2021年11月4日午後10時に発売がスタートしたAlder Lakeこと第12世代Coreプロセッサ。その性能については大原氏の「Alder Lakeを試す - Core i9-12900KとCore i5-12600Kの性能を徹底検証」を見ていただくとして、購入を検討している人にとって、手持ちのCPUクーラーがそのまま使えるのか気になるところだろう。
第12世代Coreプロセッサでは、ソケット形状がLGA1700に変わり、マザーボードのCPUクーラーを固定するための穴の位置が変更に。さらに、CPU+ソケットの厚みも変わり、従来のCPUクーラーを流用することが不可能になってしまった。
そこでCPUクーラーを発売している各社は、従来のCPUクーラーでLGA1700に対応するためのリテンションキットを無償で提供すること発表。今後流通する製品に関しては標準でリテンションキットを同梱することを公表しているメーカーもある。
これならCPUクーラーの買い替えは不要……と思いたいところだが、第12世代Coreプロセッサの中で最上位の「Core i9-12900K」は、従来PL2と呼ばれていた消費電力の目安となるMTP(Maximum Turbo Power)が241Wと極めて高い。しかも、PL2は短時間だけ動作するものだったが、MTPはそれを維持し続けることが推奨されており、当然発熱は大きく、それを確実に冷やすだけのCPUクーラーが求められる。第12世代Coreプロセッサのレビューの多くで36cmクラスの簡易水冷クーラーが採用されているのはそのためだ。
筆者は普段から検証にCorsairの28cmクラス水冷「iCUE H115i RGB PRO XT」を愛用しているが、Core i9-12900Kが問題なく冷やせるのか気になり、リンクスインターナショナルが無償提供しているCorsairの水冷CPUクーラー向けIntel LGA1700用リテンションキット「CW-8960091 CORSAIR LGA1700 Intel Retention Standoffs Spare Part」をお借りして実際に試すことにした。
CorsairのLGA1700用リテンションキットを使ってみる
「CW-8960091 CORSAIR LGA1700 Intel Retention Standoffs Spare Part」(以下CW-8960091)は、リンクスインターナショナルの通販サイト「リンクスアウトレット」で注文できるが、購入証明が必要などいくつか条件があるので同社の「CORSAIR製、水冷CPUクーラーにおけるIntel LGA1700用リテンションキットの無償提供について」で確認してほしい。ここで対応する水冷クーラーも掲載されている。
さっそく本題に入ろう。CW-8960091は、従来と厚みが異なるLGA1700用に長さが調整されたスタンドオフネジだ。標準で付属しているIntel LGA1200/1150/1151/1155/1156用のスタンドオフネジと比べると微妙に短くなっている。
Corsairの水冷クーラーはバックプレートをマザーボード裏面のCPUソケット部分にある穴に取り付け、表面からバックプレートのネジ穴にスタンドオフネジを取り付けて固定する。このバックプレートはネジ穴の位置を調整できる仕組みなので、LGA1700にもそのまま対応が可能だ。そのため、取り付け手順はCW-8960091を使う以外、何も変わらない。
Core i9-12900Kは、従来のCPUクーラーで冷やせるのか
ここからは、実際に冷却テストを行っていく。今回はシンプルにCINEBENCH R23を10分間動作させたときの動作クロックと温度の推移をHWiNFO v7.14で追っている。動作クロックは「Average Effective Clock」、CPU温度は「CPU Package」の値だ。室温は22度、テストはバラック組みの状態で行っている。環境は以下の通りだ。
■テスト環境 | |
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CPU | Intel Core i9-12900K(16コア24スレッド) |
マザーボード | MSI MPG Z690 GAMING CARBON WIFI(Intel Z690) |
メモリ | Corsair DOMINATOR PLATINUM RGB Black(DDR5-5200、16GBx2) |
ビデオカード | MSI GeForce RTX 3070 VENTUS 2X OC(NVIDIA GeForce RTX 3070) |
CPUクーラー | Corsair iCUE H115i RGB PRO XT(簡易水冷、28cmクラス) |
電源 | Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold) |
OS | Windows 11 Pro |
まず、UEFIでパワーリミットはIntelが推奨する241Wに設定。DDR5メモリはXMPプロファイルを読み込み、DDR5-5200として動作させている。水冷クーラーの制御にはアプリのiCUEをインストールして行った。
まずは、CPUクーラーの動作をiCUEでファン、ポンプとも「安定」に設定した状態でCINEBENCH R23を実行した。
CPU温度は最大92度とやや高めだが、動作クロックが落ちるサーマルスロットリングが発生する100度には到達しておらず、とりあえずは安心と言える。ちなみに、ところどころ温度とクロックがガクッと落ちているのはテストと次のテストの合間。一瞬処理がなくなるので温度もクロックも下がる。
続いて、iCUEでファン、ポンプとも「最速」に設定した状態でCINEBENCH R23を実行した。
CPU温度は最大86度とかなり下がった。動作クロックも安定設定よりもブレが少なくなっている。最速設定では動作音はかなり大きくなるが、エンコードやゲームなど高負荷が続く場面では、こちらの設定のほうが安心だろう。
最後、それぞれの設定時のCINEBENCH R23のマルチコアのスコアを紹介しておこう。どちらもCore i9-12900Kとして問題のないスコア。最速設定のほうがわずかに上だが、誤差の範囲内だろう。
さて、簡単なテストではあったが28cmクラスの水冷クーラーなら、Core i9-12900Kでも運用できると言える。ただし、あまり冷却に余裕がないのも事実だ。パワーリミットを無制限に設定したり、OCを行って性能を限界まで引き出したいといった用途には向いていない。第12世代Coreプロセッサ環境でもリテンションキットを手に入れ、CPUクーラーを使い回そうと考えている人の参考になれば幸いだ。