向上は無い。ただGaming Performanceが必要な用途ではDiscrete Graphicsを使う事が多く、こうした場合はCPU性能向上がそのままGaming Performanceに繋がる」としている。確認の意味で「つまりIris Xeそのものの性能向上は無いが、ただCPU性能やDDR5などの広帯域メモリを利用する事で、トータルのGaming Performanceが向上している、という理解で良いか?」と確認したところ「その通り」という返答を頂いた。ということで、内蔵GPUを使う際の性能は、基本的にTiger Lakeから大きくは向上しないようだ(といっても、DDR5と組み合わせるとその分の性能向上は期待できそうだが)。

Desktop周りについていくつか

まずIntel CoreがGen 12まで投入されているのに対し、その上のグレード「だった」Core-Xについては、未だにGen 10のままで停滞している。そこで「もうCore-Xは廃止するのか?」と直球を投げてみたところ「いやそうじゃない。勿論将来の製品に関するコメントは出来ないが、色々やっている」という事で、Alder LakeがそのままCore-Xに投入される感じではなさそうだが(という事は残るのはSapphire Rapidsベースという話になる)、今後何かしらのアナウンスがありそうな含みを持たせた対応であった。

次にCore Configurationについて。今はP-Core+E-Coreの構成と、P-Coreのみの構成の2種類が用意されるが、ローエンドはE-Coreのみの構成があっても良かったのに何故無いのかと確認したところ「技術的に出来ない話ではないし、LabではE-Coreのみで動く構成もあったが、OSの細かなハンドリングとかをするのにE-Coreだと負荷が大きくて性能が宜しくない。最終的にはユーザーのUsage Modelに依存する話にはなるのだが、我々が検討した範囲では、E-Coreのみよりも最低でも1コアはP-Coreを入れた方が良いという結果になった」という話であった。

また「なぜAlder LakeではNVMe SSD接続用のPCIe x4をGen4に留めたのか?」を確認したところ「これはエリアサイズとのトレードオフになる。PCIe Gen5にすると、その分エリアサイズが増える事になるので、我々はGen 4のまま留め置くことにした。勿論GPU接続用のPCIe x16を分岐させ、例えばGPUとはGen 5 x8で接続し、残りのx8を2つのGen 5 x4としてSSDを接続する事は可能だ」としており、必要ならそうした構成をマザーボードメーカーが取ることで、PCIe Gen5 x4 NVMe SSDが利用可能になる、としている。

余談だが今年のCESでPhisonはコンシューマ向けのPCIe Gen5 SSDコントローラとしてE26をお披露目しており(発表そのものは昨年9月)、マザーボードベンダーの中には本当にGPU向けをx8にして、それとは別にGen 5 x4のNVMe M.2 SSDスロットを2本用意する製品をリリースしてくるかもしれない。

最後にRaptor Lakeに関して。実は先のUpdate記事で書き忘れたのだが、基調講演の中でGeorge Bryant氏が「2022年末に、次のRaptor Lakeを投入する」との説明を行っていた。勿論詳しい話は一切無いが、Bryant氏によれば「既にWindowsが起動している」とされていた。このRaptor Lakeについては勿論直球で投げても「将来製品の話は出来ない」と返されるだけなので「今のAlder Lakeのユーザーは、もしRaptor Lakeが出たらマザーボードを交換する必要があるのか?」という聞き方をしたところMcGavock氏は「一般論として、新しいプラットフォームは何世代かに渡ってサポートされることになる」という持って回った返事が。「今はまだDDR5が入手困難なので、殆どのAlder LakeユーザーはDDR4を使っているが、そうしたユーザーはRaptor Lakeでメモリを買いなおす必要はない?」と念を押したところ、こちらも「一般論としては、そうしたトランジションにも数世代かかると理解している」という返事で、要するに現在のLGA 1700+DDR4/DDR5の両対応のサポートがRaptor Lake世代でも利用できそうだ、というお返事を間接的に頂くことが出来た。

勿論実際にはBIOS Updateは最低限必要だし、実際には利用できない組み合わせなどもあるかもしれないが、無条件でマザーボードから買いなおし、という事にはならないようだ。

ということで、Alder Lakeに関する現時点での不明点のいくらかは解消された格好だ。まだIntel Arc周りは色々不明点があるが、これはもう少し製品投入時期が近づけばまた情報が出てくると思われる。