アップルが、4K対応のストリーミングメディアプレーヤー「Apple TV 4K」を約4年ぶりにアップデート。第2世代となるモデルが5月21日に登場します。Appleからひと足早く試す機会を得た新しいApple TV 4Kの実機レポートをお届けします。

  • 新しくなったSiri Remoteが付属する、第2世代の「Apple TV 4K」。発売日は5月21日で、価格は32GBモデルが21,800円、64GBモデルが23,800円

4KのハイフレームレートHDR映像を滑らかに再現

そもそも、Apple TV 4Kとはどんなデバイスなのでしょうか? その答えは、家庭の薄型テレビやPC用ディスプレイにつなぐと、動画や音楽、ゲームなど、インターネット経由でさまざまなコンテンツが楽しめるスマートデバイスです。Apple TV専用のtvOSを搭載し、iPhoneやiPad、Macのように、ユーザーがほしいアプリを自由に追加できます。

  • Apple TVやApple Music、Apple Arcadeなど、インターネット経由でさまざまなコンテンツが楽しめます

接続したいテレビやディスプレイにはHDMI端子が必要です。Apple TV 4KはWi-Fi、または有線のイーサネットケーブルを使って自宅のルーターに接続します。本体は縦横98mm、高さが35mm、質量は425gと軽量・コンパクトなので、テレビサイドの設置に向いています。

型番に4Kが付くApple TVは、より高画質な4Kの動画やゲームが楽しめる上位モデルです。第2世代のApple TV 4Kは、最新規格のHDMI 2.1に準拠する端子を搭載、高性能なA12 Bionicチップにアップデートを遂げたことで、最高で4K/60fpsのハイフレームレートHDR動画が滑らかに表示できます。毎秒60フレーム(fps)の4K/HDR動画は、30フレームや24フレームで制作された動画よりもコマ数が多いため、データ処理に高いパフォーマンスが必要とされます。

  • 右が第2世代、左が初代のApple TV 4K。A12 Bionicを搭載した第2世代モデルの底力は、4K/60pのハイフレームレートHDR再生など、今後さまざまな場面で活きてくるはずです

第2世代のApple TV 4Kのように十分な処理能力を備えるデバイスで再生すると、ダイナミックに動く被写体を捉えたスポーツの動画、ハイフレームレートで制作されたゲームのグラフィックスなどが、ガタついたりノイズが発生することなく、スムーズに表示されます。

4K/60fpsのハイフレームレートHDR動画は、iPhone 12シリーズのカメラで撮ることもできます。第2世代のApple TV 4Kは、Wi-Fiの高速規格であるWi-Fi 6にも対応しています。AirPlay 2を介してiPhoneで撮影した4K/60fpsの動画を大きなテレビの画面に映して、家族揃って旅の記録を振り返る、なんて楽しみ方も良さそうです。

  • iPhone 12 Pro Maxで撮影した4K/60pビデオをスムーズに再生するApple TV 4K。ドルビービジョンのHDRコンテンツの再生にも対応しています

Apple TV 4Kが対応するRed Bull TVアプリなどの配信サービスも、4K/60fpsの高画質HDR動画の配信に名乗りを挙げています。アップルでは、さまざまなコンテンツプロバイダーと協力して、Apple TV 4Kで楽しめるハイフレームレートHDRのコンテンツを増やす準備を整えています。今後に期待が持てそうですね。

4K/60fpsのHDRコンテンツは、今後Apple TV 4Kで楽しめるゲームにも広がる可能性が大いにあります。定額制ゲーム配信サービスのApple Arcadeにも看板タイトルが増えるかもしれません。

新しくなったSiri Remote。操作感が大幅向上

動画サービスだけでもリッチなエンターテインメントに対応するストリーミングメディアプレーヤーであることから、Apple TV 4Kは他社のようにテレビのHDMI端子に直接挿す“スティック型”のデバイスとはせず、パワフルなプロセッサと最大64GBのストレージなどを搭載するために必要なボックススタイルとしています。電源はコンセントから給電しますが、じゃまなACアダプターが不要なのはうれしい部分といえます。

  • 片手で持てるコンパクトなApple TV 4K

専用リモコンによる快適な操作性も確保されています。パッケージに同梱されるBluetoothコントローラー「Siri Remote」は本体にマイクも内蔵。新しく搭載したインターフェースのクリックパッドコントロールや、Siriによる音声操作で文字を入力したり、コンテンツの再生操作ができます。

  • デザインと操作性を一新したSiri Remoteが付属します

iPhoneとApple TV 4Kを同じWi-Fiルーターに接続した環境であれば、iPhoneのソフトウェアキーボードを使って文字のタイピングができるApple TV Remoteの機能も使えます。動画・音楽サービスのタイトル検索の際の文字入力にとても便利なので、Siri Remoteと併用するとよいでしょう。

  • テキスト入力が抜群にはかどるiOSのApple TV Remote機能

新しいSiri Remoteは、本体にアルミニウムを贅沢に使い、快適なボタンのクリック感を実現しています。トップのマイクの位置は変えず、Siriの起動ボタンはフロント側からサイドに変更。Siriの起動がとてもスムーズで、マイクによる音声認識の精度も安定していると感じました。

  • アルミニウムを贅沢に使った新しいSiri Remote

  • 左が新しいSiri Remote、右が初代Apple TV 4Kに付属するSiri Remote

初代のApple TV 4Kに付属するSiri Remoteは、フロント側のトップに「Touchサーフェス」という名前のクリック・スワイプ操作に対応する入力インターフェースを備えていました。新しいSiri Remoteは、これをホイール形状のクリックパッドコントロールに置き換えています。

