NTTドコモは5日、NTTと共同で2020年度 第3四半期決算をオンラインで発表しました。今期は減収増益の決算でした。昨年(2020年)12月25日をもって上場廃止してNTTの完全子会社となったNTTドコモですが、各四半期決算については今後とも、NTTと同時公表していく方針です。
第3四半期(累計)概況
第3四半期(累計)は、営業収益が3兆5,131億円(前年同期比29億円減)、営業利益は8,218億円(同339億円増)でした。登壇したNTTドコモの井伊基之社長は「料金プラン『ギガホ』『ギガライト』のお客様還元の影響、販売方法の見直し、新型コロナウイルスの影響による販売関連収入や国際ローミング収入の減少があったものの、ドコモ光、スマートライフ事業の取り組みなどは着実な成果を上げています。年間業績予想に対して、順調に進捗しています」と説明しています。
セグメント別では、通信事業の営業収益が2兆7,352億円(同707億円減)、営業利益が6,440億円(同74億円減)と軒並み減少している一方で、スマートライフ領域では営業収益が8,080億円(同752億円増)、営業利益が1,778億円(同413億円増)と順調に伸長している状況です。
ahamo効果でMNPが12年ぶりプラスに
メディアからの質問には、NTTの澤田純社長、NTTドコモの井伊基之社長が対応しました。
新料金プラン「ahamo」を3月26日より提供開始するNTTドコモですが、事前エントリーについては既に100万件を突破したとのこと。これについて報道陣からは、ahamoにエントリーしているのはドコモユーザーか、それとも他社ユーザーか、その比率を尋ねる質問があがりました。
これに対し、井伊社長は「具体的な数は非開示ですが、ドコモ内で移行されるお客様の方が、わずかながら多い状況です」と回答。また、ahamoの効果については「ポートアウト(流出)がかなり抑制できている」とも評価しました。
そして昨年10月にドコモショップ、量販店で販売促進を強化したことにより現行の料金プラン「ギガホ」「ギガライト」の契約者数も伸長中。さらにはドコモの学割もスタートしており、こうした相乗効果により「12月、1月とMNPがプラスに転じました。これは2009年1月以来ぶりのこと。約12年ぶりにプラスになりました」と報告しました。
ahamoは想定外のペースで伸びた
ahamoを発表したのは昨年12月4日なので、わずか2ヶ月で100万件の事前エントリーがあった計算になります。このペースについて受け止めを聞かれると「想定外のペースでした。こんなにお申し込みがあるとは思っていなかった。これは謙虚に言っているのではなく、年間で100万いけたらいいと思っていたんです。ただ、まだエントリーの状態ですので、ここから何%が契約に結びつくのか、楽観視はしていません」と回答。
そのうえで「他キャリアさんが類型の料金プランを発表された後も、実は順調に伸びています。そんなところを見ても、ahamoの魅力は失われていないなと思います。もう少し伸びていただければ、3番手から1番手になる日も近いかな、と思っています。料金プランだけでなく、つながりやすさ、データ通信の速度の違いなど、体感してからわかることもある。そこはドコモの強みなので、サービスがスタートすれば今のペース以上に申し込んで頂けるのではないでしょうか」と説明しました。
エントリーしているユーザーの年代については「想定通り、ほぼ半分が20~30代です。10代の方も、40~50代の方のエントリーもあります。若いユーザー、つまり柔軟性のある顧客層がキャリアに固執せずに新しいもの、良いものへ動いていただいているのかなという印象です」としました。
ちなみにahamoはオンライン専用の料金プランです。今後は、ドコモショップ(店舗)も減っていくのでしょうか? これについて井伊社長は「どうしてもショップの手助けを必要としているお客様もいますので、Face to Faceの営業をやめるという考えはありません。ただDX(デジタルトランスフォーメーション)で全体の営業コストを下げていく流れの中で、オンラインの強化は進めていければ」と話していました。
料金プラン値下げの影響は?
料金プランの値下げによる来期の影響については「数字は非開示ですが、影響は出ると考えています」と回答。
「ただマイナスの影響ばかりでなく、ユーザーの基盤が増えていくというプラスの側面もあります。MNPがプラスに転じました。トータルでは減収の影響は出るでしょう。なるべく早期に減収影響をなくしてプラスに転じたいと考えています。そのために非通信の分野、例えば金融分野のソリューションにも注力しますし、それだけでなくコストダウンでも利益を確保する。販売営業コスト、ネットワークの卸コストなどをしっかり削減していきます」と答えました。
一番手になるのはいつ?
社長に就任して以来、井伊社長は常に「ドコモは3番手」と言い続けています。今回、NTTの完全子会社になったことで、事業にも弾みがついていくのでしょうか。
井伊社長は「KDDIさん、ソフトバンクさんとはモバイル通信の領域だけで競っているわけではなく、スマートライフ領域、法人事業も含めた部分での競争になっています。今回、完全子会社化によって当社もようやく同じスタートラインに立てる、という思いです。いまモバイル通信事業では、同じところに並んで競争する環境が整いました」と話しました。
また、法人事業については「NTTコミュニケーションズとの協力で強化していきます。金融など非通信事業でもさらなる開拓をしていきます。こういったギアを全部、強くすることで1番手の絵が見えてくるのかな、と思っています」と回答しました。
金融事業はどう広げる?
金融事業の拡張はどうしていくのか、という問いには「金融商品、サービス、メニューを追加していくこともそうですが、現行のdカード、d払いもまだ強化する余地があると考えています。加盟店の数は増えていますが、決済回数、決済金額、ご利用回数で負けている。こういったところは、まだまだ強化していきます。メニューに関しても、金融の各種商品についてパートナーと一緒に進めていきたい。しかるべき時期に発表します」。
また、「d」系のサービス提供方針についても質問があがりました。たとえば出前・宅配サービス「dデリバリー」は6月末に終了する予定です。
dショッピングなど、今後は強化していく考えか、と聞かれた井伊社長は「負けているものは、撤退も含めて、しっかりした方針でやっていきます。すべて自社で行うことは無理ですが、あまり他社だけで他力本願でも負けてしまう。このへんのバランスですね。いま、真剣に取り組んでいるところです。ここが今後、強化すべきポイントだと考えています」。
NTTは当期利益が過去最高に
今期、NTTでは当期(2020年度第3四半期 連結決算)利益が過去最高になっています。
この件について、NTTドコモを取り込んだからか、と聞かれるとNTTの澤田社長は「対前年度で当期利益は343億円増となりましたが、このうちの190億円がドコモの当期利益の取り込み分です。残り150億円ほどは、営業利益の増による当期利益増です。ちなみに営業利益は519億円増の1兆5,023億円で、これは過去で2番目の数字となりました。したがってお答えとしては、ドコモの取り込みと、これまで利益を拡張してきたことの成果、この2つが相まって過去最高の当期利益になったと考えています」と解説しました。
バイデン新政権で影響は?
バイデン新政権が発足したが、ファーウェイの排除、5Gの覇権争いなどに影響は出そうか、という質問には、NTTの澤田社長が「新政権も、対中国政策に関しては基本的にはトランプ前政権の取り組み姿勢と同じだろうと考えています。米中、経済安全保障という切り口での世界、事業者の動きに大きな変化はないのではないかと考えています」と所感を述べました。