情報通信研究機構(NICT)は6月9日、ソニーセミコンダクタソリューションズと共同で、60GHz帯のミリ波を用いる次世代TransferJet通信技術を搭載した自律移動サービスロボットによる協働型見廻りシステムを開発したと発表した。

4Kカメラを搭載した複数の自律移動サービスロボットに対して無線で見廻りを依頼すると、見廻り場所の近くにいるロボットが移動して撮影を行い、その後、撮影データは依頼者の元までロボット自身が運搬する。そして、再生装置にTransferJet通信技術で無線伝送、自動再生される。

  • 自律移動サービスロボットを用いた見廻りシステム実証実験の流れ

両者が実施した実証実験では、86.8m離れた先の見廻り場所の撮影データ(約10GB)を依頼者の元におよそ163秒(移動時間129秒、伝送時間34秒)で届けられることが確認できたという。これは、データ転送速度に換算すると、514Mbpsに相当するとのこと。

  • 実証実験で利用した自律移動サービスロボットの外観・機器構成

実証実験で活用されたロボットは、配膳ロボットとして開発された縦539 mm、横460 mm、高さ1088 mmの自律移動ロボットで、LiDARと呼ばれるセンサーを使って、常に周辺の障害物等との距離を計測し、障害物を回避しながら自律的に移動することができる。また、自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術(SLAM)を採用した地図自動作成機能を備えており、リアルタイムに自らの周辺環境の変化も捉えた地図を更新しながら現在地を推定し、与えられた目的地点に向かう。最大移動速度は、ゆっくりとした人の歩行速度と同程度の毎秒0.8m。

今回開発された同システムは、広帯域通信インフラの新規敷設が困難な場所や電波の届かないエリアなどにおける高解像度カメラを用いた撮影データの実質的な無線転送手段として利用することが可能。また、災害や老朽化に伴う構造物のひび割れなどの検出を目的とした無人監視サービスや、ニューノーマル時代に求められる密なオフィス環境等の自動見廻りと注意喚起を非接触に行うサービスへの応用なども期待される。

NICTは今後、実際のオフィス・ホテル・病院などのビル内や駅・商業施設等の構内といった実環境における実用性検証を、想定されるサービス提供者やビル・駅管理などに関わる企業と協力して実施していく方針だ。