京都府立医科大学の研究チームは、各種消毒液がヒトの皮膚上に存在する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に有効であり、濃度が40w/w%(48v/v%)以上のエタノール消毒液による5秒間の消毒により検出感度以下まで不活性化することを確認したと発表した。

同研究は、京都府立医科大学大学院 医学研究科 消化器科学 廣瀬亮平助教授、同伊藤義人教授、同内藤 裕二准教授、同渡邊直人大学院生、同吉田拓馬大学院生、同法医学教室 坂東李紗大学院生、同法医学教室 池谷博教授、同感染病態学 中屋隆明教授、同大道寺智講師によるもの。査読付きの月間医学ジャーナル「Clinical Microbiology and Infection」に4月24日付で掲載された。

同研究の目的は、手指の消毒に用いられている消毒液のうち、グルクロン酸ヘキシジン・塩化ベンザルコニウムなどのSARS-CoV-2に対する消毒効果があまりよく分かっていない低水準消毒薬や、皮膚上のSARS-CoV-2に対する有効性が確認されていなかったエタノール、イソプロパノールなどのアルコール系消毒薬について実際の手指衛生状況に近い条件での評価を行うというもの。

具体的には、実際の消毒時の状況に近い条件で評価するため、法医解剖検体から採取した皮膚を用いた病原体安定性評価モデル(皮膚上のウイルスの生存時間を評価するモデル)を構築し、評価を行ったのに加え、比較対象として試験管内での消毒効果評価も実施したという。 その結果、ヒト皮膚表面上に存在するSARS-CoV-2は、濃度が40w/w%(48v/v%)以上のエタノール消毒薬による5秒間の消毒により検出感度以下まで不活化されることが明らかになったとする。

また、低水準消毒薬に分類されるグルコン酸クロルヘキシジンや塩化ベンザルコニウムのSARSCoV-2に対する消毒効果は、エタノール消毒薬に比して劣るものの、比較的高濃度のグルコン酸クロルヘキシジンや塩化ベンザルコニウムは、ヒト皮膚表面上のSARS-CoV-2に対してやや強い消毒効果を示すことも確認されたという。

  • 新型コロナウイルスにおける試験管内と皮膚上での消毒効果評価

    新型コロナウイルスにおける試験管内と皮膚上での消毒効果評価。40w/w%以上のエタノール消毒液では99.99%の減少を示した(出所:京都府立医科大学)

  • ウイルスの対数減少値と消毒効果の関係

    ウイルスの対数減少値と消毒効果の関係(出所:京都府立医科大学)

同研究チームは、研究結果を踏まえ、低濃度のエタノールは消毒効果が大幅に低下するため、使用する消毒薬のエタノール濃度を確認することが重要だとしている。

  • 消毒薬として定められているエタノール濃度

    消毒薬として定められているエタノール濃度(出所:京都府立大学)

  • エタノール濃度の表記法

    エタノール濃度の表記法の違い(出所:京都府立大学)

また、低水準消毒薬に分類されるグルコン酸クロルヘキシジンや塩化ベンザルコニウムのSARSCoV-2に対する消毒効果は、エタノールと比べると低いため、第一選択で使用されるべきではないと現段階では考えられるとした。

ただし、試験管実験での消毒効果評価結果と比べると、皮膚上での消毒効果評価においてグルコン酸クロルヘキシジン・塩化ベンザルコニウムはSARS-CoV-2に対する消毒効果の上昇がみられたため、これらの消毒薬は皮膚表面上では消毒効果を発揮しやすい可能性が示唆されたとしており、今後はそのメカニズムについて解明を進め、複数の研究での有効性確認を進めることによりグルコン酸クロルヘキシジンや塩化ベンザルコニウムなどの低水準消毒薬がエタノール消毒薬の代替としてSARS-CoV-2 に対する感染制御に使用できる可能性もあるとしている。