アップルが、新しい第3世代のワイヤレスイヤホン「AirPods」を10月26日に発売します。進化したサウンド、機能や装着感など、実機の発売前にいち早く試したインプレッションを報告したいと思います。

  • 新しい第3世代のAirPodsをレポートします。色は伝統のシグネチャーホワイトを継承しました。価格は23,800円です

新旧AirPods、AirPods Proとの違いを整理しよう

AirPodsは、2016年12月に初代モデルが誕生。2019年3月にイヤホン、充電ケースの外観はほぼ変えずに、アップル独自設計のチップ「Apple H1」に刷新。ハンズフリーの「Hey Siri」による音声操作に対応したほか、充電ケースにQi互換のワイヤレス充電機能が追加されました。

第2世代のAirPodsにワイヤレス充電ケースを付属して販売されていた「AirPods with Wireless Charging Case」は25,080円でした。第3世代のAirPodsは23,800円なので、価格が1,280円ほど安くなっています。

  • 左側は第2世代のAirPodsとワイヤレス充電対応ケース。右側が新しいAirPodsのケース。縦横の向きが変わっていますが、サイズはほぼ同じです

  • 左側が新しいAirPodsの充電ケース。右側のAirPods Proの充電ケースはわずかにサイズが大きめ。新しいAirPodsの発売に合わせて、AirPods ProのケースもMagSafe対応になりました

進化したAirPodsは、デザインがアクティブ・ノイズキャンセリング機能を搭載する上位のAirPods Proに近い、丸みを帯びた柔らかな出で立ちになりました。音の心臓部としてアップル独自設計のダイナミック型“Appleドライバー”にアンプなどを格納する外殻部分の“ハウジング”は開放構造。トップの位置に空気の通り道となる小さな孔があります。

  • 本体のトップには、空気の通り道になる小さな孔が空いています

新しいAirPodsは、AirPods Proのようにシリコン製のイヤーチップを使わず、耳に乗せるように装着するイヤホンです。イヤーチップを使う耳栓タイプのイヤホンに慣れている方は、装着した時の安定感が気がかりかもしれません。

AirPodsの場合は、リモコンやマイクを内蔵するスティック状の本体(ステム)を外耳のくぼみにはめ込むように固定します。ステムの先端がこめかみに触れるように、しっかりと耳の中に本体を挿入すると、装着感はますます安定します。

  • スティック状の本体には、感圧センサーによるリモコンを内蔵。手前側の新しいAirPodsは、奥の従来モデルのAirPodsに比べてスティックの長さが約33%短くなりました

  • 外耳のくぼみにスティックがフィットし、安定した装着感が得られます。AirPods Proと並べれば見分けられますが、耳に装着している状態ではどちらの機種を装着しているのか判別は難しいと思います

ただ、すべてのイヤホン・ヘッドホンがそうであるように、耳のカタチによって装着感には個人差が生まれます。第2世代のAirPodsに比べると、新しいAirPodsはハウジングの厚みがわずかに増しているので、特に耳の小さい方はフィット感の変化に気がつくと思います。これから購入を検討される方は、事前に実機で確かめてみることをおすすめします。

  • 左側が従来のAirPods、右が新しいAirPods。ハウジングのサイズに少し厚みが加わっています

iPhoneとの相性はやっぱり抜群に良かった

新しいAirPodsは、アクティブ・ノイズキャンセリング機能を搭載していないぶん、AirPods Proよりも機能構成はシンプルです。iPhone/iPad/iPod touchとのワンタッチペアリング機能はもちろん継承しています。

  • 初期ペアリング設定を済ませたあとは、AirPodsをケースから取り出してiPhoneに近づけるだけで、すぐにリスニングを開始できます

Bluetooth機器のリストに並ぶAirPodsの名前の横に表示されている「i」(情報)アイコンをタップすると機能設定に入ります。肌検出センサーにより、耳からイヤホンを着脱する動作にサウンドの再生・一時停止が連動する「自動耳検出」がより正確にできるようになりました。

  • Bluetooth接続機器のリストに並ぶAirPodsの「i」アイコンをタップすると設定画面に遷移します

  • AirPodsの設定画面。自動耳検出や探すアプリのアクティベーションのメニューなどが並んでいます

ユーザーのApple IDを使ってサインインしているデバイスであれば、例えばiPadで音楽を聴いている最中に自動的にAirPodsを切り替えてiPhoneで電話に出ることができます。この自動切り替え機能の有効・無効は「このiPhoneに接続」をタップして選択します。

「バッテリー充電の最適化」は、ユーザーがAirPodsを充電するサイクルをデバイスが学習して、内蔵バッテリーの劣化を軽減するための機能です。デフォルト設定の「オン」のままで良いと思います。

AirPodsはiOSやmacOSなどに標準搭載されている「探す」アプリから検索したり、他のアップルデバイスのユーザーたちとの連携により形成されている「探す」ネットワークを使って、紛失した時にアプリからトラッキングができるようになりました。これも、イヤホンのデフォルト設定である「オン」にして活用すると良いでしょう。

  • 万が一、AirPodsを紛失してしまった時は、iPhoneの「探す」アプリから探索ができます

バッテリー長持ち。防滴防汗対応。除菌シートでお手入れはOK?

