日本HPが7月15日に発表した「HP Pavilion Aero 13」は、「重さ1Kg未満」「アスペクト比16:10の13.3インチノート」「マグネシウムシャーシ採用」「画面占有率約90%」と、同社のコンシューマー製品で初めて、あるいはPavilionシリーズで初めて実現された特徴をいくつも備えたノートPCです。今回、この製品をテストする機会がありましたので、さっそくレビューをお届けします。
HP Pavilion Aero 13 パフォーマンスモデル 仕様
- HP Directplus価格:163,900円
- CPU:AMD Ryzen 7 5800U
- メモリ:16GB DDR4 SDRAM(3,200MHz)
- ストレージ:512GB SSD(M.2/NVMe)
- ディスプレイ:13.3インチワイド非光沢IPS液晶(1,920×1,200ドット)
- グラフィックス:CPU内蔵(外部ディスプレイ出力時最大解像度3,840×2,160ドット)
- ネットワーク:Wi-Fi 6対応無線LAN、Bluetooth 5.2
- インタフェース:SuperSpeed USB Type-C(10Gbps、USB Power Display/DisplayPort 1.4/電源オフUSBチャージ機能対応)、SuperSpeed USB Type-A(5Gbps)×2、HDMI 2.0、ヘッドホン出力/マイク入力兼用×1
- バッテリ駆動時間:最大10時間30分
- サイズ/重さ:約W298×D209×H16.9~18.9mm、約957g
- OS:Windows 10 Pro(64ビット)
13.3インチ液晶搭載、マグネシウムシャーシで1kgを下回る軽さ
HP Pavilion Aero 13はピンクベージュ/セラミックホワイトの2色が選べますが、今回試用したのはセラミックホワイトのモデルになります。ホワイトの色調とマットな質感のおかげで、全体のデザイントーンは落ち着いた雰囲気。ユーザーを選ばず、どんなシーンにもマッチしそうです。
先述のとおり、Pavilionシリーズで初めてマグネシウムシャーシを採用したというのも本製品の特色のひとつ。表面の塗装でメタリックな部分は隠されていますが、天板面や底面、ヒンジ部分はしっかりした剛性感のある造りです。
そしてセラミックホワイトモデルの塗装は、ひっかき傷に強いAED(アニオン電着塗装)加工。持ち歩きの機会が多いモバイルノートPCではうれしい仕様です。ただ、ホワイトの塗装ということで、汚れが目立ちやすいのは否めません。新聞や雑誌などを触った直後の手で持ったりすると、インクの汚れがついてしまうことがありますので、気になる人には気になるポイントでしょう。
そして忘れるわけにいかないのが、「エアロ」という名に恥じない約957gという軽量さ。重心の偏りも気にならず、片手で支えた状態でもほとんど負担を感じません。また今回テストした範囲では、負荷がかかっているときでも底面がほんのり温かくなるくらいで、よほどハードな作業をさせるのでもないかぎり、膝の上に載せた状態で利用しても不快になるようなことはないでしょう。
アスペクト比16:10。意外に大きい120ドットの差
続いてディスプレイを見ていきましょう。
本機は、日本HPの13.3インチノートPCで初めてアスペクト比16:10(1,920×1,200ドット)を採用しています。一般的な16:9(1,920×1,080ドット)よりも120ドット広いだけ……と思われるかもしれませんが、例えばExcelでの作業時に4~5行分の表示領域を稼げると考えると無視できる差ではありません。細かい上下スクロールが減ることで作業効率がアップし、作業時のストレスを軽減してくれます。
画面占有率約90%というのも伊達ではなく、四辺すべてディスプレイ面のいっぱいまで表示領域が広がっているという印象です。輝度400nitですみずみまで明るく、sRGBを100%カバーする色再現性も十分と感じました。
キーピッチは十分だが、配置に好みがわかれるか?
