この記事では、iPhone 7以降廃止された「イヤホンジャック」をiPhoneで復活させる方法について解説します。遅延がほとんど発生しないなど、ワイヤレスイヤホンにない音楽再生能力を最新のiPhoneに取り戻しましょう。
なぜイヤホンジャック、つまりは有線イヤホンが必要か?
Bluetooth接続のワイヤレスイヤホンが一般化し、左右をつなぐケーブルすらない完全ワイヤレスイヤホンも数千円で手に入る現在、はじめに「なぜ有線イヤホンが必要なのか」「あえて有線イヤホンを使うメリット」をクリアにしておく必要がありそうです。
iPhoneで有線イヤホンの需要があるとすれば、その狙いは「音質」か「低遅延」です。音の経路はBluetoothよりケーブル(銅線)のほうが音質的に有利で、オーディオ信号が発せられてから振動板に届くまでの時間のズレ(遅延/レイテンシ)も小さいからです。
Bluetoothを利用した音声出力は、送出側のiPhoneでデジタルのオーディオ信号を一部カットおよび「不可逆圧縮」と呼ばれる符号化処理を施してデータ量を減らし、それを2.4GHz帯を使いワイヤレスで伝送します。受信側のBluetoothイヤホンは、それを復号化処理したうえで人間が聴き取れるアナログ波形に変換します。
つまり、ワイヤレスイヤホンで音楽を聴く場合は、元々の音源に比べ情報量が減っています。情報量は音質に直結するため、オーディオ信号の一部カットも不可逆圧縮も行わない有線イヤホンのほうが再生環境として有利というわけです。
さらに、ワイヤレスイヤホンでは不可逆圧縮など一連の処理を行う都合上、最低でも数十ミリ秒、通常レベルで100~200ミリ秒前後の遅延が避けられません。ゲームアプリでキャラクターの動きと効果音にズレを感じることがあるのは、この遅延が原因です。とくにバトルロイヤル(FPS)系やアクション系のゲームであれば、勝敗やスコアに決定的な影響を及ぼしかねません。
イヤホンジャックを復活させて、有線イヤホンをつなぐ方法
iPhoneで有線イヤホンを使うには、なんらかの手段でLightning端子をイヤホンジャックに変換する必要があります。以下にあげる3つの方法から、いずれかを選ぶとよいでしょう。
1. Lightning端子から3.5mmイヤホンジャックへの変換アダプタを利用する
Appleから発売されている「Lightning - 3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ」、または同等の機能を持つMade for iPhoneロゴ付き製品を選びます。Lightning端子をiPhoneに接続し、3.5mmイヤホンジャックに有線イヤホン/ヘッドホンを接続すれば、利用準備は完了です。この方法は、自分でイヤホン/ヘッドホンを選びたいユーザ向けです。
2. Lightning端子付きイヤホン(通称:Lightingイヤホン)を利用する
Appleから発売されている「EarPods with Lightning Connector」、または同等の機能を持つMade for iPhoneロゴ付き製品を選びます。Lightning端子をiPhoneに接続すれば、利用準備は完了です。
3. USB DACを利用する
Appleから発売されている「Lightning - USBカメラアダプタ」、または同等の機能を持つMade for iPhoneロゴ付き製品を選びます。このアダプタにUSB DACとしての機能を備えたヘッドホンアンプ(別売)を接続すれば、好みのイヤホン/ヘッドホンを使いiPhoneで再生した音楽を聴くことができます。この方法は、音質にこだわるユーザにとってベストな選択肢となるものの、機材が増えるぶん小回りが効かなくなります。
イヤホンジャックアダプタのしくみ
「Lightning - 3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ」など、Lightning端子を備えたオーディオ製品には、端子部に「DAC(デジタル/アナログ変換器)」および「ヘッドホンアンプ」と呼ばれる機能を備えたICチップが搭載されています。Lightning端子から出力されるオーディオ信号はデジタルのみで、直接有線イヤホンで聴くことはできませんが、DACの働きによりデジタル信号をアナログ信号に変換し、それをアンプで増幅することによって音として聴くことが可能になります。