富士通は6月23日、スーパーコンピュータ「富岳」上で、流体解析などのシミュレーション向け商用アプリケーションを用いて、大規模かつ高精細な解析が高速に行えることを、アプリケーションベンダー各社と協働で2020年11月から2021年5月に実証したことを発表した。

あわせて、「富岳」およびその技術を活用した「FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC(以下、PRIMEHPC)」シリーズ向けに、新たに製造業からのニーズが高い商用アプリケーションについて、各社と協働して動作検証や性能チューニングを実施し、2021年6月より各社から順次提供を開始することも発表した。

  • 航空機の翼表面における乱流の熱流体解析結果の比較

    航空機の翼表面における乱流の熱流体解析結果の比較

富士通はベンダー各社と協働で、PRIMEHPCシリーズ向けに動作検証した商用アプリケーションを用いて、航空機や自動車のエネルギー効率の改善や、安全性向上を目的とした大規模で高精細なシミュレーションを「富岳」の計算リソースを活用して高並列で行い、実用的な実行時間で解析できることを実証した。

熱流体解析アプリケーション「Cradle CFD | scFLOW」を並列実行し、高精細なモデルをLESで解析することにより、従来の解析手法RANSよりもバフェットの予測につながる翼の表面上の圧力振動や細かい渦が生成される現象を、詳細に観測できるようになったという。これにより、バフェットを考慮した航空機の安全設計につながる大規模解析ができることを実証したとしている。

また、自動車などのエンジン内のピストン動作によるシリンダー内の燃焼などの一連の化学反応を考慮した燃焼解析を、熱流体解析アプリケーション「CONVERGE」を使った並列計算により、2時間で行えることを確認したという。これにより、製造業における設計業務などの限られた時間でも高精度の解析が実施可能となり、エンジンのエネルギー効率向上や異常燃焼の低減などにつながることが期待されるという。

  • エンジンのシリンダー内の熱流体解析結果の比較

    エンジンのシリンダー内の熱流体解析結果の比較

さらに、電気自動車などの駆動用モーターに用いられるIPMモーターの高精度な損失計算を電磁界解析アプリケーション「JMAG」にて検証。 「富岳」を用いて並列実行することにより、従来数週間かかる計算が1日で計算できたという。これにより、電気自動車などのエネルギー効率向上につながる解析がより短時間で実行可能になるということだ。

富士通は、「富岳」および「PRIMEHPC FX1000」向けの開発環境提供や技術サポートなどをベンダー各社に行い、構造解析アプリケーション「LS-DYNA」を始め新たに8つの商用アプリケーションにおいて動作検証を協働で実施した。2021年6月より順次ベンダー各社から提供される予定だという。