日本オラクルはこのほど、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)の製品アップデートに関する説明会を開催した。第1回目となる今回は、2020年に実施されたアップデートのポイントについて説明が行われた。

クラウド事業戦略統括本部ビジネス推進本部 本部長の佐藤裕之氏は、「2020年、68のOCIのサービスで、300以上の新機能追加および機能強化を行った」と説明した。

  • 日本オラクル クラウド事業戦略統括本部ビジネス推進本部 本部長 佐藤裕之氏

同社はOCIを基盤に、Autonomous DatabaseやPaaS, SaaSを提供している。OCIは現在、「柔軟な基盤」「データ基盤」「クラウドセキュリティ」「配置の柔軟性」という4つの方向性の下、拡充が行われている。

  • Oracle Cloud Infrastructureサービス一覧(2021年3月末時点)

  • Oracle Cloud Infrastructureの2020年の主要なアップデート

佐藤氏はOCIの柔軟性の強みとして、コンピュートのサイジングを挙げた。例えば、5CPU/60GBのマシンが必要だとしよう。一般に、パブリッククラウドはCPUとメモリの量を組み合わせたプランが用意されている。そのため、5CPU/60GBのプランがなかったら、必要なCPUとストレージを上回るプランを選択しなければならず、結果として、余計な費用を支払うことになる。

しかし、OCIのFlexible E3 コンピュート・シェイプ(AMD Rome)では、OCPU数とメモリ量を柔軟にカスタマイズできるため、無駄なコストが発生しない。OCPU数は1CPU単位で64 OCPUまで、メモリ量は1GB単位で1024GBまで選択可能だ。

ストレージは、作成済みのブロック・ボリュームに対し、サイズとパフォーマンス・タイプを変更できる。

OCIのセキュリティは、「セキュリティバイ・デザイン」「データ中心のセキュリティ」「自動化されたセキュリティ管理」というコンセプトの下、設計されている。具体的には、「Oracle Cloud Guard」「Oracle Maximum Security Zone」「Oracle Data Safe」といった機能が提供されている。佐藤氏は、「われわれは自動化によって、ヒューマンエラーをなくすことを目指している。クラウドの中のデータをインフラによって保護している」と語った。

  • Oracle Cloud Infrastructureのセキュリティ

OCIが提供するデータベースは、PaaS上のOracle Databaseと自律型データベース「Autonomous Database」がある。佐藤氏は、注目すべきデータベース・サービスとして、MySQL Database Serviceを紹介した。同サービスは、Enterprise版によるフルマネージド型のデータベース・サービスで、オープンソースで提供されているMySQLと同じ組織の下で開発・運用・サポートが提供される。MySQL Enterprise Editionの提供により、セキュリティやコンプラインに最も要求の厳しいエンタープライズ規制にも準拠する。佐藤氏によると、MySQL Database Serviceには、Oracle Labsの研究成果が活用されているという。

2020年12月から2021年2月にかけては、アップデートでMySQL Database Serviceの分析処理を高速化するエンジン「HeatWave」が提供された。TPC-Hのクエリの処理性能は、Amazon Auroraより1,000倍以上高速でコストは3分の1以下であり、また、Amazon Redshiftより2.7倍高速で、コストは3分の1以下だという。

  • MySQL Database Serviceの強み

加えて、最新版「Oracle Database 21c」の主要な新機能として、「AutoML」が紹介された。佐藤氏は、「従来の分析環境はRDBMSなどオリジナル・データのある場所からデータをコピーして分析を実行しているため、データの鮮度が悪くなる。これに対し、われわれはデータが存在する場所で分析を実行することを可能にしている。そのため、リアルタイムで分析が行える」と、同社のデータ分析の強みを説明した

「AutoML」では、アリゴリズムの選択、特徴量の選択、モデルチューニングが自動で行われる。そのため、計算時間が削減され、データサイエンティストの生産性の向上につながる。佐藤氏は「AutoMLによって、ビジネスユーザーが分析できる環境も提供できる」と語った。

  • Oracle Database 21cのAutoMLの仕組み

さらに、佐藤氏は「Oracle Database 21c」の主要な新機能として、Blockchain Tableを紹介した。これは、耐改竄性を追加、監査性を強化した特別なデータベース・テーブルだ。このテーブルの追記のみ可能なデータはテーブル所有者も特権ユーザーも改竄が不能であり、ハッシュチェーンで行をリンクすることで、整合性の検証と改竄されていないことの証明を可能としている。