SAS Institute Japanは10月21日22日、アナリティクス専門カンファレンス「SAS FORUM JAPAN 2021」をオンラインで開催している。同カンファレンスは、業界に先駆けてDX(デジタルトランスフォーメーション)を実践している注目企業や事例、技術、コンセプトなどを紹介するもの。今回のテーマは「NEW DAY. NEW ANSWERS. INSPIRED BY CURIOSITY ~ 新たな日。新しい洞察。それらは探求心がもたらすもの ~」だ。本稿では、今年9月に代表取締役社長に就任したマイケル・キング氏が登壇したゼネラル・セッションの模様をお届けしよう。

DXに欠かせないデータとアナリティクス

冒頭、SAS Instituteの創始者であり、CEOを務めるジム・グッドナイト氏がビデオメッセージを寄せた。同氏は、SAS Forumについて「アナリティクスが毎日の意思決定を導き出すうえで役に立っているのかを学ぶ最善の場所」と述べたうえで、データとアナリティクスの有用性について、次のように語った。

「ここ数年、厳しい時代を経験しているが、だからこそデータとアナリティクスを活用することで、身をもって生活や仕事に関する重要な決定を下すことができることを体験している。データを見ることで、いつ安全に移動・旅行できるのか、いつ出社の再開が可能かの判断ができる」

  • SAS Institute CEO ジム・グッドナイト氏

グッドナイト氏は、「DXはデータやアナリティクスを活用した効率化、利益改善を目的にしている」と、データやアナリティクスがDXに重要であることを強調し、「DXは2020年に注目を集め、今もその機運は続いている。SASフォーラムでは、企業がどのようにしてDXのジャーニーを推進しているかを学べる」と語った。

データの正しい活用がDXを実現し、インテリジェンスを導く

続いて、キング氏は「SASのミッションは『人々に力を与え、感動を与える。最も信頼されるアナリティクスで。』だが、信頼は与えられるものではなく、勝ち取るもの。データやアナリティクスがいかに活用されているかと真に理解することが大切」と、同社のミッションについて説明した。

  • SAS Institute Japan 代表取締役社長 マイケル・キング氏

SASのビジョンは「データの世界をインテリジェンスの世界に変えること」だが、キング氏は「分析さえできれば、どんなデータにも必ず洞察と価値があると信じている。データは企業の目的を成功裏に達成する潜在性を踏めている。データを正しく使ってこそ、DXが実現し、インテリジェンスを導く。組織がデータからインテリジェンス、価値を獲得して、初めてDXにつながる」と語り、データをインテリジェンスに変えることの重要性を示した。

キング氏は、3つの柱から成るSASジャパンの戦略も披露した。1つ目の柱は「Lead」で、「顧客やパートナーがDXとクラウドのチャンスを生かせるよう支援すること」と「ビジネスのスピードで意思決定できるよう、信頼されるパートナーになること」を目指す。2つ目の柱は「Innovate」で、「最高のソリューションテクノロジー、コンサルティング、教育を提供し、顧客がイノベーションを加速し、可能性を実現できるよう支援すること」を目指す。3つ目の柱は「Engage」で、「顧客、パートナー、個人がもっとSASを使いやすくすること」を目指す。

  • SAS Institute Japanの事業戦略の3つの柱

ナンバーワンのパートナーになるために、常に顧客に寄り添う

次に、常務執行役 営業統括本部 本部長の宇野林之氏が戦略の詳細を説明した。「Lead」において、業界をリードするにあたり、同氏は「過去40年以上にわたって積み重ねてきたデータサイエンスのナレッジやコンサルティングアセットはお客さまに寄与できるものと信じている」と語った。また、クラウドとDXに関するサポート体制を確立するとともに、アナリティクスが必要とするライフサイクルを整備することで、エンド・ツー・エンドで顧客に提供していくという。また、同氏は「顧客にとって、ナンバーワンのパートナーでありたい。常に顧客に寄り添う形で、サポートしていく」と述べた。

  • SAS Institute Japan 常務執行役 営業統括本部 本部長 宇野林之氏

「Innovate」においては、ビジネス環境や経営課題に対し、柔軟性と拡張性を担保しながら、システムを活用してもらえるようなテクノロジーを提供していく。そして、「ソフトウェアにとどまらず、ビジネス課題に寄り添う形でコンサルティングサービスとナレッジをあわせて提供することで、お客さまに革新性と簡便性を提供する」と、宇野氏は説明した。そして、同社の主力製品であるSASクラウドとSAS Viyaについては、「時代の変化に伴い、顧客のニーズに応える形で生まれたもの。SASがクラウドネイティブになることは顧客に大きなメリットをもたらす。これらの製品は、ブームとなっているデータサイエンスやAIの分野で、ビジネスのスピードの加速を支援できる」と、同氏は語った。

「Engage」においては、顧客に寄り添いながら、顧客の課題発見・解決に向けた仮設立案、モデリング、業務適用などすべてのアナリティクスとDXに必要とされるものをエンド・ツー・エンドで提供していくという。その際、宇野氏は「ソフトウェアとコンサルティングの提供にとどまらず、多くの企業で課題とされている人材育成までサポートできる体制をもって、顧客との関係を構築していきたい」と述べた。

SASはもともとアナリティクスを専業としてきたベンダーだが、クラウドに対応し、ビジネスユーザーでもアナリティクスを行うことを実現するプラットフォーム「SAS Viya」によって、新たなデータアナリティクスベンダーとして進化している。同社のアナリティクスが日本企業のDXにどのように貢献するのか、期待したい。