アマゾン ウェブ サービス ジャパンは3月2日、代表取締役社長の長崎忠雄氏による事業戦略説明会を開催した。長崎氏は、2021年の注力分野として、「日本国内のインフラストラクチャの拡充」「クラウド移行を加速させる顧客支援体制の強化」「次の10年を見据えたクラウド人材育成」を挙げた。

  • アマゾン ウェブ サービス ジャパン 代表取締役社長 長崎忠雄氏

日本国内のインフラストラクチャの拡充

長崎氏は、国内のインフラの拡充の施策として、3月2日に大阪ローカルリージョンを拡張して、AWS アジアパシフィック(大阪) リージョンがフルリージョンとして正式にオープンしたことを発表した。

同リージョンは2018年2月に一部の顧客にオープンしたAWS大阪ローカルリージョンを拡張したもので、3つのアベイラビリティゾーン(AZ)で構成されている。北京、香港、ムンバイ、寧夏、ソウル、シンガポール、シドニー、東京のアジア太平洋地域の8カ所にある既存のAWSリージョンに展開する25のAZに加わったことになる。

長崎氏は、新リージョンについて、「ローカルリージョンと違って、AWSの幅広いサービスに対応可能であり、オンデマンドインスタンスやSavings Plansも適用できるようになる」と語った。

マルチAZ構成が可能になることで、ミッションクリティカルなワークロードや基幹系システムを国内の2つの地域で稼働するといったニーズに対応可能になる。

  • 大阪リージョンで利用できるAWSのサービス

クラウド移行を加速させる顧客支援体制の強化

長崎氏は、「コロナ禍では、先行きが不透明であるため、投資も難しい。そうした環境では、可変的に対応できる施策が必要だが、クラウドはお客さまの真価を加速できるパートナーになれる」と語った。

長崎氏は、「スモールスタートですぐに使い始めることが可能」「必要な時に必要なだけ使うことが可能」「アイデアから実装までの時間を短縮可能」といった特徴を持つクラウドの真価は、価値の創造に集中できることと述べた。

クラウド移行にあたって、企業は「移行コスト」「アーキテクチャ」「セキュリティ」「オペレーション」「リーダーシップ」「クラウド人材の不足」といった課題を抱えているが、AWSは顧客と並走することで、クラウド移行を加速させるという。

こうした顧客の課題を解決する具体策として、長崎氏は「AWS Migration Acceleration Program」を紹介した。同プログラムは大規模なクラウド移行に取り組む企業や組織を移行準備から実行までを加速し、成功に導くための包括的なプログラムだ。

  • AWS Migration Acceleration Programの概要

また、長崎氏は業種ごとに最適化されたワークロードに対応するソリューションに注力していくと述べた。製造、自動車、メディア、金融、ゲーム、ヘルスケア、通信、小売といった業種で既に実績があるという。

続いて、長崎氏は企業の経営層からクラウド移行にあたってさまざまな相談を受けることから、企業文化の変革から人材育成、イノベーションの推進まで経営レベルでの対話を通じて課題解決を支援する取り組み「AWS Executive Briefing Center」を紹介した。

「これまでの経験から、企業文化の変革を成功させるには、経営層による明確なゴールが重要と感じている。AWS Executive Briefing Centerでは、このことに取り組む」と長崎氏。

日本では2年前にAWS Executive Briefing Centerができたが、それまではシアトルにしかなかったという。昨年はオンラインで100回以上、AWS Executive Briefing Centerが開催されたそうだ。

  • AWS Executive Briefing Centerの概要

次の10年を見据えたクラウド人材育成

長崎氏は、人材こそがクラウド活用のカギであり、同社の調査により、今後2025年にかけて、クラウドアーキテクチャの設計スキルを必要とする労働者数の増加率は年間40%を超えることがわかっていると説明した。こうした背景を踏まえ、同社は2025年までに世界中で2900万人の人々に無償でクラウドコンピューティングスキルのトレーニングを実施することを計画している。

AWSでは、教育機関の先生、社会人、学生に対し、教育プログラムを提供している。長崎氏は、社会人に対してAWS Educateの活用を開始したことに言及した。

  • AWSが人材育成に関して提供している各種プログラム

なお、米Amazon.comは今年2月、ジェフ・べゾス氏が最高経営責任者(CEO)を退任し、後任にAWSのCEOであるアンディ・ジャシー氏が就任することを発表した。

この件について、長崎氏は「AWSのスタッフは皆、喜んでいる。ジェシーはゼロからAWSを立ち上げ、多くのお客さまの声に耳を傾けてきた。そうした姿がイノベーターとして評価されたのだと思う。誰が後任になるのかははまだわからないが、ジャシーのようにこの世にないものを生み出すことができるイノベーターが就任するのではないかと思う」とコメントした。