内蔵バッテリーによる連続再生時間は、第2世代のAirPodsが約5時間、充電ケースによるチャージを繰り返せばトータルで約24時間でした。新しいAirPodsはイヤホン単体で約6時間、充電ケースを合わせて約30時間にバッテリー性能が向上しています。約6時間も連続して使えれば、長めの移動やオンライン会議は不安なくこなせると思います。

もし、イヤホンのバッテリーが尽きていた場合、充電ケースで5分チャージすれば約1時間の音楽再生、または音声通話ができるだけのバッテリーが補えます。

新しいAirPodsはイヤホン本体だけでなく、充電ケースもIPX4等級の防滴仕様になりました。汗に対する耐性も高いので、スポーツシーンや暑い夏場の音楽リスニングも不安なく楽しめます。筆者は、キッチンで料理や皿を洗う時に動画や音楽を視聴する時間を心のオアシスとしているので、濡れた手でも不安なく扱える新しいAirPodsをとても頼もしく感じます。

  • コンパクトな防滴防汗仕様のケース。イヤホンをチャージしながら約30時間の連続再生が楽しめるぶんのバッテリーが確保できます

外出先から帰宅した時に、AirPodsを除菌シートなどできれいに拭きたくなるものです。アップルは、2021年7月16日に「AirPodsのお手入れ方法」をサイトで公開しています。筆者が本稿を執筆している時点ではまだ新しいAirPodsに関するガイダンスが追記されていませんが、AirPods Proと第2世代のAirPodsの取り扱いに関する注意を踏襲すればよいと思います。防滴対応のイヤホン・充電ケースだからといっても、水洗いは禁物。開口部からアルコール除菌液などが浸入しないように気を配り、本体の外皮をやさしく拭き取るお手入れ方法が基本です。

  • アップルがサイトに公開しているAirPodsシリーズのお手入れ方法

驚きの力強くリッチな低音再生! ワクワクするサウンド

新しいAirPodsのサウンドは、iPhone 13 Proに接続してApple Musicの楽曲、Apple TV+の映像コンテンツを視聴しながら確認しました。

第2世代のAirPodsよりも低音の再現力が驚くほど力強くリッチになりました。ロックやジャズのアップテンポな楽曲はベースの躍動感がとても鮮明になり、賑やかな屋外でもメロディラインをしっかりと追うことができます。活き活きとして伸びやかなボーカルも聴き応え抜群。開放型のイヤホンらしい、ヌケのよい透明感あふれる高音域もまた健在です。ピアノや弦楽器が奏でる音の階調感がとても滑らかに、かつ濃厚に感じられます。音楽の彩りの豊かさは、どちらかと言えばナチュラルバランスでクセのないAirPods Proのサウンドよりも新しいAirPodsの方がより特徴的に感じられました。新しいAirPodsは、ワクワクするような「たのしい音楽」を満喫できるイヤホンです。

  • Apple MusicやApple TV+のコンテンツをiPhone 13 Proで視聴しました

動画再生もまたしかり。パワフルな低音が再生できるようになった新しいAirPodsでアクション系の映画やアニメを視聴すると、腹の底に響くような重低音に圧倒されます。人の声は、第2世代のAirPodsよりもいっそう、ふくよかに響くようになりました。バスや電車に乗って映像コンテンツを再生してみると、セリフ(ダイアローグ)が聞き取りやすくなったことを実感します。FaceTimeなどアプリによるハンズフリー音声通話も、人の声が一段と立体的に聞こえるように感じました。

開放型ハウジングのイヤホンは、密閉型ハウジングのイヤホンよりも音のクリアな抜け感、音場の自然な広がり感の描写に優れていると言われます。ダイアローグや効果音の定位が立体感を増したことと相まって、新しいAirPodsは「空間オーディオ」のコンテンツ再生にとてもよくマッチします。ダイナミック・ヘッドトラッキングにも対応しているので、よりいっそうコンテンツにのめり込める楽しさがあります。

  • 指でつまむように操作する感圧センサー内蔵のリモコン

“おかわり”したくなるAirPods

AirPodsは開放型ハウジングのイヤホンなので、周囲に人がいる静かな場所で使う場合は“音もれ”による迷惑をかけないように気をつけて使いたいものです。ただ、新しいAirPodsは比較的小さな音量でもメリハリの効いたサウンドが聴けるので、屋外で使っていたら気付かぬうちに目一杯ボリュームをあげて音もれしていた、ということもあまりないかと思います。これまでにAirPodsを使っていた人は、新しいAirPodsに買い替えたら、今まで通りの感覚で音量を上げてしまうと少しうるさく感じるかもしれません。特に、屋外を移動しながら音楽などを聴く場合は、音量設定に注意してみてください。

  • 開放型ハウジングのイヤホンなので、周囲に人がいる静かな場所ではボリューム設定にも気を遣いながらリスニングを楽しみたいものです

新しい第3世代のAirPodsは、従来のモデルとはまたひと味違う個性的なワイヤレスイヤホンです。空間オーディオのダイナミック・ヘッドトラッキングに代表されるようなアップルらしいイノベーションをいち早く最前線で体験できる魅力も含めて、個性あふれる粋なラインナップがAirPodsシリーズに加わりました。AirPodsの“おかわり”を大いにオススメします。