ダイソンから新しいコードレススティック掃除機「Dyson V12 Detect Slim Fluffy」、「Dyson V12 Detect Slim Total Clean」、「Dyson V15 Detect」が登場しました。オンライン発表会から製品の特徴や概要をお伝えしましたが、合わせてダイソン本社で実際の製品を体験。使い心地を確認しつつ、Dyson Country Quality Leadのジェームズ・シェール氏に、新製品の気になる疑問について聞きました。
両製品に共通する「Detect」という2つの新機能
V12 Detect SlimとV15 Detectに共通しているのが、ゴミを「Detect(発見・検出)」する2つの機能です。1つめのDetect機能は、「Laser Slim Fluffy クリーナーヘッド」に搭載されたレーザー照射機能。ヘッドから緑色のレーザーを床面に照射することで、目視できない微細なゴミが目に見えるようになります。
実際に使ってみると、パッと見はキレイな床でも、細かなホコリやチリがたくさん落ちているのがわかります。ゴミがしっかり取れるのも実感できるので、掃除に対するモチベーションもアップ。この意味でもレーザー照射は面白い機能です。
気になった3点
使っていて気になった点もあります。ひとつは、レーザーユニットがヘッド片側にしかないこと。ユニットがある側のほうが明るく照らされます。
これに対してシェール氏は「ヘッドのコンパクト化とレーザーによるゴミ可視化のバランスを取って、レーザーユニットはあえて片側のみにしています」としました。シェール氏によると、初期の試作段階では両側にレーザーを付けていたのですが、ヘッドが大きくなることに加えて、ヘッド両側にレーザー機構を配置すると壁際ギリギリのゴミを吸引しにくくなったそうです。
そこで試行錯誤を繰り返し、レーザーユニットが片側だけでもヘッド前方をしっかり照らせるように、光を拡散させる特殊なレンズを独自に開発。これにより、ユニットに近いエリアのほうが明るくは見えるものの、ヘッド前方のゴミがしっかり浮かぶにレーザー光が届くようになりました。
もうひとつは、床を照らすレーザー光のムラです。これはレーザーのレンズに付着したゴミが原因なので、レーザー照射部を綿棒で拭けば解消されるとのこと。実はこのムラ、オンライン発表会でも気になっていました。キレイにして発表すればいいのに……とも思いましたが、ある意味リアルな製品説明と言えるかもしれません。
最後に、レーザーをレンズで拡散ということで、安全面はどうでしょう。
シェール氏はこの質問に対して「Laser Slim Fluffy クリーナーヘッドは強力なレーザーユニットを搭載していますが、フルパワーの『10分の1』以下しか使っていません。この出力は国際規格のレーザー安全規格にも準拠しており、レーザーを直視しても問題ないパワーです。ただしもちろん、レーザーの直視は避けてください」とのことでした。ハイハイしている子どもがいる家庭、犬や猫など視線が低いペットを飼っている家庭でも安心して使えるそうです。
汚れに合わせて運転モードを自動的に制御
話は戻って、2つめのDetect機能は、吸引したゴミの量をサイズ別に確認できること。手元(掃除機本体)の液晶画面に、吸い取ったゴミの量を大きさ別(10μm・60μm・180μm・500μm)にリアルタイムでグラフ表示します。ダイソンによると、10μmは花粉などの微粒子サイズ、60μmは微細なホコリのサイズ、180μmはダニの死骸などのサイズで、500μmは砂糖の粒くらいの大きさです。
この機能には別のメリットもあり、運転モードを「オート」にすると、ゴミがたくさんある場所はパワフルに吸引、ゴミが少ない場所はパワーを落としてバッテリー節約という、自動制御ができます。日本メーカーの高機能な掃除機の多くは、ゴミセンサーと連動した自動運転モードを以前から搭載していましたが、ようやくダイソンも自動制御を搭載しました。しかも、ゴミをサイズ別に確認できるという独特の機能を付けてきたのも、ダイソンらしいところではないでしょうか。
共通で付属する毛絡み防止スクリューツールは今後の展開に期待
新3モデル共通の特徴として、新開発の「毛絡み防止スクリューツール」の付属も挙げられます。これは、円錐型のブラシを内蔵したミニモーターブラシのこと。吸い込んだ髪の毛やペットの毛は、ブラシの太いほうから細いほうへと自動的に回転しながら移動して吸引される仕組み。長い毛もブラシに絡むことなく、クリアビンへ吸い上げられるというツールです。
筆者も長髪なので、掃除機ヘッドのブラシに絡まる毛には長年悩まされてきました。ブラシに毛が絡まりやすいのは、おもに床を掃除するシチュエーションなので、床掃除用のヘッドにこの機能を搭載してほしいところです。この要望に関してシェール氏は「メーカーとして今後どのような製品が出るとは言えませんが、現在いろいろな研究を進めています」とのこと。今後の展開を楽しみにしたいと思います。
ダイソンはなぜV12 Detect Slimを中心に発表した?
