CES 2022に出展するソニーは1月4日にプレスカンファレンスを実施。オンライン配信も行い、会長兼社長 CEOの吉田憲一郎氏が登壇し、2022年にVR対応のゲーミングコンソール「PlayStation VR2」と専用コントローラーを発売することを明らかにしました。また、2020年のCESで発表した電気自動車「VISION-S」を本格的に開発し、商品として販売するためにSony Mobility社を設立。事業化を進める方針を発表しました。

  • ソニーの電気自動車「VISION-S」、商品として事業展開する方針が明らかに

吉田氏は「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というソニーが定義する企業の存在意義を強調しながら、世界で新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが続く中で「多くのクリエイターと人々を結びつけるソニーの技術をさらなる進化に導く」と、カンファレンスの壇上で語りました。

  • カンファレンスの壇上に立つソニーの吉田憲一郎社長

2022年のCESでは、ソニーから2つの大きなアナウンスがありました。

PS5専用のVRヘッドセットと専用コントローラーを発表

話題が前後しますが、ひとつはゲーミングコンソール「PlayStation 5」対応の新しいVRヘッドセット「PlayStation VR2」と、専用コントローラーの「PlayStation VR2 Sense」です。名称が初公開されました。それぞれ発売時期については語られなかったものの、「PS5によってより豊かな没入感を得られるプラットフォームになる」と、ソニー・インタラクティブエンターテインメントの社長兼CEOであるジム・ライアン氏が説明しています。

  • PlayStation VR2を発表

新しいVR対応のヘッドセットには視線トラッキング技術が搭載され、ゲームコントローラーとヘッドセット双方の触感フィードバックも、リアリティが向上するようです。ライアン氏は、専用ゲームタイトルとして世界中で大ヒットを記録した「Horizon」シリーズの最新作『Horizon Call of the Mountain』が控えていることも明らかにしています。

  • 専用コントローラー「PlayStation VR2 Sense」のイメージが公開されました

PlayStation.BlogではCESの発表に合わせて、PlayStation VR2とVR2 Senseコントローラーの一部仕様が公開されています。

VR2ヘッドセットは4K/HDRや120Hz/90Hzのリフレッシュレートに対応した有機ELディスプレイを搭載、110度の視野角を持ちます。片目あたりの解像度は2,000×2,040画素で、レンズ間距離調整に対応。フォービエイテッド・レンダリング(VR映像の描画を効率化する技術)によって、高画質映像の視認性を向上するとしています。PS5との接続はUSB Type-Cケーブル1本とシンプルです

センサーは3軸ジャイロと3軸加速度対応の6軸モーションセンサーに加えて、IR近接センサー、4台のトラッキングカメラ、視線を検知するIRカメラが2台、ヘッドセットに搭載されます。

インサイド・アウト・トラッキングにより、VRヘッドセットに搭載するカメラを通じてプレーヤーとコントローラーをトラッキング。本体以外のカメラを使わずにプレーヤーの動きや向いている方向をゲーム内に反映します。

新機能の「ヘッドセットフィードバック」は、ヘッドセットに内蔵するモーターの振動によって、プレーヤーがゲーム内のアクションから受ける感覚を増幅させるという触覚フィードバックのエンターテインメント。「キャラクターの脈拍の上昇、キャラクターの頭の近くを物体が通過するときの衝撃、キャラクターがスピードを上げて進むときの車両の推進力などが、よりリアルに感じられる」と説明されています。

PS5がサポートする360度オーディオ技術の「Tempest 3Dオーディオ」との相性も抜群に良さそうです。ヘッドセットにはステレオヘッドホン端子とマイクを内蔵しています。

ヘッドセットにはプレーヤーの目の動きを検知する視線トラッキングの機能が組み込まれます。例えば特定の方向を見てゲームキャラクターを操作したり、感情の表現に反映させたりといったことができるようになります。

VR2 Senseコントローラーは6軸モーションセンサーと指検知の静電容量式センサー、ポジショントラッキング用のIR LEDとフィードバックセンサーを搭載。通信はBluetoothで、USB Type-C端子も搭載しています。

  • 視線トラッキングなど、新たなVRエンターテインメントを楽しむための最先端センシング技術が搭載される予定

ソニーが電気自動車市場に本格参入

もうひとつは、ソニーの車載向けセンサーや360度オーディオの技術などを搭載し、2020年のCESでコンセプトカーとして発表した電気自動車「VISION-S」です。今後、商品として開発されることが発表されました。

  • ソニーが発表したSUVタイプの試作車両「VISION-S 02」

ソニーの吉田社長は「ソニーが培ってきたさまざまなセンシングの技術、クリエイティブテクノロジーをVISION-Sに投入し、モビリティを再定義する」と、事業化に向けた意気込みを述べています。2022年春には、事業会社となるソニーモビリティ株式会社を設立して、電気自動車市場へ本格参入します。

初代のVISION-Sはプロトタイプの開発が進み、現在は公道走行試験など実施しています。セダンタイプの初代機を「VISION-S 01」として、共通のEVおよびクラウドプラットフォームを採用するSUVタイプの試作車両「VISION-S 02」を開発。CESの会場で発表され、ブースで展示しています。

  • VISION-S 02の車内空間のイメージ

今後の商品化に向けて、VISION-Sにはソニーが開発する車載向けのイメージングセンサーやToFセンサーなど、合計40種類のセンサー搭載が検討されます。また、5Gネットワーク通信機能も装備し、車内で360 Reality Audioに対応する映画やオーディオ、ゲーミングなどのコンテンツが楽しめたり、BRAVIA CORE(ブラビアコア)の高画質映像配信を組み込む構想もあるようです。

映画とゲームのコンテンツ・コラボも加速

ソニーの吉田社長はまた、クリエイティブエンターテインメントカンパニーとしてソニーが保有するコンテンツ資産を活用しながら、新しいエンターテインメントを追求していくことについても触れました。

具体的には今後、グループの映画部門であるソニー・ピクチャーズ エンタテインメントとゲーム部門のソニー・インタラクティブエンタテインメントが協業して、PlayStation向けゲームタイトルのIP(知的財産)を活用して映画やテレビ作品を制作する「PlayStation Productions」の取り組みを加速させます。

  • PlayStation Productionsから初の映画作品「アンチャーテッド」が公開されます

2022年2月には、PlayStation Productions初の作品となる『アンチャーテッド』の世界公開が控えています。こちらはPS5対応の人気ゲームタイトル『アンチャーテッド トレジャーハンターコレクション』の映画化作品です。

CESのプレスカンファレンスの壇上には主演のトム・ホランド氏が立ち、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント モーションピクチャーグループ 会長兼CEOのトム・ロスマン氏とともに、ソニー独自のバーチャルプロダクションテクノロジーが切り拓く映像作品の新たな可能性について語りました。

  • 主演のトム・ホランド氏もステージに駆けつけました

バーチャルプロダクションテクノロジーとは、天候やスケジュールなど、映像制作の現場に付きまとう多くの制約を取り払える制作プラットフォームです。ソニー独自の高精細なCrystal LEDの大型ディスプレイに表示される映像を「背景」として用い、映像制作向けのシネマカメラ「VENICE」シリーズで役者とともにリアリティあふれる映像を撮影します。

  • 米国でも高機能カメラを搭載するスマートフォン「Xperia PRO-I」が発売されます

そのほか、北米でも販売を開始する映像クリエイター向けの飛行ドローン「Airpeak S1」や、高機能なカメラを搭載するスマートフォン「Xperia PRO-I」など、新たなクリエイティビティを創出するソニーの製品と技術がCES 2022に出展されています。