iPhoneのオペレーションシステム(OS)といえば「iOS」ですが、アイコンデザインなど外見がよく似たiPadのOSは「iPadOS」と名称が異なります。名称が違うのだから機能も違う...確かに異なる点はありますが、この2つのOSは最近枝分かれしたばかりの"近縁種"です。

そもそもiOSは、Mac用のOS(macOS、当時はMac OS X)を基礎に開発した「iPhoneOS」として誕生しました。カーネルなどOSの中核にあたるプログラムと基盤部分(名称は「Darwin」)は共通で、描画機構やサウンド機構など多くのプログラム部品(ライブラリ/フレームワーク)もmacOSのものをiPhone向けに最適化し、タッチパネル対応など独自機能をくわえる形でシステムを実現していました。

つまり、iOSはmacOSの"弟分"として誕生しましたが、やがて開発順序は逆転します。「モバイルファースト」という言葉があるように、AppleはiOSの機能強化/新機能投入を優先し始めたのです。たとえば、指紋認証の「Touch ID」や音声アシスタントの「Siri」は、最初にiOSで導入され、あとからmacOSに採用された技術です。ただし、SoCなどハードウェアの違いが大きく、両者にアプリの互換性はありません。

一方、iPadOSはiOSの"双子の弟"といえる存在です。当初、iPadはiOSそのもので動作していましたが、iOS 13の発表にあわせ「iPadOS 13」として独立し、iOSにある機能の多くを備えつつ、タブレットに適した独自機能を備えるようになりました。Apple Pencilを利用した手書き機能、iPadをMacのセカンドディスプレイとして使えるようにする「Sidecar」はその一例です。同系のSoCを搭載するため、iOSとアプリの高い互換性を備えることもポイントです。

そのような経緯から、iOSとiPadOSの関係に比べてmacOSはやや遠い存在でしたが、2020年にM1プロセッサ搭載Macが登場してから状況が変わりました。MacでもiPhone/iPadと同系のSoCを採用したことにより、すべてではないもののmacOSでもiOS/iPadOSアプリが動作可能になったのです。今後、三者の関係はより密接なものとなるに違いありません。

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