この記事では、iPhoneにおけるウイルスの状況について解説します。Windowsパソコンでは、ウイルス対策アプリを導入してチェックすることが半ば常識とされていますが、なぜiPhoneはそうではないのでしょう?
iPhoneがウイルスに対して「比較的安全」な理由
怖い警告文が表示された、操作不能な状態になった、そして最後にはデータが全部消えた……、パソコンが普及し始めた頃から耳にするウイルス被害の例ですが、スマートフォンも無関係ではありません。手口は多様化し、個人情報の入力や金銭を要求されたり、操作不能になるといったパソコンと似た内容のほか、勝手に内蔵カメラで撮影されるなどスマートフォンならではの事例も報告されています。
そんなウイルス感染がiPhoneでも起こるのでしょうか? 結論からいうと、iPhoneがウイルスの被害にあわないとは断言できません。世界のどこかにウイルスを開発する悪人がいるかぎり、その矛先が自分に向けられる可能性はわずかにでも存在します。
しかし、iPhoneはウイルスに対して「比較的安全」といえます。実際、これまでiPhoneが1種類のウイルスに大々的かつ継続的な被害を受けた事例は報告されていませんし、Appleは理にかなった対策を講じています。なぜそう言えるのか、次の3項目にわけて説明しましょう。
- App Storeによるアプリの管理
- アプリ公開までの道のりの長さ
- サンドボックスの存在
App Storeによるアプリの管理
Appleはサードパーティ製アプリの配布を自社運営の「App Store」に集中させており、それ以外の手段によるアプリの配布/インストールを認めていません(いわゆる「脱獄」したiPhoneを除く)。App Storeで公開されるアプリは、専門技術者による厳しい審査を義務付けられているため、マルウェア(ウイルスやフィッシングツールなど迷惑プログラムの総称)の潜むアプリが世に出される危険性はかなり抑えられます。
アプリ公開までの道のりの長さ
iPhoneのアプリ開発者は「Appleデベロッパープログラム」への登録が必須とされており、その運営規則に従わなければなりません。同プログラムへの登録にはApple IDが必要となるほか、アプリの公開申請を行うときには証明書やプロビジョニングプロファイル(証明書とApple IDをひも付けた書類)を作成しなければなりません。
もし、開発者に悪意が芽生えたとしても、審査の過程でウイルスが発見されないようプログラミングに細工する必要がありますから、いたずら目的のアプリはかなり淘汰されることでしょう。
サンドボックスの存在
iOSアプリは、内蔵ストレージ上に「サンドボックス」と呼ばれる専用領域を割り当てられます。アプリが作成したデータや書類も同じサンドボックス内に保存され、他のアプリから直接読み書きできないルールです。これはシステムの安全性を確実にするためのiOSの仕様で、万一ウイルスなどマルウェアの被害を受けたとしても、被害をサンドボックスの範囲内にとどめて最小限にする効果があります。
iPhoneで必要なセキュリティ対策とは
App Storeという堅牢な城壁の存在により、iPhoneがアプリ経由でウイルスの被害にあう可能性は限りなく抑えられています。だからウイルス対策アプリは必要なく、App Storeを探してもみつからないはずですが、セキュリティ対策をうたうアプリはいくつも存在します。
iPhone向けのセキュリティ対策アプリは、その多くが「危険なWEBサイトの検出」を目的としています。金銭の詐取を目的とした「詐欺/フィッシングサイト」、クレジットカードなどの個人情報抜き取りを目的に著名オンラインストアのふりをする「偽サイト」の検出は、App Storeの管轄外ですから、セキュリティ対策アプリにも出番があることは確かです。
Safariのセキュリティ機能を有効にする方法
もっとも、iPhone標準のWEBブラウザ「Safari」にもセキュリティ機能が装備されています。「設定」→「Safari」画面で「詐欺Webサイトの警告」スイッチをオンにしておけば、Googleが提供するセーフブラウジング機能が有効化され、フィッシングサイトや偽サイトである可能性が高いと判定されたWEBサイトへ接続しようとしたときに警告してくれます。世界で収集された最新セキュリティ情報が反映されているため、被害を未然に防ぐことができます。