Cezanneの実力をベンチマークテスト、Ryzen 7 4700Uと性能比較

ここからは本題と言える性能チェックに移りたい。比較として用意したZenBook 14 UM425IAは、CPUに前世代のRyzen 7 4700Uを搭載。8コア8スレッドで基本クロックは2GHz、ブーストクロックは最大4.1GHzだ、TDPはRyzen 7 5800Uと同じ15W。メモリはLPDDR4X-3733が16GB、ストレージは512GBのNVMe SSD(PCI Express 3.0 x2接続)が搭載されている。

まずは、CGレンダリングによってシンプルにCPUのパワーを測る「CINEBENCH R23」から試そう。

  • CINEBENCH R23の結果

Ryzen 7 5800Uは8コア16スレッド、Ryzen 7 4700Uは8コア8スレッドなのでMulti Coreに大きな差が付くのは当然のことだが、注目はSingle Coreの結果だろう。Ryzen 7 4700Uに対して約17%もスコアが上昇と、シングルスレッド性能がアップしているのがよく分かる結果となっている。

続いてPCの総合的な性能を測定する「PCMark 10」を見てみよう。Standardテストはビデオ会議/Webブラウズ/アプリ起動性能を見る“Essentials”、表計算/文書作成の性能を見る“Productivity”、写真や映像編集時の性能を見る“Digital Content Creation”で構成されている。

  • PCMark 10 Standardテストの結果

すべての項目でRyzen 7 5800Uが上回っているが、特に伸びたのがProductivityで、約32%もスコアが上昇している。ProductivityはCPUの計算力が影響するだけに、ここでもシングルスレッド性能の向上がスコアの大幅上昇に繋がったと見られる。

続いて、Premiere Proを使用して映像処理の性能を測定する「UL Procyon」のVideo Editing Benchmarkを試して見る。

  • UL Procyon Video Editing Benchmarkの結果

Ryzen 7 4700Uに対して約8%のスコア上昇を確認した。8コア16スレッドでの処理が効いているのか、テストに含まれるH.264およびH.265エンコードの速度がかなりアップしていた。

続いて、CPU内蔵のグラフィック性能もチェックしておこう。まずは3D性能を測る定番ベンチマークの「3DMark」から。DirectX 11ベースの「Fire Strike」、Direct X12ベースの「Night Raid」を実行している。

  • 3DMarkのFire StrikeとNight Raidの結果

どちらもVegaベースの「AMD Radeon Graphics」で、3D性能はそれほど高くはない。外部GPUと比べた場合、ローエンドモデルと同等と考えてよいだろう。なお、スコアはコア数が多く、動作クロックが若干高いRyzen 7 5800Uのほうが13%~19%上回った。

実ゲームも試してみよう。人気のFPS「レインボーシックス シージ」の内蔵ベンチマーク機能を使用した。

  • レインボーシックス シージの内蔵ベンチマークの結果

フルHD解像度でも画質を「中」まで落とせば平均60fpsオーバーと快適にプレイが可能だ。ここでも、画質「高」設定以外はRyzen 7 5800Uのスコアが上回った。どちらにしても軽めのゲームなら何とか遊べる性能と言える。

性能は高い、では動作温度とバッテリー駆動時間はどうか?

次はCPU温度と動作クロックを見る。CINEBENCH R23を10分間動作させたときのCPU温度と動作クロックの推移をシステム情報表示ツールの「HWiNFO」で追っている。

  • CINEBENCH R23を10分間動作させたときのCPU温度と動作クロック

動作クロックは全コア2.49GHz前後で動作。4GHz近くまで上昇しているタイミングがあるが、これはCINEBENCH R23の負荷が軽くなった瞬間だ。ブーストクロック最大4.4GHzだが、これは1コア動作時のみ。全コア動作時は異なる。

ZenBook 13 OLEDは薄型ではあるが冷却力は十分確保されているようで、CPU温度は最大で70.1度。ほとんどが60度台とまったく問題の無い温度だ。長時間でも安心して使えると言える。ここまで性能が出るCPUがこの温度で運用できるのには驚きだ。

最後にバッテリ駆動時間も確認しておこう。PCMark 10のBatteryテストのModern Officeを実行した。バッテリ残り3%で12時間42分という、かなり長時間駆動という結果だ。これなら1日安心して持ち歩ける。

  • PCMark 10のBattery(Modern Office)テストの結果

Ryzen 5000シリーズではコアごとに電圧が変更できるようになるなど、省電力機能も強化されており、それがこの長時間駆動に貢献していると考えられる。

  • 前世代に比べ、平均消費電力が18~23%削減されているという

Ryzen 7 5800UはTDP 15Wの省電力CPUとしては圧倒的な性能を持っていると言える。前世代のRyzen 7 4700Uも十分高いマルチスレッド性能を持っていたが、Ryzen 7 5800Uではシングルスレッド性能も強化され、全方位スキのないCPUに仕上がった。薄型ノートPCでもCPU性能にこだわりたい人にとっては、この上ない選択肢になってくれるだろう。