富士通クライアントコンピューティング(FCCL)は6月22日、デジタル文具「QUADERNO(クアデルノ)」の新モデルを発表した。E Inkを採用した電子ペーパーで、手書き文字をデジタル化して保存できることが特徴。新規ページでメモを取るほか、PDFの資料などを表示させて書き込むこともできる。
2018年12月に発表された初代クアデルノから約2年半、デザインはほぼそのままに、中身を大幅に刷新した新モデルが登場した。
FCCLの執行役員 コンシューマ事業本部副本部長の高嶋敏久氏は、新しいクアデルノのコンセプトを「書きやすいこと」「煩わしくないこと」「持ち歩きたくなること」の3点と紹介。コンシューマ事業本部 クアデルノ商品企画担当の松下季氏は、新モデルで最も力を入れた点が「書き心地」だとし、書いたときの「感じ方のレベルまでこだわった」とアピールした。
ペン入力がワコムの電磁誘導方式(EMR)に対応
第2世代クアデルノの大きな進化ポイントの1つが、ワコムの電磁誘導方式(EMR)による描画に対応したことだ。
従来は静電容量方式ペン入力対応のみだったが、新モデルでは指で操作する静電容量方式指入力に加え、スタイラスペンによるワコム電磁誘導方式(EMR)デジタイザに対応した。
EMRは上から見て360度、横から見て180度の傾きをリアルタイムでセンシングするものといい、直線や斜めの線が従来より綺麗に書けるようになるほか、本体を傾けて書く際にも書きやすくなる。ペンのレイテンシ(ペン先を画面に当ててから線が出るまでの遅延)も、前モデルから30%速くなった。
また、付属ペンのサイドボタンが、従来は「消しゴム」「ハイライト」で固定されていたところ、新しい付属ペンではこの2つに加え「範囲選択」や「ペン(赤)」「拡大」「無効」など6つの機能から、好きなものを割り当てられるようになった。
なお、ペンは同じEMR方式のペンであれば付属品でなくとも動作するが、付属品はクアデルノ用にチューニングしているため精度が高いという。ペンのサイズは約138.35mm×8mm径、重さは約7.2gとなる。
付属ペンはバッテリーレスに。本体性能も改善
コンセプトの1つ、「煩わしくないこと」のポイントは、電磁誘導方式になったため付属ペンがバッテリーレスとなり、ペンを充電する必要がなくなったことが挙げられる。
加えて、本体は最新のE Inkディスプレイやメモリ強化などの影響で、ページめくりなどの反応速度が従来から20%速くなった。表示についても、最新のE Inkディスプレイの採用で画面コントラストが15%アップしたため、視認性が高まったという。
機能面ではストレージ容量が2倍になり、ノート1冊分を100KBとした場合に約20万冊分を記録できる。本体インタフェースの改善も見逃せないところで、従来のmicroUSBからUSB 2.0 Type-Cへと変更され、スマートフォンなどと同じType-Cケーブルで充電できるようになった。バッテリー容量は従来同等だが、機構の刷新でバッテリー持続時間は短くなっている。
画面内インタフェースの改善では特に検索性を高め、保存したファイルのサムネイル表示に対応。ノートの表紙を見るような自然な感覚で、目的のファイルを探せるようになった。
また、「持ち歩きたくなること」に関しては、別売の専用カバーを軽量化。従来ではA5モデルでカバー+ペン+本体の総重量が約500g弱だったところ、新モデルではトータルで393gに収まった。ただしEMRの採用などにより本体の重さは従来より若干重くなっている。
専用カバーはカラーバリエーションを増やし、ベージュ、ネイビーが選べるようになった。ペン先の摩擦感がQUADERNO向けに調整されている、ドイツ・LAMYコラボのデジタルペンも用意される。
サイズはA5、A4の2種類。価格は49,800円から
ラインナップは、A5モデル「QUADERNO A5 (Gen.2)」と、A4モデル「QUADERNO A4 (Gen.2)」の2種類。6月22日に直販サイト「富士通WEB MART」や量販店で予約を受け付け、順次量販店の店頭展示もスタートする。発売は7月8日。直販サイトでの価格は、A5モデルが49,800円、A4モデルが69,800円。主な仕様は下記の通り。
QUADERNO A5 (Gen.2) | QUADERNO A4 (Gen.2) | ||
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ディスプレイ | 10.3型フレキシブル電子ペーパー(1,404×1,872ドット) | 13.3型フレキシブル電子ペーパー(1,650×2,200ドット) | |
タッチパネル | 静電容量方式指入力対応タッチパネル/電磁誘導方式デジタイザ対応(スタイラスペン) | ||
内蔵メモリー容量 | 32GB/使用可能領域 約22GB以上 | ||
インターフェイス | USB 2.0 Type-C コネクタ | ||
外部ストレージ | ― | ||
サポートファイルフォーマット(拡張子) | PDF(.pdf) | ||
専用アプリの動作OS | PC:Windows 10 Home/Pro、macOS(10.14/10.15/11) スマートフォン:Android 8以降(Google Pixel 3/3 XL/3a は除く。タブレット非対応)、iOS 12以降(iPad非対応) |
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無線LAN | Wi-Fi 5(IEEE802.11a/b/g/n/ac) | ||
Bluetooth | バージョン5.0 | ||
充電時間 | 約2.5 時間(電源オフUSB充電機能使用時)/約7時間(USB充電) | ||
充電池持続時間 | Wi-Fiオフ時:最長2週間/Wi-Fiオン時:最長5日 | ||
本体サイズ | W173.2×H242.5×D5.9mm | W222.8×H301.1×D5.7mm | |
重さ | 約261g | 約368g |
「紙には本質的にアナログのよさがある」
現行の初代クアデルノは、学生が教科書を入れて参照したり、音楽に関わる人が楽譜を表示したりといった用途のほか、イラストの下書きや漫画のラフ制作、ビジネスパーソンが手帳として使っているケースもあったという。
またコロナ禍においては、子どもが自宅学習に使ったり、ビジネスパーソンがオンライン会議で資料を参照したり、メモ用紙として使ったりといった用途も想定されている。
FCCLはクアデルノで国内の電子ペーパー市場の拡大を目指すとともに、海外展開も視野に入れているという。
FCCLの竹田広康執行役員副社長は、「FCCLでは、PCを通じて情報のデジタル化を進めてきた。しかし紙は減らない。紙には本質的に、手書きのよさ、アナログのよさがある」とコメント。新しくなったクアデルノにはユーザーの声が反映されているとし、「多くのユーザーの声、FCCLの思いが詰まったものになっている」と強調した。