中心のすり鉢形状のボタンが、上下左右のスワイプとクリック操作に対応します。その周囲のリング状のボタンも十字方向のクリックができるほか、新たにジェスチャー操作をサポートしています。

ジェスチャー操作が活躍する場面は、例えばApple TVの動画再生時。コンテンツの再生を一時停止してからリングボタンの白いドットが配置されている箇所に1秒ほど指を当てていると、テレビの画面に表示される映像はシークバー上の再生位置のアイコンが白いホイールの形に変わります。この状態でリングボタンの上に指を滑らせると、右回りで早送り、左回りで早戻しの操作になります。NetflixやAmazonプライム・ビデオなどの動画サービスでも、同様のジェスチャー操作ができました。いまのところ、YouTubeや音楽コンテンツの再生には対応していないようです。

  • ジェスチャー操作時には、画面表示のインターフェースが切り替わります

新しいSiri Remoteは旧モデルよりも少し重くなっていますが、手元のグリップがとても安定するので、操作性はアップしていると感じました。内蔵バッテリーの充電にはLightningケーブルを使います。新しいSiri Remoteは6,500円で単体購入でき、初代Apple TV 4KやApple TV HDにペアリングして使うことができます。

Apple Musicの空間オーディオコンテンツにも対応

Apple TV 4Kはテレビに接続して楽しむデバイスなので、エンターテインメントは動画系に注目が向きがちですが、音楽系のストリーミングコンテンツも充実しています。

Apple Musicのミュージックビデオを視聴するならば、やはりテレビの大きな画面が快適です。音楽コンテンツもテレビの画面に歌詞を映すと、いつの間にか歌を口ずさんでしまいます。

サウンドはテレビの内蔵スピーカーから出力されます。薄型テレビの内蔵スピーカーによるサウンドが力不足に感じられたら、Siri内蔵のスマートスピーカー「HomePod」シリーズを組み合わせて、音声をAirPlay経由で飛ばすとパワフルなサウンドが楽しめます。

  • Apple Musicなど本格的な音楽再生を楽しむ場合は、HomePodシリーズとの組み合わせがおすすめです

残念ながら生産を完了してしまった初代HomePodは、Apple TV 4Kとの組み合わせでドルビーアトモス音声を収録するコンテンツのサラウンド再生に対応しています。Apple TVで再生する映像系コンテンツだけでなく、6月にApple Musicで配信開始を予定するドルビーアトモスの空間オーディオコンテンツも、ドルビーアトモスに対応するサウンドバーなどのオーディオやテレビと組み合わせて迫力あるサラウンド再生ができるそうです。また、ロスレスオーディオ再生にも対応します。

夜間は、Apple TV 4KからBluetooth接続に対応するワイヤレスヘッドホンやイヤホンにオーディオを飛ばせるので安心です。特に、アップルのAirPods MaxやAirPodsシリーズのイヤホンが好相性だと感じました。ワイヤレスヘッドホン・イヤホンでも、ドルビーアトモスの空間オーディオ再生ができるのもうれしいところ。こちらは、Apple Musicの新サービスが走り始めたあとにまた改めて実機で検証してみたいと思います。

  • 6月開始を予定するApple Musicの新しいサービス、ドルビーアトモスの空間オーディオ再生にApple TV 4Kも対応を予定しています

このほかにも、Apple TV 4Kの「写真」アプリからiCloudの共有設定をオンにすると、iPhoneで撮影した写真や動画がクラウドを介してリビングの大画面テレビで手軽に見られます。tvOS 14.5から新たに対応したPlayStation 5用のワイヤレスゲームコントローラー「DualSense」などが手元にあると、Apple ArcadeやApp Storeで購入したゲームがとても快適にプレイできました。

  • Apple Arcadeのゲームを楽しむ際は、「DualSense」などワイヤレスゲームコントローラーの備えがあると快適です

多くの場合、Apple TV 4Kは家族が集まるリビングルームのテレビにつないで楽しむことになると思います。家族に小さな子どもがいる場合は、Apple TVの設定から「一般」>「制限」にアクセスしてペアレンタルコントロールをかけると、Apple TVの映画コンテンツはレーティングに応じて視聴を制限できるほか、iTunes Storeでの購入・レンタル、App内課金アイテムの購入を未然にブロックもできるので安心です。ただし、アップル以外のコンテンツサービスは、また別途それぞれのアクセス制限を設定する必要があるので注意が必要です。

  • ペアレンタルコントロール機能にも対応。子どもに有害なコンテンツの表示をブロックできます

tvOSとともに進化を続けるストリーミングメディアプレーヤー

このほかにも、tvOS 14.5ではFace IDを搭載するiPhoneを使い、Apple TVを接続したテレビのHDMI入力の映像を、HDTV規格の業界標準と定められている色温度D65(6500K)に合わせられる「自動カラーバランス調整」という機能が追加されています。tvOS 14.5以降をインストールした第2世代・第1世代のApple TV 4Kと、Apple TV HDが対応します。Apple TVで楽しむ映像コンテンツや写真を、本来あるべき正しい色あいで楽しみたい時に便利です。

  • Apple TVの画質をクリエイター基準の画質に自動調整できる機能がtvOS 14.5から搭載されています

Apple TVシリーズは、tvOSのアップデートにより新しい機能が追加され、進化を続けるストリーミングメディアプレーヤーです。価格は、内蔵ストレージが32GBのモデルが21,800円、64GBのモデルが23,800円。アプリをダウンロードして楽しむゲームもメインの用途に考えている方は、価格差を考えれば64GBのモデルが断然お得だと思います。Apple TV+、Apple Musicのコンテンツがますます充実してきた、今がまさにApple TV 4Kの“買い時”といえるのではないでしょうか。