2020年12月に地球へ帰還した小惑星探査機「はやぶさ2」。オーストラリアで回収した再突入カプセルは宇宙航空研究開発機構(JAXA)相模原キャンパスに輸送され、中に入っていたサンプルについては現在キュレーション作業が続いているところだが、この再突入カプセルの一般公開が3月12日、相模原市立博物館にて始まった。
はやぶさ2の再突入カプセルが一般公開されるのはこれが初めて。コロナ禍ということもあり、初号機のときのような大人数のイベントにはできなかったものの、事前申し込みによる抽選で受け入れ人数を4,800名に制限(応募数は約18,000人分)。入場日時を指定し、密にならないような対策を取ることで、世界初の公開にこぎ着けた。
まずは記念式典の様子をレポート
同日の午前中には、カプセルの公開を記念した式典が開催された。緊急事態宣言が延長され、イベントが実施できるのか危ぶまれもしたが、冒頭、挨拶に立った本村賢太郎・相模原市長は、「JAXAの理解や、博物館の職員の努力などにより、この素晴らしい機会を実現でき、嬉しく思う」と、まず関係者に感謝した。
さらに「はやぶさ2の地球帰還やカプセルの公開は相模原市民の誇り。きっと子供や孫の世代から、将来は自分も津田プロマネのように宇宙科学に携わりたいという人も出てくるだろう。そういう夢が描ける相模原市にしていきたい」と期待を述べた。
除幕式でカプセルが披露された後には、相模原市からJAXAはやぶさ2プロジェクトチームに対し、特別表彰が行われた。表彰状を受け取った津田雄一プロジェクトマネージャは、「相模原市は、はやぶさ2が生まれ、様々な困難に打ち勝った舞台になった場所。ここでカプセルを初めて公開できるのは感慨深いものがある」とコメント。
「皆さんの目の前にあるのは、52億kmの飛行を実際にして、宇宙から帰ってきた現物。この現物の重みをできるだけ多くの人に実感してもらい、その迫力を味わって欲しい」とした。
また相模原市では、市内の11店舗にて、はやぶさ2の地球帰還を記念したスイーツを期間限定で発売中。式典では、この特製詰め合わせセット(非売品)が吉川真ミッションマネージャに手渡された。期間中に購入すると、はやぶさ2マンホール蓋と同じデザインの缶バッジがもらえる特典もあるとか(先着順で無くなり次第終了)。
公開されたカプセルの見どころをチェック!
今回公開されたのは以下の5点。基本的には、サンプルが格納されていたサンプルコンテナ以外の全て、ということになる。
- 前面ヒートシールド
- 背面ヒートシールド
- インスツルメントモジュール
- 搭載電子機器部
- パラシュート
なおプレスに公開されたときは、技術情報を保護する観点から、前面ヒートシールドと搭載電子機器部については、展示ケースにフィルムが貼られており、撮影してもボヤけるようになっていた。ただ一般公開時には撮影禁止になるため、このフィルムは無くなるので、直接見られるようになるということだ。
以下、展示品について紹介していくが、前回の記者説明会で、カプセル担当者からの見どころが説明されていたので、そちらも参照して欲しい。
展示室に入ると、まず最初に見えるのが降下中の減速に使うパラシュートだ。これは十字傘と呼ばれるタイプで、安定性が高く、コンパクトに畳むことが可能。直径わずか40cmのカプセル内に格納しながら、展開時には直径3mほどまで広がるという。
その隣にあるのは、カプセル本体と言えるインスツルメントモジュール。外側のヒートシールドに守られていたため、新品同様にピカピカの状態だが、最上部のみ外側に露出するため、ここだけ黒く焦げていた。探査機本体と繋がり、電力供給や通信を担っていたアンビリカルケーブルの切断面も見える。
再突入時の高熱を最も感じられるのは背面ヒートシールドだ。金色のカプトンテープの溶け残りが生々しいが、これが残っているというのは、前面側より加熱が小さかったという証拠でもある。カプセル本体との固定に使われていた“貝柱”も見えるので、真横から見るなどして探して欲しい。
搭載電子機器部は、再突入カプセルの頭脳である。加速度センサーの数値をトリガーに、パラショートを開くタイミングを制御するほか、開傘後には探索の目印となるビーコン信号を出す。はやぶさ2では、飛行中のデータを記録するための「再突入飛行計測モジュール」(REMM)も追加された。
全面が黒く焦げているのは前面ヒートシールド。空力加熱により、表面温度は3,000℃程度まで上がったと推測されており、背面側と異なり、カプトンテープは全て溶けている。頂上側にメロンパンのような格子状の切り込みが見えるが、これは素材であるCFRPの剥離を防ぐための工夫なので、ここにも注目して欲しい。