順天堂大学は、BMIが18.5kg/m2未満の痩せ形の女性に、食後高血糖となる「耐糖能異常」が多いことおよび、肥満者に多く見られるインスリン抵抗性や脂肪組織の異常が関連することを発見したと発表した。
同研究成果は順天堂大学大学院医学研究科 代謝内分泌内科学・スポートロジーセンターの田村好史 先任准教授、同・河盛隆造 特任教授、同・綿田裕孝教授、同・杉本大介助教授、同・佐藤博亮先任准教授、同・門脇聡 助教授、同・加賀英義 助教授、同・染谷由希 特任教授、同・佐藤元律氏、同・山崎望氏、同・木屋舞氏、医薬基盤・健康・栄養研究所の中潟崇博士らによるもので2021年1月29日付の米国内分泌学会雑誌「Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism」(オンライン版)で公開された。
耐糖能異常は、主に肥満が原因で生じ、糖尿病や心血管障害のリスクとなることが知られている。先行研究より、中年以降では、痩せていても肥満と同等に糖尿病のリスクが高いことがわかってきているが、痩せた若年女性でも糖尿病のリスクが高いのか、高いとすると、なぜ痩せていてもそのような異常が生じるのかに関しては明らかになっていなかった。
今回の研究は糖尿病リスクにかかわる耐糖能異常の若年性女性割合とその特徴を明らかにすることを目的に実施されたもの。18-29歳の女性を調査した結果、耐糖能異常の割合は、標準体重群(BMI 18.5-23.0 kg/m2)が1.8%であったのに対し、BMIが18.5kg/m2未満の痩せ型の女性では13.3%と約7倍高いことが明らかになったという。
痩せ型の若年女性の耐糖能異常の特徴を詳しく解析したところ、インスリン分泌が低下しているだけでなく、主に肥満者の特徴とされてきた「インスリン抵抗性」も中年肥満者と同程度生じていることが明らかとなったとしている。
また、脂質を貯蔵する脂肪細胞が容量オーバーとなり、十分にインスリンが作用しなくなる「脂肪組織インスリン抵抗性」と、脂肪細胞から脂質が遊離脂肪酸として溢れ出している状態である「リピッドスピルオーバー」が生じていることも判明。この状態は、通常は肥満者に見られる状態で、痩せた若年女性に生じていることが分かったのは世界でも初めてだと研究チームでは説明している。
この結果を受けて研究チームでは、インスリン抵抗性は肥満に伴って出現し、痩せ型の糖代謝異常はインスリン分泌障害が主体でインスリン抵抗性はあまり関係しないと考えられていたが、痩せた若年女性における耐糖能異常にも、肥満者と同様にインスリン抵抗性や脂肪組織障害が生じている「代謝的肥満」があることを示したとしている。
また、日本では、BMIが18.5kg/m2未満の痩せ形の女性の比率が先進諸国の中で最も高く、特に若年女性では、痩せ願望を反映してその比率が約20%と高くなっている事を踏まえ、痩せた若年女性の多くは食事量が少なく、運動量も少ないという「エネルギー低回転タイプ」となっており、骨格筋量も減少していることから、十分な栄養と運動により筋肉量を増やすような生活習慣の改善が重要と考えられるともしている。
なお、研究チームでは今回の研究で耐糖能異常の病態に、インスリン抵抗性も関与する可能性が明らかになったことから、糖尿病の予防のためには、インスリン抵抗性の改善を研究した先行研究で指摘されているとおり、運動をしたり、食事の脂質摂取割合を減らすことにより改善する可能性が示唆されたとしている。