APS-Cサイズのイメージセンサーを積むリコーのデジタル一眼レフカメラ「PENTAX K-3 Mark III」(以下、K-3 III)、前回の「機能編」に続き、今回は「画像編」としてK-3 IIIの画像をチェックしていきます。
最新モデルらしく、装備面での不満はナシ
まずは、K-3 IIIのキーデバイスなどを改めて見てみることにしましょう。
K-3 IIIが搭載するイメージセンサーは、APS-Cサイズ裏面照射型有効2573万画素CMOSでローパスフィルターレスとしています。画像処理エンジンは、新しくパワフルな「PRIME V」で、処理速度を向上させる「アクセラレーターユニットII」も備えています。このエンジンは、オートフォーカスやホワイトバランス、そして絵づくりにも大きく関わっていることは言うまでもありません。最高コマ速は12コマ/秒、最高設定可能感度はISO160万です。
光学ファインダー用のAFセンサーも、画像処理エンジンと同様に最新の「SAFOX 13」を採用。測距点は101点とし(実際に選択できる測距点は41点)、中央の25点はより精度の高いクロスセンサーでその精度に期待がかかります。
一眼レフの要である光学ファインダーの倍率は1.05倍。APS-Cセンサーを積むデジタル一眼レフの光学ファインダーは、一般に大きいといわれるものが0.8倍から0.9倍ほどなので、いかに大きなファインダー画面であるかが分かるかと思います。視野率についても、高級機の証と言うべき100%を達成。ピントの山がつかみやすく明るいファインダースクリーンも魅力です。液晶モニターは3.2インチ162万ドット。チルト式でもバリアングル式でもなく固定式で、これについては意見が分かれそうなところです。
センサーシフト方式の手ブレ補正機構SRは、シャッタースピードに換算して最大5.5段分の補正が可能。5軸対応としているのも魅力です。ペンタックスは魅力的な単焦点レンズを多数ラインナップしていますが、その多くはレンズ内手ブレ補正機構の搭載が難しい短い鏡筒のレンズであるため、K-3 IIIがセンサーシフト方式の手ブレ補正機構を採用したのは理にかなったものと述べてよいでしょう。さらに、この機構を応用して高精細な画像が得られる「リアル・レゾリューション・システム」や、天体の動きに合わせてイメージセンサーを動かす「アストロトレーサー」、自動的に画面の傾きを補正する「自動水平補正」、画面の傾きと構図の位置を補正する「構図微調整」など搭載しているのも見逃せない部分です。
ペンタックスらしい発色や絵づくりは健在
今回の作例撮影では、「HD PENTAX-DA 40mmF2.8 Limited」(実売価格は32,500円前後)「HD PENTAX-DA 15mmF4ED AL Limited」(同50,000円前後)、「HD PENTAX-DA 55-300mmF4.5-6.3ED PLM WR RE」(同50,000円前後)の3本を使ってみました。いずれもAPS-C専用のレンズで、それぞれの写りも合わせて見てください。仕上がり機能である「カスタムイメージ」はデフォルトの「鮮やか」を使用し、感度およびホワイトバランスはオートに設定しています。
その「鮮やか」の絵づくりについては、適度な彩度とコントラストで万能的な仕上がり設定に思えます。作りすぎたところがなくナチュラルな感じで、色飽和も作例を見る限りはないようです。個人的な印象ですが、ペンタックスの絵づくりは特に新緑の撮影に向いているように思えます。メーカー名は伏せますが、あるメーカーのカメラは緑の発色が地味で物足りなく感じていたことがあり、そのとき出会ったのがペンタックスのデジタル一眼レフでした。艶やかな緑色の発色は期待通りの絵が得られ、以来新緑の季節になると同ブランドのカメラで撮りたくなるほどです。本モデルもそのことに変わりはなく、今回季節的にレビューにちょうどよいタイミングでした。もちろん緑色だけでなく、赤色や青色の発色についても素直な印象で好ましく思っています。
ノイズレベルについては、正直実用として使えるのはISO25600あたりまで。それ以上となるとカラーノイズが強く現れ、解像感も低下します。特にISO409600以上となると、その感度で撮れないわけではないですが、ノイズのなかに被写体がある結果となってしまいます。高感度域における写りに過度な期待はしないほうがよさそうです。
▼ISO感度別の画質比較(ISO6400~)
AFは、今回使用したボディ内モーターのレンズもレンズ内モーターのレンズも、スナップ撮影などではそのスピードと精度に不足を感じることはありませんでした。測距点の選択も、測距点レバーの搭載で素早い選択が可能としており、とても使い勝手がよく感じました。サッカーなどのように動きが速く、さらに動きの読みづらい被写体の撮影は今回行っていませんが、広いフォーカスエリアを持つこともあり大いに期待できそうです。
▼カスタムイメージの仕上がり比較
APS-C一眼レフとしてはスキのない仕上がりだが…
満を持して登場したK-3 IIIは、とても完成度が高く隙のないデジタル一眼レフに思えました。個人的には懐の状況が許せば、すぐにでもカメラショップに走りたいほどです。ですが、一方で“コレジャナイ感”があるのも正直なところです。
レンズ交換式カメラの世間的な流れは、いうまでもなくデジタル一眼レフではありません。これまでデジタル一眼レフの牙城といわれていた欧米でも人気の軸足が変わってきており、その主流は世界的に見ても完全にミラーレスになったと述べてよいでしょう。本モデルは、早い時期からテザー広告を打ち注目されましたが、同時にそれが一眼レフである理由も謳ってきていました。しかしながら、語れば語るほど私個人はちょっと残念な気持ちになったのも事実です。
一眼レフよりもコンパクトなボディにでき、露出やホワイトバランスなどの状況が事前に把握が可能、撮影直後のポストビューもファインダーに表示できるなど、ミラーレスのメリットは少なくないにもかかわらず、それに対して組織として背を向けてしまったように思えてならなかったからです。
「K-01」や「PENTAX Qシリーズ」など、ペンタックスブランドにもミラーレスが存在していたのは事実です。ただし、写真愛好家の作品撮りなど、本格的に使うにはちょっと縁の遠いものでした。APS-Cサイズでもフルサイズでも構いません。専用のレンズは最初数本でもよいと思います。足りないところはマウントアダプターを使い、一眼レフ用のレンズで対応させればいい。ペンタックスの本気度を感じさせるミラーレスが見てみたいと思うのは、私ばかりではないはずです。