キーボードは日本語レイアウトで、本体の左右いっぱいまで使用し、キーピッチ約18.7mmを確保。ボディの剛性が高いこともあってか、打鍵感はしっかりしています。また、上段の「-」「^」「¥」キーこそ他のキーより若干小さいものの、他の「enter」キー周辺の記号キーのサイズを確保している点にも好感が持てます。
ただ、好き嫌いが分かれそうなのが右端列に「delete」「home」「pg up」「pg dn」「end」のキーを配したレイアウト。慣れの問題ではありますが、筆者もテスト中に「enter」キーのつもりで「pg up」キーに触ってしまったり、「back space」キーを押そうとして「home」キーを押してしまったりということがありました。「back space」「enter」「shift」キーが右端に並ぶレイアウトが染みついているユーザーにとっては、ちょっと馴染みにくいポイントになりそうです。
タッチパッドの位置は筐体の中央。わりと大きめなサイズなので、キーボードのホームポジションに手を置くと、右手の手のひらの親指の付け根あたりがタッチパッドの上にあたります。手のひらがタッチパッドに接触して誤操作が発生する場合は、タッチパッドの感度設定を見直しましょう。
USB-Cからの電源供給でも動作可能
インタフェースは、SuperSpeed USB Type-C 10Gbps×1、SuperSpeed USB Type-A 5Gbps×2、HDMI 2.0×1、ヘッドホン出力/マイク入力兼用端子×1を装備。USB Type-CポートはUSB Power Delivery、DisplayPort 1.4、電源オフUSBチャージ機能に対応しており、一般的な利用であれば不足を感じることはないでしょう。
なお、本製品には丸型コネクタに接続する専用ACアダプタが付属しますが、先述のとおりUSB Power Deliveryに対応しているのでUSB-Cからの電源供給も可能です。筆者も手元にあった61WのUSB-C ACアダプタで本機に給電できることを確認しました。汎用のUSB Power Delivery対応ACアダプタを利用できることで、モバイル利用にあたっての自由度を確保できるのはありがたいところです。
Ryzen 7 5800Uはさすがのパフォーマンス
続いてパフォーマンスをチェックしていきましょう。今回試用したのは最上位のパフォーマンスモデルで、プロセッサはZen 3アーキテクチャのAMD Ryzen 7 5800Uを搭載。メモリはデュアルチャンネルの3,200MHz DDR4 SDRAMが16GB、ストレージは512GB SSDということで、モバイル機ではありますが十分な性能を期待できそうです。GPUはRyzen 7 5800Uに統合されたRadeon Graphicsを使用しており、OSはWindows 10 Pro(64ビット)がインストールされています。
PCMark 10 Extendedのスコアは下記のようになりました。
- 総合:4,601
- Essentials:9,986
- Productivity:8,374
- Digital Content Creation:5,594
- Gaming:2,589
Gamingの数値こそRyzen 7の統合GPUを使用しているために高い数値ではありませんが、モバイル向けのノートPCとしては十分な結果。実際に、ビデオ会議、Officeアプリでの作業、Webブラウジングなどを並行して行ってもパフォーマンス不足を感じることはありませんでした。また、CINEBENCH R23のスコアはマルチコアが7,500、シングルコアが1,374。8コア16スレッドのRyzen 7 5800Uのパワーを感じる数値です。
グラフィックスの性能は3DMarkとドラゴンクエストXベンチマークテストで測定しました。3DMarkの結果はDirectX 11ベースのFire Strikeが2,991、Direct X 12ベースのNight Raidが12,697というスコア。ドラゴンクエストXベンチマークテストはスコア9,474、「とても快適」という評価でした。CPU内蔵のグラフィックスということで、独立したGPUを搭載したPCと比較すると分が悪い感はありますが、シビアなゲームでなければ十分に楽しめるでしょう。
最後にPCMark 10のBattery Testでバッテリ駆動時間をチェックしました。一般的なオフィス作業を想定したModern Officeテストで、駆動時間は7時間7分(残り3%)でした。公称スペックでは最大10時間30分なので、その7割弱といったところ。だいたい1日の活動時間は使えると考えてよさそうですが、ACアダプタなしで本体のみを持ち歩くにはちょっと不安が残ります。
ところで、このテスト中に驚いたのがファンの静かさでした。ベンチマークテストで負荷をかけているときでも、わざわざ耳を近づけなければファンが回転しているのがわからないくらい。そして負荷が解消されればほどなくしてファンが止まり、無音に戻ります。前述のとおり、筐体底面から感じる熱も気になるほどではありませんでしたので、Ryzen 7 5800Uは発熱に関してはかなり優秀なプロセッサのようです。
幅広いユーザーにオススメできる、高性能と携帯性を両立させたモバイルノートPC
ここまでご紹介してきたように、パフォーマンス、ディスプレイ性能、デザイン/携帯性といった点を高いレベルでクリアしたHP Pavilion Aero 13は、モバイル向けノートPCとしては相当魅力的な製品といってよさそうです。製品発表の際には1997年~2001年生まれのZ世代をターゲットとして強く意識するコメントが出ていましたが、Z世代に限らず幅広いユーザーにオススメできる製品だと感じました。