ここまでは、V12 Detect SlimとV15 Detectの両方に共通する機能について紹介してきました。では、V12 Detect SlimとV15 Detectの違いはなんでしょうか?
もっとも大きな違いは名称の通り、V12 Detect SlimはV15 Detectよりも軽量コンパクトであること。V12 Detect SlimはサイズがW250×D1095×H234mm、重さ2.2kgなのに対して、V15 DetectはW250×D1086×H250mm、重さは2.61kg(いずれもLaser Slim Fluffy クリーナーヘッド装着時)と、なかなかの重量級です。
とはいえ重いぶんV15 Detectは吸引力が高く、バッテリーもパワフル。V15 Detectはダイソンの現行人気モデル「Dyson Digital Slim」と比較すると、なんと約130%増の吸引力を持ち、バッテリー持続時間はエコモードで約60分もあります。一方、V12 Detect Slimは「Dyson Digital Slim」と比較して約50%増の吸引力。バッテリー時持続時間はエコモードで約50分です。なお、これらのバッテリー持続時間は、レーザー機能を搭載した「Laser Slim Fluffy クリーナーヘッド」など、モーター内蔵のヘッドを使ったときのもの。モーターを内蔵していないヘッドの場合、V12 DetectもV15 Detectもエコモードで最長約60分となります。
電源スイッチの形状も、V12 Detect SlimとV15 Detectは違います。V12 Detect Slimは「緊急ボタン」をイメージしたボタン式、V15 Detectはダイソンの掃除機らしいトリガー式です(トリガーを人さし指で引いている間だけ動作。トリガーから人さし指を離すと掃除機が停止)。
シェール氏は「これまではバッテリー節約のためにトリガー式が必須でしたが、今はバッテリー性能がアップしたため、必ずしもトリガー式でなくてもよくなりました。日本では押し続けたり握り続けたりする必要がないボタン式のニーズが高いのですが、V15 Detectは開発にボタン式の電源スイッチが間に合いませんでした。今後はボタン式のモデルが増える予定です」とコメントしました。
今回の新モデルによって、ダイソンのコードレス掃除機はラインナップが入れ替わり、今後はV15 Detectが最上位モデルとなります。ただ発表会でも今回の取材でも、説明の中心となったのはV12 Detect Slimでした。
これに対してシェール氏は「日本市場ではコードレス掃除機に『軽さ』が求められるため」と回答。現在、日本で人気の多機能・軽量モデル「Dyson Digital Slim」も、機能を犠牲にせず軽いモデルが欲しいという日本のために開発された製品です。
シェール氏は「ダイソンは現地のニーズに合わせた製品を開発・提供しています」とし、たとえば軽さやコンパクトさよりパワーを求めるオーストラリアでは、「Dyson Outsize vacuums」という重さ3.5kgのビッグなパワフル掃除機を提供していたりします。シェール氏は最後に、東京や北海道では違うニーズがあるかもしれないとしつつ、「今後は日本国内でもさらにエリアを細分化して、よりニーズにマッチする製品を提供したい」と締めくくりました。