クラウドストレージサービスを提供するBox Japanは5月28日、オンラインによる記者説明会を開催し、Boxのセキュリティ機能アップデートと新戦略について説明を行った。
Boxが提供しているクラウド・コンテンツ管理プラットフォーム「Box」は5月28日現在、世界で10万社を超える企業に導入されており、新型コロナウイルスの影響もあり、2021年度の売上は7億7077万ドル(約847億円)と、右肩上がりで成長を続けている。国内企業での導入もコロナ禍で進み、8カ月間で約1300社増え、9000社を超えている。
また、同社は2021年2月、クラウドベースの電子サインソリューションを提供する米SignRequestを5500万ドル(約58億円)で買収すると発表した。SignRequestの技術をベースとした電子サイン機能「Box Sign」を2021年夏に提供開始する予定だ。
今回発表されたBoxのセキュリティ機能のアップデートは4つある。
1つ目は、認証の種類が増えたこと。従来は、パスワード+SMS認証の二段階認証しかなかったが、今回新たに、時間によってワンタイムパスワードが計算されるTOTP(Time-based One-Time Password)方式が追加された。また、SSO(シングルサインオン)でのログインにも対応しているが、以前から対応しているIDプロバイダー(Okta、OneLogin、Azure、ADFS)に加え、Google Cloudも選択できるようになった。
2つ目は、同社のセキュリティツール「Box Shield」において、ラベルベースでセキュリティを自動設定できるようになったこと。今までは、各種コンテンツに対して、セキュリティポリシーとそれに対応する設定を、ユーザーが理解した上で手動で設定する必要があった。今回のアップデート機能により、ユーザーは機密区分に応じたラベルをつけるだけで、ラベルに対応するセキュリティ設定が自動的に適用される。
例えば、「機密」ラベルをコンテンツに適応すると、許可された企業に対してのみ社外共有することが可能、公開共有リンクの閲覧は不可、ダウンロードも不可といったように、自動でセキュリティレベルが設定される。
また、Microsoftが提供する同様のツール「Microsoft Information Protection(MIP)」とのラベルの同期も可能だ。MIP側のラベルの設定を、Box Shieldが自動認識し、同じ定義を自動で適用する。MIPのラベルに対応していない動画や音楽といったコンテンツに関しては、Box Shield側でラベルを付与することができる。
3つ目は、コンテンツ内の情報を検出して分類した後のセキュリティを自動化する機能がアップデートされたこと。具体的には、コンテンツをスキャンすることで、メールアドレス、クレジットカード番号、電話番号といった個人識別情報(PII)や、マイナンバーやNDAなどの独自のフレーズを検出し、分類ポリシーに応じて、各コンテンツに「機密」や「公開」といったラベルを付与しセキュリティの分類を行う。
これにより、個人情報が含まれたコンテンツは、Boxにアップロードされた瞬間に、共有リンクや外部コラボレーション、ダウンロードなどが制限された設定が自動的に適用される。
4つ目は、クラウドコンテンツ管理に対する法令、コンプライアンス、規制要件に適合させるための同社のツール「Box Governance」の機能アップデートだ。ドキュメント保持と廃棄ポリシーの管理を行うリテンション管理機能において、イベントベースのリテンション(保存)に対応可能になった。
例えば、従業員に関する記録のリテンションに関して、源泉徴収票は「発行」してから4年間保持する、雇用書類は「社員が退職」してから1年間保持するといったように、一度ポリシーを設定してしまえば、イベントが起こったタイミングで自動的にポリシーが適用される。同機能により、コンプライアンス違反リスクを軽減させるだけでなく、規制環境やガバナンスの変化に柔軟に対応することが可能だ。
一方で、サードパーティとの連携も追加された。Boxでは、Box上のコンテンツから、共有アプリやビデオ会議システムを操作できる機能がある。今回の機能アップデートで、シスコシステムズのビデオ会議システム「Cisco Webex」との連携が追加された。
ユーザーは、Box上のコンテンツからWebexMeetingをスケジュールしたり、参加したり、Spaceの新規作成を行ったりすることができるようになった。
同説明会に登壇したBox Japan執行役員マーケティング部部長の三原茂氏は、「Boxの新しいブランドキーワードである『コンテンツクラウド』という認識を日本でも拡大させていきたい」と説明。
セールスフォースが「セールスクラウド」、アドビが「マーケティングクラウド」、Snowflakeが「データクラウド」と認識されているように、「Boxを使えば、コンテンツをクラウドで活用・管理できる」といった直感的な認識の拡大を目指したいと、三原氏は意気込みを見せていた。