インテルが24日、日本国内の記者向けに、同社のクライアント・コンピューティングの取り組みに関しての最新情報をアップデートするオンライン説明会を開催した。今月前半に米国本社が発表したTiger Lake-Hこと、第11世代Intel Core Hシリーズプロセッサについての解説が主な内容だ。

Tiger Lake-Hの性能にかかわる技術面のポイントについては、インテルの技術本部部長で、工学博士でもある安生健一朗氏が解説した。

  • 第11世代Intel Core Hシリーズ(Tiger Lake-H)のプラットフォームのブロック図および機能概要

    第11世代Intel Core Hシリーズ(Tiger Lake-H)のプラットフォームのブロック図および機能概要

  • 第11世代Intel Core Hシリーズのコンシューマ向けSKU一覧。最上位のCore i9-11980HKは最大5GHzの動作周波数を達成。なお、表のcTDPの欄には特定動作周波数での設計電力が記載されているが、i9-11980HKのcTDPは45~65W、それ以外は35~45Wだそうだ

  • こちらはビジネス向けのSKU一覧。「W」はXeon Wブランドのプロセッサ。cTDPはすべて35~45Wとのこと

最初に言及された特徴は、新たにCPU側へ内蔵された20レーンのPCI Express 4.0についてだ。このPCIe Gen4への対応でIntelはAMDの後塵を拝していたが、Tiger Lake-HではPCIe Gen4 x20をCPUに内蔵。計20レーンのうち16レーン分がディスクリートGPU、4レーン分がSSDなどストレージ接続に使用できる。なお、PCHのIntel 500シリーズチップセットとはDMI 3.0のx8接続で、このPCH側にPCIe Gen3 x24を備えるので、プラットフォーム全体では44レーンのPCIeを使えることになる。

ほか、最大32EUへと控えめだがXe GPUを統合、Intel Optaneメモリ H20への対応、帯域が最大40GbpsのThunderbolt 4、Intel Killer Wi-Fi 6E(Gig+)の搭載などが特徴だと説明があった。Killer Wi-Fiは、Intelが開発元のRivet Networksを買収したことで手に入れたゲーミング用途の高速Wi-Fi機能で、通信パケットを特定することでゲーム用パケットを優先するなどし、ゲームプレイ時の通信速度・レイテンシを高速化するといったユニークな技術が用いられている。

  • ストレージはIntel RSTを使ったRAID構築で高速化もできる

  • オーバークロックに対応したSKU向けのチューニング機能も強化されている

  • Thunderbolt 4とIntel Killer Wi-Fi 6E(Gig+)も搭載した

Tiger Lake-HのCPUコアは、Ice Lake世代における「Sunny Cove」の改良型で、10nm SuperFinプロセスがベースの「Willow Cove」マイクロアーキテクチャだ。動作周波数の引き上げと電力効率の改善が施されており、Tiger Lake-Hはモバイル向けプロセッサでありながら最大5.0GHzという高い動作周波数を実現している。これが実性能にどの程度貢献するのか、実際に前世代プロセッサや競合のAMDプロセッサと性能比較した結果、ゲーム用途やクリエイティブ用途など、複数のシナリオで優位な性能を発揮したというデータも示された。

  • Core i9-11980HKを、第10世代CoreのCore i9-10980HKと比較したグラフ。どちらもGPUにはTDP155WのGeForce RTX 3080を組み合わせたシステムだという

  • 今度はCore i9-11980HKをAMDのRyzen 9 5900HXと比較したグラフ。組み合わせたGPUは実機システムの手配の都合で、i9-11980HKがTDP155WのRTX 3080、Ryzen 9 5900HXがTDP165WのRTX 3080になっているそうだ

  • 薄型ノートPCという括りでCore i5-11400HとRyzen 9 5900HSを比較したグラフ。システムはIntel側がGPUにTDP65WのRTX 3060 MaxQを組み合わせた薄さ16.5mmの試作モバイルノートで、一方のAMD側はTDP80WのRTX 3080を搭載する薄さ18~20mmのASUS ROG Zephyrus G14だそうだ

  • 各国のゲーム会社がプロセッサ性能を最適に引き出せるよう、開発サポートチームの体制を整えているのも、インテルの強みだという説明があった

  • Core i9-11980HKとCore i9-10980HKで新旧クリエイティブ性能を比較。代表的なワークロードで2桁の性能向上が見られた

  • Ryzen 9 5900HXと比べても優位な結果が得られたという

インテルの執行役員で、パートナー事業本部 本部長の井田晶也氏は、Tiger Lake-Hの仕上がりについて「非常に充実した内容」と胸を張った。コロナ禍によるリモートワークの要請など、ビジネス環境の複雑化が加速しているなかで、大幅な性能・機能向上ができたTiger Lake-Hでそれら複雑化する環境に対応すべく、新たな基準に出来るよう取り組んでいくとした。

  • 第11世代Intel Coreでは、性能・機能の向上を原資に、モバイルPCのセグメントをより細かく定義し、複雑で多様になったユーザーニーズに柔軟に合致できるように取り組みを進めていく

  • 第11世代Intel Coreを採用したバリエーション豊富なシステムが各社から次々とリリースされる見通しが語られていた

  • 第11世代のIntel Core vProについてのアップデートもあった。これは前世代からのパフォーマンスアップを紹介したスライド

  • vProアップデートに関連してもうひとつ。一カ所に集まった多数のPCに、いかに効率よくアップデート、運用管理を提供するかがvProであったものが、最近はビジネス環境の多様化で、個々のPCのセキュリティに対する体制をどう高めていくかも大きな課題に浮上している。このスライドのIntel EMAは、比較的簡単にvProを扱える補助ツールで、昨年リリースされたものだが、こういった新たな課題にも有効に機能することで、採用事例が増えているとのこと

  • セブン銀行でのIntel vPro+Intel EMAの採用事例

  • タクシー会社経営者 兼 レーシングドライバーの国際交通 山野直也代表が、オフィスとサーキットで導入したというIntel vPro+Intel EMAの事例も近日公開予定だそうだ。非常にユニークなシチュエーションだが、"柔軟性"をアピールするにはぴったりな事例かもしれない

  • 最後にインテル日本法人からイベントの告知。オンライン開催で、コンテンツの一般公開もあるので、ここで紹介しておきたい。「第11世代Intel Coreによる新たな世界を、Business、Creative、Gaming、Music、Lifestyleなどさまざまなカテゴリーとのコラボレーション・コンテンツを通じてユーザーの皆さまに届けていく」催しとされている。イベントの特設サイトへはこちらのリンクから