レッドハットは4月13日、新年度事業戦略説明会を開催した。代表取締役社長の岡玄樹氏は、グローバルでの昨年度のビジネスのハイライトとして、「2020年通期で18%の収益増達成」「Red Hat OpenShiftのユーザー企業が2800社達成」などを挙げた。

  • レッドハット 代表取締役社長 岡玄樹氏

国内のビジネスのハイライトとしては、「トップの富岳を含め、スパコンの世界性能ランキングトップ3のスパコンでRed Hat Enterprise Linuxが採用されていること」「メガバンクでOpenShiftの採用が進んだこと」「Kubernetes OperatorのISVプログラム始動」「顧客のカルチャー変革の支援に関するコンサルティングの実績が拡大」を挙げた。

続いて、岡氏は2021年の戦略的指針として「すべてのアプリケーションにクラウド選択の自由を」を紹介した。レッドハットは、この指針の下、「インダストリーごとのユースケースを軸にしたOpenShiftの徹底的な展開」「OpenShiftとミドルウェアのマネージドサービス強化」「自動化領域の拡大」「Red Hat Enterprise Linuxの拡大」「組織文化の変革支援」という5つの施策を立てている。

OpenShiftの徹底的な展開に関して、岡氏は「失敗から学びを得た。お客さまから『レッドハットはわかりにくい』という指摘をいただいたことから、取り組み方を変えていく。お客さまに寄り添った言葉で話すようにしていく。まずは、金融業界から取り組む」と語った。

また、マネージドサービスに関しては、今年3月に提供が始まった「Red Hat OpenShift Service on AWS」をはじめ、レッドハットのソリューションはAWS、Microsoft、IBM、国内7社のクラウドサービス上で提供されている。

  • レッドハットの2021年事業戦略

昨今、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進める企業が増えているが、岡氏は「DXを加速させるには、オープンな企業カルチャーの変革が必須」と訴えた。カルチャー変革にあたっては、「Release Early and Often(まずリリースし、改善を積み重ねる)」「Business Agility(敏捷性をもって有機的に活動する)」「The Best Idea Wins(誰が言ったかではなく、何を言ったか)」に取り組んでいく必要があるという。

レッドハットは組織文化の変革を実現するため、組織学習・アジャイル開発の実践を支援するコンサルティングサービスを提供している。トランスフォーメーションに関するサービスを新たに提供していく。

  • 組織文化変革のためのコンサルティングサービス

説明会には、レッドハットと協業しているNTTドコモとNECの担当者も登壇した。NTTドコモ 常務執行役員(CTO)R&Dイノベーション本部長 谷直樹氏は、5G Open RANエコシステムの取り組みを紹介した。

  • NTTドコモ 常務執行役員(CTO)R&Dイノベーション本部長 谷直樹氏

谷氏は同社の5Gの加入者が250万に達したと述べたうえで、「5Gはデジタルトランスフォーメーションの基盤となりつつあるが、普及にあたってはネットワークのオープン化がカギとなる」と述べた。今年2月、NTTドコモとレッドハットなど12社は、通信キャリアや企業が持つ多様なニーズに応えられる柔軟なネットワークの構築を可能とする、オープンな無線アクセスネットワークの海外展開を目的とした「5GオープンRANエコシステム」の立ち上げを発表した。

「5GオープンRANエコシステム」では、海外の通信キャリアのニーズに応えることができるvRANシステムの構築に取り組む。谷氏は、「オープンネットワークと5Gサービスの導入加速とイノベーションの創出に向けて、レッドハットに対し、vRANエコシステムの活性化とオープンソースコミュニティへの貢献を期待している」と述べた。

NECとレッドハットは同日、Red Hat OpenShift上に構築された5Gソリューションの提供を発表した。Red Hat OpenShift上で動作するNECの5Gコアネットワーク・ソリューションによって、広範囲のユースケースで5Gの利用が可能になるとしている。

NEC 執行役員常務 河村厚男氏は、「社会基盤としての5Gネットワークソリューションのポイントはオープン化とソフトウェア化。これらをベースに自動化を実現していく。5G全体のポートフォリオを持っているNECのソリューションにレッドハットのソリューションを組み合わせることで、さらなる価値を提供していく」と述べた。

  • NEC 執行役員常務 河村厚男氏