個人情報がお金になる時代。スマートスピーカーを格安で販売して多くの家庭に行き渡らせ、マイクで得た家族の会話をこっそりクラウドサーバーに送信し、解析して得た家族構成や趣味嗜好などの個人情報をさまざまな業者に販売して利益を得る――といったプライバシーを食い物にする行為も、技術的には容易にできてしまいます。
そのようななか、「ユーザーのプライバシーでは商売しない。ユーザーに隠れて個人情報をこっそり外部に流して儲けるなんて論外だ」と、かたくなにプライバシー重視の姿勢を貫くアップル。小型スマートスピーカー「HomePod mini」も、広告収入に依存する競合他社製品との違いを明確にしています。HomePod miniのカラフルな新色3種類を11月2日から追加するのに合わせ、HomePod miniとプライバシーについての考えを米Apple本社の責任者に話をうかがいました。
4つのプライバシー保護の基本方針を定めているアップル
米Appleでホームプロダクト責任者を務めるアリス・チャン氏は、「この秋に投入するHomePod miniの新しい3つのカラーは、これまでにない大胆で楽しい色に仕上げました。どの家庭のどの部屋にもうまくマッチすると思います」と、ブルー、イエロー、オレンジの新色が加わったHomePod miniの魅力をアピールします。
親しみやすいポップなカラーになっても、HomePod miniのプライバシー保護の仕組みは硬派なアップルの伝統を受け継いでいました。「住まいはとてもパーソナルな空間です。そこに置かれるHomePod miniは、何よりプライバシーやセキュリティを重視した設計にする必要があると考えます。みなさんが“Hey,Siri”と呼びかけるまで、自宅の外に何か情報が出ることは一切ありません。もちろん、データをサーバーやアクセサリーの間でやり取りする際も、すべての通信は暗号化され、誰も情報を覗き見することはできません」
米Appleでユーザープライバシー・エンジニア責任者を務めるケイティ・スキナー氏は、HomePod miniを含むアップルの製品やサービスで、4つのプライバシー保護の基本方針を踏襲していることを解説します。
「1つが、やり取りするデータを最小限に抑えること。2つ目が、可能な限りデバイス上でデータを処理し、サーバーに送り出す情報を最小限にすること。3つ目はセキュリティで、これは基本中の基本といえます。4つ目はデータの流れの透明性で、どのようなデータがアップルに収集され、どのように使われているのかを、ユーザーのみなさんに分かりやすく提示します。HomePodは、初代モデルからこの方針を踏襲してプライバシー重視で設計しており、HomePod miniにも受け継いでいます」。
“Hey,Siri”で呼び出されるSiriについても、特にプライバシー保護の取り組みを重視していることを解説します。「Siriを使う際、ランダムに生成される識別子が用いられるので、アップルでも個人を特定することは不可能です。Siriの言語処理を改善するために収集したデータをアップルが利用する場合も、データを外に出したり販売することは決してありません。もちろん、希望があれば改善用データの提供をいつでもオフにしていただけます」
アップル以外のメーカーの製品と組み合わせて使うスマートホームでも、セキュリティはしっかり担保されていると解説します。「HomePod miniとさまざまなスマートデバイスの間の通信はすべて暗号化されていますので、HomeKit対応機器であればプライバシーを守りながら安全に使えます。HomeKitセキュアビデオの機能でセキュリティカメラを設置した場合も、データはすべてローカルのHomePod mini上で分析され、誰がいつ来訪したかといった情報が外部に出ることはありません。iOS 15で対応したホームキーを利用して自宅の鍵を開閉した場合も、いつ帰宅したかといった情報はアップルでさえも知ることはできません」
「スマートスピーカー、一見すると何もしていないように振る舞っているけど、裏で私たちの会話を録音してどこかに送っているかもしれないから怖い」と、スマートスピーカーにアレルギーを持つ人は少なからずいます。しかし、アップルはHomePod miniに数多くのプライバシー保護の仕組みを盛り込んでいることを宣言しており、そのような“スマートスピーカー盗聴”の心配はありません。カラフルな3つの新色が加わったHomePod mini、クリスマスなどに大切な人に安心してプレゼントできる存在となりそうです。